日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 715
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発表要旨
カリブ海の人々とウミガメ(2)
英領ケイマン諸島を中心とした産業の広域形成
*高木 仁
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抄録

概要
十九世紀後半より、二十世紀中頃にかけて最盛期を迎えていたケイマン諸島のアオウミガメ産業は、学術雑誌のみならず、一般紙にまでとりあげられるような影響力を誇っていた(Duncan 1943;Parsons 1962)。ケイマンの漁獲技術はその後、モスキート海岸の先住民らへと受け継がれて行くこととなるが(高木 2019)、本稿では現地で調査収集した未報告の資料より、その産業を解明するために更なる検討をくわえていく。

研究結果
特にモスキート海岸の研究者らは、英領ケイマン諸島民の漁獲や、諸近代国家との交易がこの近海に及ぼしてきた影響を過小評価する傾向にある(池口 2017;Nietschmann 1997)。しかし、収集した幾つかの公文書資料をつなげてみるだけでも、政治経済の中心であった英領ジャマイカ島における缶詰工場の設立に加え、漁獲は遙かホンジュラス沖のスワン諸島(1858)やコスタリカのタートル・ボーグ(1890)、ニカラグアのモスキート諸島やパール諸島(1895: 1903)、キューバ島の近海(1902)にまで及んでいたことがわかる(図1)。

結論
特にアオウミガメだけでなく、モスキート海岸の住民らの生業を考えるには、こうした西欧による広域産業の形成は再評価が必要な可能性が示唆されることとなった。

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