日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 307
会議情報

発表要旨
日本におけるアルベルゴ・ディフーゾによる衰退地域の再生
−静岡県熱海温泉を事例として−
*池田 千恵子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

本研究では,日本におけるアルベルゴ・ディフーゾによる持続可能な観光ならびに地域再生について、静岡県の熱海温泉を対象に検証した.アルベルゴ・ディフーゾは,イタリアのカーンで始まり,ジャンカルロ・ダッラーラ氏が 1980 年代に提唱した概念である.使用されていない歴史的な建造物を利用し,街中のフロントを中心に客室が点在する「分散型ホテル」とも言われている(Licaj 2014).空家をレセプションや客室に、地域の食堂をレストランに改修し,宿泊施設の要素を地域全体に分散させて地域全体を宿泊施設とする考え方(渡辺ほか 2015)で,旅行者は地域で暮らすような感覚で滞在することができる.

 アルベルゴ・ディフーゾに関しては,発祥地でもあるイタリアを対象とした研究によりその特性が明らかにされているが,日本におけるアルベルゴ・ディフーゾに関しての研究は初期の段階である.本研究では,日本におけるアルベルゴ・ディフーゾの実態を把握すると共に,そこから派生する地域再生について検証を行う.

 研究対象地の熱海温泉は,古くからの温泉観光地であるが,熱海市は人口減少と高齢化が進む地域でもあり,2013年時点で空き家率は50.7%,熱海温泉の中心部にある銀座商店街は30店舗中10店舗が空き店舗であった. 1件のカフェから始まった空き店舗の再利用により,衰退した商店街が再生し,ゲストハウスを核としたアルベルゴ・ディフーゾが形成されようとしている.

 銀座通り商店街のある銀座町では,まちづくり会社が運営するゲストハウスやコワーキングスペースを核とした空き店舗の解消,行政と連携した創業支援,新規起業者の連携による協働が行われている.その結果,スイーツ店の集積が進み,20〜30代の若者が訪問するエリアへと変容している.移住・定住促進にも波及している熱海温泉におけるアルベルゴ・ディフーゾに関して報告を行う.

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top