1. はじめに
現在,日本では急激に少子高齢化が進んでいる.世界の先進国の中でも日本の少子高齢化率は非常に高い.また,少子高齢化が進む中で,人口が東京圏へ集まり,地方圏の人口が減少している.人口減少は大都市圏よりも地方圏の方が危機感は強く,一度人口が減った地域では,今後も人口が減少し続けるといわれている.そこで地方圏では,地域づくりの担い手不足に直面している.担い手不足が進むと,地域活動の継続が困難になる.地域づくりにおいて重要な要素として各地域で行われる地域行事が挙げられる.祭礼行事もそのうちの一つだが.地域で行われる祭りでも担い手の問題が起きている.地方圏から東京圏に流出する若者の増加によって地方圏では祭りの維持管理する若者が不足している.人口減少や高齢化,若者の都市への流出によって農村地域の過疎化が進行している現代において,新たに起こったまつりを考察することは農村地域の維持や関係人口創出を考えていく上で非常に重要な視点であると考えられる.本稿では,神奈川県松田町の寄ロウバイまつりを対象として,地方圏で地域づくりのために行っている近年はじまったまつりの発展過程について明らかにすることを目的とする.本稿では行政,地域住民,祭りの出店者への聞き取り調査や広報冊子の分析から,農山村における地域祭りの創出とその発展要因を考察した.
2. 寄ロウバイまつりの発展プロセス
寄ロウバイまつりは毎年1月中旬から2月の下旬にかけて行われる松田町の祭りの1つである.祭りの主催は松田町だが,主管はロウバイ部会や養魚組合,みやまの里などが属している寄ロウバイまつり実行委員会となっている.祭りの開催場所となっているロウバイ園では13,000㎡以上の敷地面積の中に20,000本,3,000株のロウバイが植栽されている.園内には1周30分~1時間ほどの周遊できるルートが整備されている. そもそもロウバイとは,中国原産の落葉低木で,ウメ・スイセン・ツバキとともに「雪中の四花」といわれる.ロウバイの語源は,冬に咲かせる黄色い花がロウ細工のようにみえることに由来する.ロウバイまつりの開催期間中は,地元の農産物や加工品などが園内で出店され,管理センター前にはキッチンカーなどが並ぶ.2024年現在では,神奈川県内や東京・山梨などの近県からも多くの来場者が訪れる祭りとなっている
3. 寄ロウバイまつりの発展要因
寄ロウバイまつりは2012年の開催以降,関東最大級のロウバイの祭りにまで発展した.寄ロウバイまつりの発展過程を黎明期,拡大期,メディア広報期の3期に分けて整理した.
まず,黎明期は荒廃地対策と寄地域振興の発展を図るために荒廃地を開墾しロウバイを植えた2006年から,2016年頃までの時期である.ロウバイ園は松田町の所有地ではなく,寄地区の地主の所有地であるため,地元の人々が町のために貸している. 2006年には寄中学校3年生の卒業記念として250本植えた. 拡大期は2017年から2018年にかけての時期である.第7回のロウバイまつりは,2018年1月13日(土)〜2月18日(日)まで開催された.この時期に来場者数が急増した.その背景として,開催までにロウバイ園の設備が行われた.メディア広報期は2019年以降の時期である.ロウバイまつりが2012年から開催された地域祭りであるにもかかわらず,来園者数が2万人に達し,2万本の花が咲く関東最大級のロウバイ園になった要因としてはメディアに取り上げられたことが大きい.
※本研究は科研費の一部(23K18738,23K28330)を使用した.