日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 350
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政治地理学における新たなリスケーリングの展開
*花谷 和志
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抄録

本研究の目的は, 政治地理学におけるリスケーリングの新たな視角を探究することにある. 特に, 地理学界においても近年散見されるガバナンス論への傾倒に対する批判から, 「平成の大合併」を経験した基礎自治体において住民側より発現されるリスケーリングに着目し, <公共>に回収されない「身近なスケールの政治」論の提起を試みたい.

欧米圏を中心とした海外で1980年代以降議論の始まったリスケーリング概念の研究は地理学, とりわけ政治地理学の分野から展開され, 深められてきた(Taylor1982, サック1986, Smith2000). だが日本では地域社会学における「都市研究」の文脈で議論はされてきたものの, 政治地理学からの探究は高木(1994)による理論研究や山﨑(2013)による沖縄の米軍基地問題との関係, 「大阪都構想」をめぐる研究などがみられる程度である. 他方, 行政地理学の分野では森川の通勤圏との関係からみた「平成の大合併」に関する研究(森川2011)があるが, その後市町村合併を日常生活圏との関係から論じた研究は管見の限りローカル・ガバナンスの観点から論じた研究(久井2019)にとどまっている.

これらの先行研究を踏まえた本研究の意義は, 特定の事象やガバナンス論に回収されない, ローカルなスケールでの身近な政治地理学とリスケーリング概念の探究に置かれていく. 特に全国の自治体に先駆け「平成の大合併」を経験した兵庫県丹波篠山市で起きている住民主導の新たなリスケーリングへの着目から, <公共>に収斂されない「身近なスケールの政治」論を提起するとともに, 政治地理学の新たな学術的知見の蓄積を試みることが本研究の企図するところである.

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