日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P077
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要旨
明治・大正期における東京社会地図の作成
*石川 和樹中山 大地
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抄録

1.背景
近年,地理情報システムを用いた歴史地理学研究が活発化しているが,多量の歴史地名や住所に対して位置座標を一括付与する作業には多くの時間と労力が必要である.そこで著者らは,明治時代の東京市15区を対象として,住所を位置座標へ変換するアドレスマッチングシステムを構築した.本研究では,このシステムを利用して明治・大正期の史資料から社会地図の作成を行った.
2.地図作成の流れ
史資料から住所の部分を抽出し,CSV形式のファイルを作成する.このファイルをシステムに送信すると,住所が位置座標に変換され,CSV形式のファイルとして出力される.その位置座標に従いArcGIS上でポイントデータを作成し,「東京郵便局 東京市十五區番地界入地圖 明治40年調査」(人文社編集部 1986)を用いて作成したポリゴンデータを用いて地図化を行った.
3.書店分布の地図化
国立国会図書館近代デジタルコレクション(国立国会図書館2015)より,全国書籍商名簿(小林 1907.請求記号:94-525)を用いて地図化を行った.この書籍は明治40(1907)年の全国の書店情報を網羅したもので,店名や住所が記載されている.東京市15区全域における書店の分布をみると,日本橋・京橋といった東京市中心部や,現在でも古書店街を形成している神田神保町周辺で分布の集中がみられる.
4.人口密度の地図化
国立国会図書館近代デジタルコレクション(国立国会図書館 2015)より,東京市市勢調査原表 第1巻(東京市役所 1909.請求記号:400-101)を用いて地図化を行った.この書籍は明治42(1909)年時点の東京市における人口について,町丁目ごとの詳細なデータが記載されている.東京市15区全域における人口密度の分布をみると,東京市中心部から浅草方面にかけて人口密度の高い地域が分布している.一方,皇居周辺や地割りの大きな旧大名屋敷などでは周囲に比べて人口密度が低くなっている.
参考
国立国会図書館 2015.国立国会図書館近代デジタルコレクション.http://dl.ndl.go.jp/(最終閲覧日:2016年1月14日)
小林豊次郎 1907.『全国書籍商名簿』東京書籍商組合事務所.
人文社編集部 1986.『東京郵便局 東京市十五區番地界入地圖 明治40年調査』人文社.
東京市役所 1909.『東京市市勢調査原表 第1巻』大橋新太郎.

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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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