日本地理学会発表要旨集
2026年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 606
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東京のファッション産業集積におけるフリーマーケットの役割
―Tokyo City Flea Marketを事例として―
*宍野 亜唯
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抄録

1.はじめに

 都市とは産業が集まる場所である.こうした産業の集積は,都市の経済的・文化的機能を形成する要因となってきた.その中で注目される産業の一つにファッション産業がある(例えば立見 2018).ところで,近年古着を販売しているフリーマーケットが都市において多く開催されているものの,フリーマーケットとファッション産業集積の関係性は十分に明らかにされていない.そこで本研究は,東京都品川区の大井競馬場第一駐車場で毎週末開催される「Tokyo City Flea Market」を事例に,東京のファッション産業集積におけるフリーマーケットの役割を主催者・出店者・来場者の特性に着目して明らかにした.

 主催者への聞き取り調査は,2025年2月に実施した.Tokyo City Flea Marketの経緯やフリーマーケットを始めた経緯,メディア対応,今後の展望について聞き取りを行った.出店者への聞き取り調査は,2025年5月~9月にかけて22件の出店者へ聞き取り調査を実施した.聞き取り項目は,出店者の属性,出店状況,出店のきっかけ,他のフリーマーケットの出店経験,ファッションへの興味,Tokyo City Flea Marketに抱くイメージについてである.来場者へのアンケート調査は, 2025年7月に行い,245名から回答を得た.アンケート項目は,居住地,来場回数,来場理由,誰と来場したのか,どこで知ったのか,何を買ったのか,普段どこで服を買っているのかである.

2.主催者・出店者・来場者の特性

 従来のフリーマーケットはリサイクル活動の延長や地域の小規模な市として位置付けられてきたが,Tokyo City Flea Marketでは大規模な駐車場を有効活用し,古着販売やハンドメイド品,骨董品など多様な出店物がある.当初は,月1回の地元密着型のフリーマーケットであったが,車出店のできるフリーマーケットが少ないことから骨董品やアンティークを出店する層から人気が出て,都内最大のフリーマーケットへと成長した.出店物の調査から,全体の約半数が古着の出店であることが明らかとなった.出店者の年齢層は若年層から高齢者と幅広く,古着を販売する層と伝統工芸品や骨董品を出店する層の2パターンに分類できる.出店理由としては,知人からの紹介や売れ残りの処分,外国人が多く外国人によく売れるからである.近年は,若者層の古着出店者が急増しているが,彼ら彼女は実店舗を持つ準備段階としてフリーマーケットを活用していた.来場者の居住地として最も多い県は東京都である一方,市町村単位で最も多い居住地は横浜市であった.来場者は10代や20代の若者や外国人が多く,10代・20代の若年層は主にTikTokを通じてフリーマーケットの存在を認知し,古着の購入を目的に来場している.会場では出店者間と来場者間の対面でのコミュニケーションが図られている.

3.東京のファッション産業集積におけるフリーマーケットの役割

 主催者・出店者・来場者の三つの主体は,フリーマーケットのもつ社会的機能・経済的機能・文化的機能を享受している.社会的機能としては,主催者は車出店のできるフリーマーケットを創出し,そこで出店者と来場者間のコミュニケーションが図られている.経済的機能としては,低コストで出店できる環境と在庫処分などの商品販売場所という役割がある.文化的機能としては,出店者は個人ブランドや古着屋の宣伝の場として機能を果たしている.

 もとより,ファッション産業は新規参入がしやすく,小規模事業者の障壁が小さい産業であるといえる.しかしフリーマーケットでは,自身のブランドを持たない個人や学生,ハンドメイド作家など10代や20代の若者が,自身のブランドや店舗を持つ前に,低コストでファッション産業の市場に参入できる場を提供している.つまり,ファッション産業集積の裾野を広げる役割を持っているといえる.このことから,フリーマーケットは東京のファッション産業集積における「新規参入に向けた準備段階」「リアルな体験消費の希薄化」「多様な消費者との交流の欠如」という不足点を補う役割があるといえる.

参考文献

立見淳哉 2018. パリのファッション産業における価値づけの装置 人文地理 70-1: 25-48.

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