日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 104
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要旨
GISの実習用オープン教材の開発
基本事項に関する教材の試作
*山内 啓之小口 高村山 祐司久保田 光一貞広 幸雄奥貫 圭一
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抄録

これまでGIS教育の充実のために、科学研究費を用いた複数のプロジェクトが行われ、基本となるコアカリキュラムと講義用の教材が整備された。しかし、実習に関する検討は少なかった。一方、GISを活用できる人材を育成するためには、実習を用いた教育が必要である。
そこで、大学の学部や大学院におけるGISの実習授業を充実させるための教材を開発し、社会に公開するための新たなプロジェクトを開始した(科学研究費基盤研究A「GISの標準コアカリキュラムと知識体系を踏まえた実習用オープン教材の開発」、平成27~31年度、代表者:小口 高)。本報は、その経緯と現状の報告を目的とする。
本プロジェクトでは、学部3~4年生の実習授業や自主学習を対象に、室内でのGISソフトウェアの活用、GISと関連した野外調査、インターネットの活用に関する教材の開発などを行っている。
室内でのGISソフトウェアの活用に関する教材については、QGISのような無償で利用できるGISソフトウェアを用いて、GISの基本操作についてまとめている。教材の内容は、以前のプロジェクトで作成されたGIS教育のコアカリキュラムや講義用の資料に対応するように構成している。教材では、基盤地図情報やオープンデータなどの無償で利用できるデータの取得方法についても解説している。
GISと関連した野外調査に関する教材については、野外調査で利用できる機器の操作方法などを教材としてまとめている。高価な機器については、機器説明や操作方法を解説した動画を教材として公開する。現在、ドローン(UAV)に関する動画を撮影し、教材化を行っている。動画教材は、5分程度のショート版と20分程度のロング版を用意し、利用者が必要な方を選択し閲覧できるようにする。動画中の説明については、要所部に字幕のような形でコメントを挿入し、利用者が理解しやすい教材になるように工夫している。
インターネットの活用に関する教材については、Web GISの活用によるデータの作成や公開についてまとめている。Webを利用したGISデータの作成の際には、オープンソースの資源を有効活用しており、地理院地図やCartoDBなどを用いている。Webを利用したGISデータの公開についても、LeafletやCesiumなどとともにGitHubを用いている。GitHubはGISのデータやアプリケーションの関連づけや、Webページを活用した実習教材にも利用している。
これらの教材は、PowerPointファイルとともに、記述が容易であるMarkdownファイルで作成し、GitHubで公開することを検討している。GitHubのPull Request機能を用いることで、利用者による教材改善案の提出が可能となる。利用者による教材の改善や更新は、ソフトウェアのバージョン更新に教材が対応していない場合に有効であり、効率的な教材の修正や補足が可能となる。また、GitHubのIssue機能を用いることで、教材改善の要望や質問の投稿も可能となり、利用者同士によるオープンなコミュニティを築くことができる。このように本プロジェクトで開発された教材やその管理については、GitHubを頻繁に活用するため、GitHubの基礎操作に関する教材も整備していく必要がある。
本プロジェクトの成果は、試用と改良を経た後に学部や大学院のGIS実習や学生や市民の自習に利用できるように一般公開する予定である。

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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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