アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
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論文
ポスト紛争社会の政治動員と投票率の関係――イラクにおけるサーベイ実験から――
山尾 大浜中 新吾
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2020 年 61 巻 3 号 p. 2-27

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《要約》

本稿の目的は,ポスト紛争期のイラクの選挙において,政治動員が投票参加にどのような影響を及ぼすのかという問題を明らかにすることである。

戦後イラクの選挙では,投票率が高い水準で推移してきた。だが,政治エリートの汚職や有権者を無視した政治利権をめぐる対立,イスラーム国(IS)掃討作戦にともなう行政サービスの質の低下などにより政治不信が深刻化し,2018年5月に行われた第4回議会選挙では,投票率が前回選挙を20ポイント近く下回った。こうした政治不信が蔓延した状況下では,政治動員を受けた有権者は投票所に足をむけるのだろうか。本稿では,著しい政治不信状況が広がった同選挙のキャンペーン期間中に電話動員の効果をはかるサーベイ実験を行った。実験データを計量分析にかけると,動員を受けた有権者は投票に行きにくくなるということが明らかになったのである。

こうした結果から,われわれは政治不信が蔓延する状態では,政治動員が有権者の投票参加の意思を阻害する効果をもつ,という結論を導出した。

Abstract

The aim of this study was to clarify how political mobilisation affects voter turnout in postconflict societies by analysing survey data collected in Iraq. Voter turnout had been high in post-war Iraq but declined by 20 percentage points between the elections of 2014 and 2018. This decline has been attributed to widespread political distrust resulting from corruption among political elites, their embezzlement of public funds, their neglect of the people, and the breakdown of social services after the intensive operation against the so-called Islamic State. Political mobilisation during electoral campaigns usually increases turnout among registered voters. However, it is unclear what effect widespread political distrust in a post-conflict society has on voter turnout. Therefore, we conducted a survey experiment during the 2018 electoral campaign to investigate the effects of political mobilisation on voters in Iraq. The results of the quantitative analysis indicate that voters were more likely to refrain from voting when they were subjected to mobilisation efforts by political parties during the campaign. Thus, political mobilisation might actually decrease voter turnout when political distrust is widespread.

 はじめに

Ⅰ 戦後イラクの政治プロセスと2018年選挙

Ⅱ 仮説を検証するための方法とデータの説明

Ⅲ 投票参加の意思に与える電話動員の影響

Ⅳ 政党支持や支持する政策が投票参加に与える影響

 結論

はじめに

民主化などの大きな体制変動やポスト紛争期の出発選挙では,投票率が高くなった後,次第に下がる傾向がしばしばみられる(注1)。出発選挙で投票率が高くなることは,直感的にわかりやすい。というのも,選挙の導入にともなって,多くの政党が,新たな国家形成のなかで可能な限り多くの権益を獲得するために活発な政治動員を行うからである。権威主義的な体制による抑圧や凄惨な紛争の苦難から解放された有権者もまた,新たな国造りへの参加を希求して投票に向かう。ゆえに出発選挙では高い投票率がみられる。政治動員がさらに投票率を引き上げるという循環構造が生まれるからである。

だとすれば,その後に投票率が低下するのはなぜなのだろうか。投票率の低下は政治動員とどのような関係にあるのだろうか。本稿は,大きな体制変動の後に紛争を経験したイラクを事例に,政治動員と投票参加の関係を,サーベイ実験によって明らかにすることを目指す。

イラクを事例に取り上げるのは,上記のポスト紛争社会の選挙状況,すなわち大きな政治動員と高い投票率を誇る出発選挙とその後の投票率の低下現象が典型的な形で認められるからである。周知の通り,2003年の米軍を中心とする有志連合の侵攻(以下,イラク戦争)によって,サッダーム・フセイン率いるバアス党政権が崩壊すると,旧体制下で亡命していた多様な政治勢力が帰国し,新政権の中枢を掌握した。世俗のリベラル勢力からイスラーム主義まで多様な勢力が帰国したが,2005年の出発選挙を経て政権を掌握したのがシーア派イスラーム主義勢力であった。

イラク戦争後に実施された制憲議会選挙を除く4度の議会選挙の投票率は,全国平均で第1回選挙(2005年)が79.6パーセント,第2回(2010年)が64.3パーセント,第3回(2014年)が61.8パーセントと続いたが,2018年5月12日に実施された第4回選挙では,43.7パーセントと前回選挙から20ポイント近く低下した(図1(注2)

図1 投票率の変化(単位:%)

(出所)イラク選挙管理委員会のホームページより筆者作成。

戦後イラクの出発選挙でみられた高い投票率は,なぜ著しく低下したのだろうか。活発な政治動員は有権者を投票所に向かわせる効果を持たなかったのだろうか。これはイラク政治分析における主たる課題のひとつであり,本稿の問題関心でもある。この問題を解決することは,ポスト紛争国において出発選挙後に投票率が低下する要因を探る一助となるだろう。

