日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 201
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発表要旨
オープンデータと地理教育
*伊藤  智章
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抄録


   本報告では、公開と利用促進が進む「オープンデータ」を、地理教育においてどのように活用していくべきか、いくつかの実践事例を基に提言を行う。

   日本学術会議(2014)は、学校教育においてオープンデータを活用した教育と、オープンデータを使いこなす人材育成の重要性を提言した。しかし、現実には、パソコン実習すら浸透していない初中等教育の現場において、オープンデータを利用した主題図の作成や、アプリの製作を進める事は現実的ではない。
  一方で、情報教育、とりわけ商業高校の情報系の学科において授業の一環として、オープンデータを活用したアプリの開発や、地域と連携した課題解決のための実践が見受けられる。情報教育では、問題解決(ソリューション)のための技術の習得に主眼が置かれているが、地理教育の立ち位置をその対極に位置付ける ことで、相互補完関係が成り立つ。オープンデータの利用の実情に合わせて地理教育を変えていくのではなく、「読図」指導や「情報の可視化」など、地理学が得意として来た分野を学校教育に取り入れていく必要がある。そのためには、必ずしも生徒がICTを使う事を前提とせず、紙媒体によるアナログな手法を取ることも必要である。

報告では、具体的な実践事例として、静岡県裾野市で行われた高校生が参加する地域の防災訓練において、オープンデータを用いた大判地図を使った情報集約および意思決定支援の取り組みを紹介する。県や市が公開しているオープンデータに、自治会から提供された各種情報をGIS上で統合し、大判地図で出力した上で、住民に供することで、オープンデータの地理教育教材としての有用性を確認できた。

  オープンデータを活用する上で、「作図」や「読図」、「可視化」を前面に出すことは、地理教育の有用性を社会にわかりやすく発信する上でも有効である。活用の方法と、実践の普及を更に進めて行きたい。

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© 2015 公益社団法人 日本地理学会
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