抄録
1990年代後半、アムール川において溶存鉄フラックスの増加がみられ、この理由として、アムール川中流域に存在する永久凍土の融解が関与している可能性が指摘された。永久凍土の融解によって活動層が厚くなり、地表の湿潤化が促進され、溶存鉄の生成に適した還元的な環境が広く形成されたことが原因であるという仮説である。これを受け、本研究は、永久凍土の存在を示す植生をリモートセンシングによって探査し、永久凍土の分布を把握することを試みた。調査地域は、アムール川の中流域左岸に流入する支流ブレヤ川の更に支流であるティルマ川流域一帯である。Landsat8(マルチスペクトル、分解能30m)を用いた衛星データの解析を実施した。今回は最も鮮明な2015年9月15日のデータを使用した。バンド2(Blue)、バンド3(Green)、バンド4(Red)を用いてのトゥルーカラー合成ののち、バンド8を用いてパンシャープン補正を行い、分解能15mのトゥルーカラー合成画像を作成した。次に、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指数)、NDWI(Normalized Difference Water Index:正規化水指数)、NDSI(Normalized Difference Soil Index:正規化土壌指数)を算出した。現地調査は2016年と2017年に各2回ずつ、合計4回実施した。地形形状および植生分布を現地踏査によって記載する一方、様々な地点で土壌断面を記載して、凍土の有無を調査した。また、4地点に地温センサを設置して、通年にわたって地温プロファイルを計測した。植生分布調査、ならびに土壌プロファイル調査を含む現地調査によって、mariと呼ばれる特異な植生景観が永久凍土の指標になることを突き止めた。ここでは、カラマツの疎林が広がり、地表面はミズゴケや泥炭に覆われている。Mariにおいては、多くの地点で凍土の存在が確認された一方、mari以外の地点では凍土を確認することができなかった。これより、衛星のスペクトルデータからmariを抽出することによって、永久凍土の存在を間接的に把握できることを突き止めた。具体的には、NDVI・NDSI・NDWIをそれぞれR・G・Bにカラー合成し、現地調査でmariと判断した領域との比較を行った。その結果、Mariは水域的要素を持ち、なおかつ中程度の緑色反射率を持っている場所であることが判明した。衛星データで明らかとなったmariの分布をみると、河間地を中心に分布していた。