これについて,個別選挙の研究は一定程度蓄積されている一方で(注3),投票率の変動について分析した研究は,ほとんどない。唯一の例外は,アラブ・バロメーター(Arab Barometer)や国際選挙制度財団(International Foundation for Electoral System)が実施した5回の世論調査データを用いて投票率を分析し,「中年の教育水準が高い男性や,政治に関心があり,政治制度を信頼して選挙を公平と考える有権者が投票に行きやすい」と結論付けたモハメドの研究がある[Mohamed 2018]。これは,投票率と宗派集団のあいだには関係がないことを明らかにした点で,これまで宗派主義の枠組みで論じられてきた選挙分析に,新たな一石を投じた。とはいえ,教育水準と制度への信頼に着目した議論は,投票率の著しい低下という現象を信頼の低下という形でしか説明できない。この点のみでは,ポスト紛争国における投票率の低下要因を解明することは困難かもしれない。

ひるがえって,投票率についての研究をみてみると,選挙研究の主柱のひとつとして膨大な蓄積がある。山田[2016]は投票参加の要因にかんする先行研究を社会学的説明,社会心理学的説明,経済学的説明,政治学的説明の4つに分類している。先述の「中年で教育水準が高い男性」や宗派主義の枠組みに基づく議論は社会的属性から投票参加を説明しており,山田の整理でいえば社会学的説明に含まれる。また政治制度への信頼や選挙を公平と考えるか否かは社会心理学的説明になる。投票の空間理論およびその系譜に連なる合理的選択は経済学的説明である。そして制度的要因や市民の自発性,動員およびネガティブ・キャンペーンに注目するものは政治学的説明だとされている。

本稿が注目する政治動員と政治参加の関係は,山田[2016]のいう政治学的説明である。動員が投票を促すか否かの議論はゴズネルの研究[Gosnell 1926]に源流があり,そこでは郵便葉書を送付した選挙区と送付しなかった選挙区の投票率を比較する実験的手法が用いられた。このように,動員と政治参加というテーマは最初期から実験政治学の対象であった(注4)

実際の選挙のタイミングにあわせてサーベイ実験を行った研究に,堀内・今井・谷口[2005]がある。堀内らはインターネットを用いたパネル調査を実施し,電話動員は有権者に情報を付与することになるため,動員を受けた有権者は通常投票に行きやすくなると主張している。動員によって投票先を決める情報コストが軽減されるために,投票に行く確率が増えると考えるのは極めて論理的である。加えて,動員にも様々な手法があり,それぞれ効果が異なるという点を明らかにしたのがGreen and Gerber[2015]である。これは米国で行われた選挙でのサーベイ実験の研究結果をまとめたメタアナリシスで,勧誘,電子メール,ダイレクトメール,電話(テープの音声,ボランティア,専門業者)などで動員を行った結果,平均的にみて動員が投票率を引き上げる効果があることを明らかにした(注5)

だとすれば,イラクでも選挙での政治動員は投票参加を促進するのだろうか。あるいは,ポスト紛争社会では,政治動員は異なる影響を持つのだろうか。これこそが,本稿の中心的な問いである。

この問題を解明するために,2018年の議会選挙に着目し,政治動員が政治参加に与える影響を明らかにし,いかなる条件が投票率を引き上げ,あるいは引き下げるのかを考えたい。そのために,第I節では,まずイスラーム国(以下,IS)台頭後の政治状況と2018年の第4回議会選挙について概観し,そこから仮説を導出する。第II節では仮説を検証するために用いるデータについて概観する。続く第IIIIV節では,計量分析によって仮説をそれぞれ検証していく。

Ⅰ 戦後イラクの政治プロセスと2018年選挙

1. ISの台頭と第4回議会選挙

2003年のイラク戦争で体制転換を経験したイラクでは,出発選挙を経てシーア派イスラーム主義政党を中心とする新政権が成立した。この政権は,選挙を経て成立した正当なものであったにもかかわらず,新しい国造りから排除された旧体制の支持者が反対し,アルカイダなどの過激派と連携して反米・反体制運動を開始した。そのため,選挙導入と時期を同じくして治安が急激に悪化し,一時は一月の死者が数千人にのぼる凄惨な内戦状態に陥った。これに対して,地方の地元部族を中心とした「覚醒評議会」とよばれる自警団が,主として米軍の支援で形成され,それが治安を急速に改善させた[山尾 2012]。こうして秩序が回復したが,同時に政党間の競合が激化し,激しい政治対立が繰り返されるようになった。これらの政治対立で政局が麻痺することが多くなったため,政権党は首相の権限を強化し,政敵を抑え込むことで政治を前に進めようとした。これは権威主義化と批判された。

