日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 106
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発表要旨
我が国における第2圏界面高度と出現率の年変化の地域差
*中川 清隆渡来 靖平田 英隆
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抄録

成層圏と対流圏の境界である圏界面は熱帯と極域の間で不連続であり,それぞれ,熱帯圏界面,極域圏界面と呼ばれ,両者の間には寒帯ジェット気流が存在することが知られている.今春の地理学会において,筆者らは,我が国北方の高層気象官署の第1圏界面高度は,寒候季と暖候季で大きく異なるとともに,寒候季には層厚5000m程度の下層と層厚2000m程度の上層の二層構造を持つことを示した.この度, 我が国高層気象官署における第2圏界面の出現率とその高度の年変化について調査したのでその結果の概要を報告する.

 第1圏界面の上方に第2圏界面が出現することがある.図に●と実線で第1圏界面高度の年変化,と実線で対流圏気温減率の年変化とともに,と実線で第2圏界面高度の年変化を,と破線で第2圏界面出現率の年変化を示した.最南端の南鳥島では第2圏界面出現率は夏季に小さく冬季〜春季に大きい傾向が認められるものの通年で概ね0.2程度で推移するのに対して,北部の館野や稚内では冬季に第2圏界面の出現率が急増して0.8〜0.9に達し,二重圏界面構造が常態化する.

 寒候季の館野や稚内の第1圏界面は極域圏界面の南端部に相当し,その上方にほぼ常態的に出現する第2圏界面は熱帯圏界面の北端部に相当すると思料された.冬季の館野付近には下層に極域圏界面南端が達し,上層に熱帯圏界面北端が達して二重圏界面構造となり,その間に寒帯前線ジェット気流が形成されているものと思料された.夏季には寒帯前線ジェット気流を伴う二重圏界面構造は稚内北方領域まで北上し,日本全域が熱帯圏界面に覆われるものと推察された.

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