山頂を定義するスケールによって,抽出される山頂の地形とその分布がどのように異なるか,をあきらかにするために,高解像度のDEM(数値標高モデル)を用いて,異なるスケールで山頂を抽出して,その周辺の起伏と傾斜を計測した.約30 mメッシュのDEMである SRTM1を用いて,北緯60°〜南緯60°のすべての陸地にある山頂を抽出した.ある一定の半径の円内の中心点が,その円内で最も標高が高い場合に,その中心点を山頂と定義した.円の半径として,1 kmと10 kmの2つのスケールを用いた.そして,その円内の最高点(中心点)と最低点との標高差を起伏とした.また,その円内の傾斜を30 mメッシュで算出して,その平均値を平均傾斜とした.DEMは,UTM座標に投影して,UTMゾーンごとに演算を行った.
半径10 kmおよび1 kmのいずれのスケールにおいても,平均傾斜および起伏のいずれの指標についても,著しく大きな値の山頂は,主にヒマラヤ山脈に分布し,それに引き続いて大きな値の山頂は,環太平洋地域とアルプスーヒマラヤ地域,天山山脈に分布する,という傾向がみられる. これは,変動帯に位置する山脈あるいは高標高の山脈には,起伏から見ても平均傾斜から見ても,また,スケールを変えてみても,険しい山頂が分布することを示す.ただし,スケールによって,起伏も平均傾斜も値は異なり,起伏はスケールとともに増大するのに対して,平均傾斜は低下する.その程度は地域によって異なり,平均傾斜の低下は,急峻な氷河地域では大きく,深いV字谷が発達する地域では小さい,という傾向がみられた.これは,緩傾斜な谷底が氷河地域では広いのに対して,V字谷では狭いため,と考えられる.