本発表は,2021年日本地理学会秋季学術大会公開シンポジウム(第40回日本地理学会地理教育公開講座)の企画趣旨と発表①である。
企画趣旨:地理教育公開講座は,海外のフィールド研究を積極的に行っている地理学者と地理教育実践者のコラボレーションを図り,小中高等学校の世界地誌学習の充実に貢献してきた。今回は,日本の地誌学習の現状と課題を検討し,地理教育において実社会との接点を重視した社会参画に関する教育を志向するため,「日本の地誌学習の新たな方向性−参画をめざす地理教育をめざして−」をテーマとしたい。
発表①は田部俊充(日本女子大)・田村穣(シカゴ日本人学校)・熊谷有美子(シカゴ日本人学校教諭)「日本の地誌学習の新たな方向性—シカゴ日本人学校における小中社会科実践から日本の地誌学習の課題を考える —」である。
田部からは熊本市立中学校1年生に出前授業で行った日本の諸地域学習の発展的な学習を紹介したい。九州地方の学習(自然環境,火山と共にある九州の人々の生活)の内容,中国・深圳との比較,八丁原地熱発電所の調査や再生可能エネルギーとして地熱発電が注目されていることを紹介し,熊本県のこれからの産業のあり方について考えてもらった。日本の地誌学習から世界のエネルギー問題に注目し,化石燃料から再生可能エネルギーへと転換するSDGs(持続可能な開発目標)や「よりよい社会の形成」に主体的にかかわる「参画」を意識した学習が期待できる。
田村氏は長く中学校社会科の学校現場の経験を経て,全国中学校校長会副会長等の要職を歴任し,2020年4月からは小中一貫校であるシカゴ日本人学校校長についておられる。その豊富な経験と専門性から地理教育の課題と方向性を新たな視点から提供していただけると期待している。また熊谷氏は小中どちらの社会科も担当する中で,小学校(5年生)と中学校(1年生)の日本の地誌学習に関する内容の現状,工夫,成果,課題を中心に発表していただく。