日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S406
会議情報

発表要旨
新しい地理教育への期待と課題
*片桐 寛英
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

予測困難な時代を主体的に生き抜く人間を育成するため、山形県では探究型学習を重視た施策を推進しており、平成30年(2018年)度には県立高校に探究科や探究コースを設置した。これらの高校では、課題探究を学習の核とし、各教科の学習を有機的に結合する取組みを行っている。併せて探究型学習の質的向上と普及を図るために全県で「課題研究発表会」等を実施している。

 地理は多くの学問をつなぐハブ的な要素を持ち、多角的で学際的な視点も養える科目である。また、フィールドワークやデータ分析などを通して科学的、客観的に考察する力を身に付けられることから、総合的な探究の時間における課題設定や調査方法などの基礎力を養うことにもなる。

 しかし、高校では地理の本質が十分に理解されていない。さらに、普通科高校の理系では、暗記項目が少ないという消極的理由で選択され、大学入試では配点が低く重要な科目とは見なされておらず、文系では、地図、統計があるため敬遠される上に、地理で受験できる大学が非常に少なく選択の対象にすらならないこともある。

地理総合の必修化と学習内容の明確化によって、地理の学習内容と有用性が理解され、他教科とのつながりも深まると期待している。

 今後、地理学習を充実させるためには、地理専門教員の計画的な採用や地理担当教員の研修体制の整備、身近な地域を題材にした教材開発が早急に求められる。同時に大学の教職課程における地理分野の充実も重要になる。さらには、EdTechも含めたICT環境の整備も一層重要になる。

高等学校において、地球規模から身近な地域まで社会の課題を探究する地理の役割はますます重要になる。生徒一人ひとりが興味・関心を持って主体的に探究するためには指導する教員の専門的な知見と経験が求められる。グローカルに思考・行動し、持続可能な社会を実現していく人間を育成するために、国や大学をはじめ関係機関が一層連携し、地理教育が大いに発展していくことを期待している。

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top