日本地理学会発表要旨集
2026年日本地理学会春季学術大会
セッションID: P076
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茨城県つくば市における新興ワイナリーの存立構造
*小林 聖吾村山 咲哉盛島 光希髙橋 悠悟石塚 啓世鈴木 修斗
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抄録

1.はじめに

 近年のワインブームの中で,日本各地に新興ワイン産地が形成されている.先行研究では,長野県東御市(鈴木ほか,2021)などの事例から,自然条件や制度的支援,人的ネットワークが新興ワイン産地の形成に重要であることが指摘されてきた.これら新興ワイン産地では,ワイン生産を核とした6次産業化により,耕作放棄地の活用や地域活性化が進められている.

 しかし,既存研究の多くは地方圏の農村地域を対象としており,大都市圏郊外としての地域特性を持つ新興ワイン産地については十分に検討されていない.また,産地形成における個々のワイナリーの経営戦略に着目した研究も不足している.

 そこで本稿では,茨城県つくば市を事例に,個々のワイナリーの経営戦略に着目しながら,新興ワイン産地の形成プロセスを検討する.具体的には,つくば市内の3つのワイナリーを軸に,各主体間の関係性に着目して分析を進める. 分析手法として,3つのワイナリーおよびつくば市役所農業政策課への聞取り調査に加えて,つくば市が運営する複数のウェブサイト上の情報を用いた.

2.つくば市におけるワイン振興施策の展開

 つくば市におけるワイン生産の開始および普及の経緯としては,つくばワイン・フルーツ酒特区の認定が大きな役割を果たしている.市が特区認定により目指す目標は農業・産業・観光振興等多岐にわたる.

 また,生産者と消費者をつなぐ取組みとして,つくば農産物オーナー制が導入されている.この取組みは,市民と地域農業,そしてつくばワインとのつながりを生み出す新しい地域交流の形として注目されている.

3.ワイナリーの存立構造

 聞取り調査から,3つのワイナリーの独自の取組みがつくば市のワイン産業の基盤を形成していることが明らかになった.

 Aワイナリーは,宅地分譲地計画の廃止をきっかけに不動産会社である株式会社Xが2011年に事業を開始した.従業員9名に加え,インターネット募集による約60名のサポーターが活動に参加しており,組織的な運営体制を構築している.企業による事業として展開されている点が特徴である.

 Bワイナリーは,研究機関勤務の経験を持つY氏が定年退職後に地域貢献を目指して開業した.Y氏と週平均20名のボランティアで運営され,月例のバーベキューなど地域住民との交流を重視している.農業委員会事務局長との交流を通じた事業拡大など,個人のネットワークを活用した展開が特徴である.

 Cワイナリーは,Z氏が3名の地主から耕作放棄地を通常の1.5倍の地代で借用して開始した.SNSを通じた労働力確保(アルバイト4名,ボランティア10名程度)や,草刈り・野焼きなど地域活動への参加を通じた住民交流に特徴がある.2025年からはワイナリーセミナーも開始し,教育的機能も担っている.

 3つのワイナリーは,それぞれ異なる戦略を採用し,サポーターやボランティアなどの地域ファンを増やす取組みに注力している点に特徴がみられる.

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