主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2024年日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2024/09/14 - 2024/09/21
本報告では,経済的に一体化が進む東南アジアとオセアニアについて,おもに2000年以降の人の流れと貿易額の動向から考察を試みる。
図1は,オーストラリアにおける海外生まれの出身国と地域を年代別に表したものである。2024年現在,オーストラリアの人口の30%以上は海外出身者で占められており,その中でもイングランドとスコットランド,ニュージーランドといった英語を母国語とする国と地域が伝統的に多数を占めてきている。また,中国とインドのこの約20年間の伸びは驚異的であり,とくにインドは最多のイングランドを追い抜く勢いを見せている。一方で,東南アジアの国々からは,マレーシア,ベトナム,フィリピンの出身者が一貫して増加傾向を示していることから,東南アジアとオセアニア間における人の流れが加速している状況が読み取れる。東南アジアの主要な大都市とオーストラリア・ニュージーランドの大都市を結ぶ直行便は週に20便以上運行される路線もあることからもわかるように,東南アジアとオセアニア間の人の流れは,日本と東南アジア間,あるいは日本とオセアニア間の人の流れよりも活発な面があることを指摘できる。
次に貿易について概観する。ASEAN10か国とオーストラリアの貿易額は増加の一途を辿っている。比較のため,貿易額の大きい中国と日本,そして,APEC,EU, OECD圏などとの貿易額について表1に示した。経済的な一体化の動向を探るため,2000年〜2023年までの貿易額の変化を,2000年の値を100とする指数で表示した。この表によれば,同期間のオーストラリア全体の貿易額の伸びが指数433なのに対し,これを上回る増加を示す国々は,ASEAN10か国中の7か国でみられる。こうした事実からは,資源や農産物の輸出国でありながら耐久消費財の製造業が極端に脆弱なオセアニア地域が,東南アジア諸国で生産された耐久消費財の輸入に大きく依存しており,その金額が大きく増加している様子が見て取れる。とくに注目すべきは,2018年を最後にオーストラリアが自動車生産を終了し,タイからの自動車輸入を増加させていることである。詳細については,当日会場で発表する予定である。