日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 622
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発表要旨
沼尻墨僊の大輿地球儀とBettsのNew Portable Terrestrial Globeの製作時期及び墨僊の地球儀情報の流用可能性に関する一考察
*宇都宮 陽二朗
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抄録
筆者はBetts社の新型携帯地球儀を1855-58年製造と推定していたが、最近、NMAHの WebpageでBetts,1856年特許取得の記事を知り、英特許庁から直接,Bettsの特許情報を得て関連情報を含め、既報(宇都宮,2018)を修正・再吟味した。本報告では、Betts社の新型携帯地球儀の特許取得からその製造年は1856年以降であることが確定したことを明らかにし、遅くとも1853年(公表は1855年)に製作済であった墨僊の大輿地球儀は世界最初の傘式地球儀であることを明らかにした。また、幕末における情報伝達について推論を加えた。
 推論に推論を重ねた妄論かも知れないが、幕末当時の日欧間の航行期間及び日本周辺海域に出没する来航船や公認非公認の交易等に伴う情報流出との関係で、Bettsのそれは墨僊の地球儀情報に拠るかと推定した。さらに墨僊が長年、秘匿していた地球儀の公表を頻りに推薦した者(大久保要?) の着目点が傘技術改良による折り畳み可能性と携帯性ならば、1800年製作の地球儀は傘式地球儀の可能性がある。そうならば、発明/製作はさらに半世紀以上遡るが、詳細は不明である。いずれにせよ、田舎町土浦の一寺子屋師匠、沼尻墨僊の製作した傘式地球儀製作は世界の地球儀製作史におけるフロンティアをなしたと言える。
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