日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 340
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文化資本は地理的に偏在するのか
*森 泰規
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抄録

文化資本と組織活性の関係から 筆者は過去日本全国の勤労者3000名を対象とした2回の調査により、イノベーションを起こしやすい組織風土形成には、組織成員の文化資本(趣味嗜好。とくに美しい自然や芸術に関する志向性)が背景因子となることを報告した(2020)。この種の文化は大都市圏になるほど集積されやすいとされることが多いので、本当にそうなのかを検証し、報告する。文化資本の計測指標としては舞台芸術・芸術公演と展覧会の実施数(文部科学省2018、以下「公開催事数」)を参照し、同時に認知的な側面は当社が実施する自社調査AreaHABIT結果を使用した(全国調査パネル登録対象者14000名2020年11月4日(水)~16日(月)。15~69歳 男女個人)。

人口と文化資本の相関 「公開催事数」と都道府県の人口とは比例する(右上図)。しかし、その都道府県に居住する生活者が自分の都道府県に対し「アート・音楽の取組み(美術館、音楽・イベント等)が盛ん」だという認知的評価(弊社AreaHABIT 2020実施)と、人口一人当たりの公演回数とを比較するとR2乗係数は0となり関係性が説明しにくい(右下図)。 考察  文化資本は催事数で見れば人口に比例するが、認知的水準では人口一人当たりの催事数と相関しない。一部地区では人口は少ないが家庭内や非公開の催事を通じ、文化度が高いと居住者に認知されている可能性を示唆する。

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