日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P913
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発表要旨
和歌山県における通勤圏と行政上の管轄区域との関係
*山神 達也
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抄録

Ⅰ.はじめに
通勤流動は居住地と従業地との間の就業者の移動のことを指し,通勤流動の完結性が高い空間的範域を通勤圏という。この通勤圏では労働力の再生産がほぼ完結するとともに日常の消費需要がほぼ満たされることから,通勤圏は日常生活圏を代表するものとみなされている(成田1995)。また,行政上の各種サービスは住民の日常生活を踏まえて提供されることが多く,行政機関の多くは管轄区域を設定している。この点に関し,成田(1999)は近畿地方を対象として,通勤流動で設定される日常生活圏と各種行政機関の管轄区域との対応関係を検討し,多くの圏境が日常生活圏と一致することを明らかにした。しかし,成田(1999)以降,平成の大合併が実施されたことから,現在でも同様の関係を見いだせるのか,検討の余地がある。以上を踏まえ,本研究では,和歌山県を対象として,通勤圏と各種行政機関の管轄区域との対応関係を検討したい。
Ⅱ.通勤流動と通勤圏の設定
図1は,和歌山県下の各市町村からの通勤率が5%を超える通勤流動を地図化したものである。この地図をもとに通勤流動の完結性が高いといえる範囲を定めて通勤圏とし,その中心となる市や町の名前を付した。その結果,和歌山県下で7つの通勤圏を抽出することができた。これらの通勤圏のなかで特徴的なものを整理すると,有田圏は自治体間相互の通勤流動が多く,雇用の明確な中心地のない状況で全体的なまとまりを形成する。また,この圏域の全ての市町から和歌山市への通勤流出がみられ,全体として和歌山圏に従属している。次に橋本圏は,橋本市が周辺から就業者を集める一方,橋本市も含めて全体的に大阪府への通勤流出が多い。以上の詳細は山神(2016)を参照されたい。
Ⅲ.通勤圏と行政上の管轄区域との関係
Ⅱで確認した通勤圏は各種行政機関の管轄区域とどう対応しているのであろうか。ここでは,和歌山県における二次医療圏,およびハローワーク和歌山の管轄区域との対応を検討する。二次医療圏は広域的・専門的な保健医療サービスを提供するための圏域であり,生活圏をはじめとする諸条件を考慮して設定される(和歌山県『和歌山県保健医療計画』2013年)。また,ハローワークは就職支援・雇用促進を目指す機関であり,通勤流動そのものと密接にかかわるものである。図2は,通勤圏(図1)・二次医療圏・ハローワーク管轄区域の境界がどれだけ一致しているのかを示したものである。二次医療圏では,岩出市と紀の川市で那賀保健医療圏が設定される点と新宮保健医療圏に古座川町と串本町が含まれる点に通勤圏との違いが現れる。一方,ハローワーク管轄区域では,海南市と紀美野町で「かいなん」が設定される点と「串本」にすさみ町が含まれる点に通勤圏との違いが現れる。また,北山村は,通勤圏としては三重県とのつながりが強いが,二次医療圏・ハローワーク管轄区域のいずれにおいても新宮の管轄区域に含まれる。このように,通勤圏・二次医療圏・ハローワーク管轄区域の間には若干の違いが認められるものの,基本的に3つの境界が重なる部分が多い。また,境界が重ならない地域として和歌山市周辺が挙げられるが,これは和歌山市の通勤圏を細分する形で管轄区域が設定されていることによるもので,通勤圏の境界をまたぐような管轄区域の設定はなされていない。したがって,通勤圏は,平成の大合併後も日常生活圏を代表するものとして,各種行政機関の管轄区域との対応関係も強いといえる。発表当日は他の行政機関の管轄区域を複数取り上げ,それらも検討の対象とした結果を報告したい。

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