日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 621
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発表要旨
活断層近傍における土地利用規制帯の現状と課題
―2016年熊本地震の地震断層出現範囲との比較を通して―
*今野 明咲香遠田 晋次
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抄録
1.はじめに
地震断層による地表の変位は,構造物を変形させ大きな被害をもたらす。このような断層変位による被害を最小限にとどめるために,活断層沿いの一定範囲に構造物の建設などの規制を設ける対策を行っている地域もある。しかしながら規制整備が進みつつある一方で,規制帯の幅が地震断層からの被害に対して十分であるかどうか,吟味されているとは言い難い。発表者は2016年熊本地震における地震断層について,既存の活断層線からの離隔距離を定量的に検討した(今野・遠田,2017)。本発表では,既に設置されている活断層近傍の土地利用規制について整理し,熊本地震における地震断層の出現幅を比較することで,規制帯設定における課題を検討することを目的とする。
2.活断層近傍の土地利用規制
 内陸活断層に対する土地利用規制は,主に2つの被害に対して行われており,一つは地震動の被害,もう一つは地震断層による地表変位の被害である。本発表では後者に対する規制のうち,規制帯の幅を明示している6事例を取り上げる。それぞれの規制の細かな内容は異なるが,概念的には下記の表のようにまとめられる。回避区域とは,建造物の建設を制限するものであり,調査区域とは建築の際に活断層の有無について調査を必要とする範囲を示す。
多くの地域で,回避区域が20m前後に設定されている。これは,規制設定の際に既に施行されていたアルキスト―プリオロ地震断層帯法を参考に幅を設定したという指摘がある(たとえば照本・王,2001;増田・村山,2001)。
3.熊本地震の地震断層出現幅との比較
2016年熊本地震では,布田川―日奈久断層沿いに出現した地震断層と,既存の活断層図で示されていた活断層からの離隔距離は,50m以内が約40%,100m以内が約55%,150m以内が約70%である(今野・遠田,2017)。この結果を既存の回避区域の幅に当てはめると,現在の規制でカバーされうる範囲は40%以下である。
4.規制帯幅設定の課題
表中に示されている地域の活断層の成熟度や変位センスはそれぞれ異なる。熊本の結果で示されたように,変位地形が明瞭な横ずれ主体のカリフォルニア州の活断層で設定された15mという値を,変位センスや成熟度が異なり,変位地形が明瞭でない地域へそのまま適用するべきではないと考える。現在は地震後に地震断層の詳細な位置が求められるようになり,定量的な検討が可能となってきている。今後規制帯を検討する上では,変位センスや成熟度,表層地質,変位地形の明瞭さなどを考慮して定量的に分析を行うことが適切な規制帯の設定に重要であると考える。
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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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