日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P055
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発表要旨
ラジコン-マルチコプター,SfMを使用した水稲生育モニタリング
*濱 侃早崎 有香田中 圭近藤 昭彦
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キーワード: UAV, SfM, NDVI, DSM
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抄録


現在、ラジコン-マルチコプターは、小型化・低価格化に加えて、姿勢制御技術も向上し、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)としてカメラやセンサーを搭載することにより、低コストで近接リモートセンシングが実施できるようになった。
農作物の生産管理はリモートセンシングの重要な課題の一つであり、多くの研究事例が蓄積されてきた。特に日本の基幹作物である水稲においては、収量・収穫適期予測や食味判定が重要であり、航空機や衛星リモートセンシングが活用されてきた。
UAVによる近接リモートセンシングは、衛星のような雲による制約が少なく、風雨がなければいつでも撮影可能であり、撮影にかかる費用は航空機などに比べると安価であるため、取得できる情報の品質が良ければ、その優位性が高まる。加えて、撮影画像の解析にSfM(Structure from Motion)技術を用いることで、空撮画像から比較的容易にオルソモザイク画像・DSMを作成でき、可視画像だけで地表面状態の3次元的な変化も求めることができる。
そこで本研究では、千葉県農林総合研究センター水稲試験場において、水稲の生育モニタリングについてUAVを用い、高い時間および空間分解能の画像の取得に基づく地表面状態変化(特に稲の草丈)、NDVIなどの詳細な生育状況モニタリングを試みた。
2014年6月中旬(成長期)から9月初旬(成熟期)までの水稲の栽培期間に観測を行った結果、NDVIでは播種期・品種・施肥量などの栽培条件の違いが明瞭に観測された。出穂前のDSMから求めた稲の草丈と実測値では数cm単位の誤差で詳細な観測を行うことができることがわかった。この誤差の要因としては、実測の方法とDSMからの計測方法の差が関係しており、DSMでの計測では稲が風や自重で傾いた状態を計測しているため、厳密には「草高」を計測しているのに対して、実測においては稲を伸ばした状態で計測していることが計測結果の誤差になっていると考えられる。
DSMからの草丈計測においては上記のような問題もあるが、UAV・SfMを用いた観測結果からは生育状況の違いや時系列変化を確実に計測できることがわかった。

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© 2015 公益社団法人 日本地理学会
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