抄録
1.はじめに
UAV(Unmaned Aerial Vehicle)を用いた測量は低コストで,運用もしやすいというメリットから災害調査,地形測量,植物群落調査などの様々な調査に使用されている.陸上での調査には非常に有益である一方,水面下の地形・地物の測量については水面反射,透明度, 屈折等の課題を克服する必要がある.これらの課題のうち撮影時間・季節を工夫することで克服しうる課題もあるが, 水面下の対象を撮影する場合に屈折を補正することは常に必要となる。大気中から水面下のものを撮影すると, 屈折が生じ,実際の水深よりも浅く見える(神野ほか 2017).そのため水面下,の地形・地物を撮影した画像を使用してSfM-MVS(Structure from Motion/Multi View Stereo)により作成されるDSM(Digital Surface Model)は水面下においては実際よりも深度が過小評価される.そこで本研究では空中からUAVを用いて干潮時に露出する干潟を対象に撮影し,満潮時に撮影した水面下の画像については水面屈折補正を行った結果を用いて精度検証を行った.
2.方法
研究対象地は山口県東南部の秋穂湾美濃が浜とし,2017年8月,2018年10月と11月の計3回空撮を行った.用いたUAVは,2017年はPhantom 4 professionalと2018年はPhantom 4 professional v2を用いた(以下,両機種ともP4Pとする).P4Pにより撮影された画像にはP4Pに搭載されているGPS情報が記録されているが,本研究では画像に記録されたGPS情報ではなく,撮影範囲内に設置した対空標識(標定点)を仮想基準点方式のネットワーク型RTK-GNSS測量(Trimble R4-3s)することで取得したx,y,zの3次元位置座標を使用した.
P4Pによる空撮は専用の自律航行アプリであるDJI GS Proを用いて飛行経路及び,諸条件を設定した.諸条件は高度50m,前後・左右重複率80%,カメラ方向-90度(水平)とし,干潮時に撮影を行った.撮影した画像はSfMソフトであるPhotoscan professional 1.4(Agisoft. Inc)を使用し,DSMおよびオルソ画像を作成した.PhotoscanにてDSMとオルソ画像作成をする際には,各写真内に映っている滞空標識にGNSS測量によって取得したx,y,zの座標値(平面直角座標系第3系)を与えた.SfMによって得られたDSMはArcGISを用いて水面下については水面屈折補正計算を行い,干出部と組み合わせることで,実測に近いDSMとした.具体的な方法として,水面屈折補正計算は水域部のDSMに一般的に用いられる水面屈折補正係数1.42を乗じ(神野ほか 2017),実際よりも浅く作成される地形を補正した.水面屈折補正計算についてはArcGIS10.2.2を用いて行った.手順は神野ほか(2017)を参考に①対象となるDSM(ラスタデータ)の水域と陸域を切り分ける,②水域と陸域が接する境界域の標高値を抽出,③抽出した境界域の標高値を用いて内挿補間により境界部分の標高を基にした一定面ラスタを作成,④「内挿補間したDEM」-「見かけの水深ラスタ(元の水域部分のDEM)」をすることで水深を求める,⑤④で得られた水深ラスタに水面屈折補正係数1.42を乗じ,真の水深とした.
3.結果
図1に水面屈折補正を行ったDSMを示す.水域部分については,補正を行うことで屈折による浅く見える問題を修正できていることが分かる.補正後のDSMでは特に水深1m以下のエリアが補正前に比べ広がっていることが分かる.図中に扇状地形は美濃が浜の北側にある海老養殖池と接続しており,干満差によって水の交換が行われるため,潮が引く際に養殖池から水と土砂が流出することにより形成されたことが考えられる.