まさにそのタイミングで,いわゆる「アラブの春」が生じ,イラクでも権威主義化する政権を批判する街頭行動が頻発するようになった。その結果,中央政府の統治が及ばない地域が生まれ,そこに隣国のシリア紛争で勢力を拡大したISが流入し,2014年6月にはモスルをはじめとする諸都市を支配下においたのである。ISは多様な側面で甚大な被害をもたらした。国軍が敗走したことで,体制転換後に解体された国軍という国家の基本的な機構が再建できていなかった点が露呈した。IS掃討作戦では,少なくとも初期は国軍を凌ぐ役割を果たしたシーア派民兵集団のアンブレラ組織,「人民動員隊」(al-Hashd al-Shaʻbī)が重要な役割を果たした[山尾 2018a]。

それゆえ,2018年5月12日に行われた第4回議会選挙は,IS後(2017年12月に対IS完全勝利が宣言された)のイラクの統治で誰が主導権を握るのかをめぐる対立になった。それは,裏を返せば,IS掃討作戦の手柄を誰がとるのかをめぐる争いでもあった。同時に,IS掃討作戦中に広がった抗議行動にどのように対応するかという問題も争点となった。選挙制度は非拘束名簿方式の比例代表で,得票率は小政党に有利なサン=ラグ式によって議席に配分された(注6)

選挙の結果,IS掃討作戦で影響力を飛躍的に拡大させた人民動員隊を基盤とする「ファタハ同盟」(Tahāluf al-Fath),掃討作戦の結果蔓延した社会問題の改革を主張して多くの人々の支持を得ることになった「サドル派」(al-Tayyār al-Sadrī)(注7)が,大きく票を伸ばした。

こうした結果になった背景には,いくつかの要因があった。

サドル派の躍進の背景には,IS掃討作戦に起因する行政サービスの質の低下や汚職に反対する有権者の抗議行動の先頭に立ち,同派が改革運動を始めたことがあった。抗議行動は一時的に国会議事堂や首相府を占拠するまでに広がったが,その先頭に立って改革を要求したのがサドル派だった。それゆえ,サドル派は以前と比較しても大きな支持を得るようになったのである。他方,ファタハ同盟の躍進の主因は,IS掃討作戦で大きな役割を果たしたシーア派民兵集団のアンブレラ組織,人民動員隊の最大組織であったバドル組織(Munazzama al-Badr)を中核にした政党である点に求められるだろう。バドル組織を中心にした人民動員隊に加盟した諸組織の政党連合であるファタハ同盟は,選挙でISに対する勝利に著しく貢献したと主張し,一部の有権者がその業績を評価して票を投じたというわけである。

それに加え,本選挙最大の特徴は,上述した投票率の大幅な低下であった。投票率の大幅な低下の背景には,著しい政治不信の蔓延があったと言われている(注8)。政治エリートが自らの利権拡大に注力し,汚職を繰り返すなかで,有権者は政治エリートや政党のみならず,政治制度そのものに対しても,不信感を拡大させていった。その結果,多くの有権者が投票を棄権するという選択をとることになった。

2. 仮説

このように,IS台頭後のイラクでは,著しい政治不信が広がり,それが投票率の低下の一因となった(注9)。加えて,本選挙で有力議員の多くが落選し(イラク・イスラーム最高評議会議長のハンムーディー前国会副議長やジュブーリー前国会議長など),初当選議員の割合が65.3パーセントにも上ったのは(注10),既存の政治エリートに対する失望が蔓延していたことを如実に示している。

政治不信を示すデータは,筆者たちが行った世論調査からもみて取れる。図2が示すように,「明日選挙があるならどの政党に投票しますか」という質問に対し,過去3回の調査(2011,16,17年の3回)のいずれでも「投票しない」との回答が最も多く,2017年の調査での「分からない」との回答と合わせると,実に36パーセントが既存の主要政党への投票に否定的な見解を提示している(注11)。「分からない」と「投票しない」の回答者を合わせた割合は,前々回(2010年)と前回(2014年)の選挙時に近い世論調査結果と比較して2017年が最も高く,既存の政党に対する不信感が次第に高まっていることを示している。さらに,図3が示すように,「投票しない」と回答する者は,いずれかの民族宗派集団に偏っているのではなく,国民全体にまんべんなく政治不信が広がっていることがわかるだろう。加えて,政治エリートや国家機構に対する信頼の度合いをより直接的に尋ねると,いずれの集団も大半の回答者が政党を「信頼しない」あるいは「まったく信頼しない」と答えている[Yamao 2018]。図4に整理した世論調査の結果をみると,中央政府や議会,政党に対する信頼度が年を追うごとに低下していることが分かる。選挙前の2017年には,政党を「信頼しない」あるいは「まったく信頼しない」と答える者は実に9割を超えている。これほどまでに,政党政治に対する信頼は失墜していたのだ。

図2 世論調査にみる投票政党の推移(単位:%)

(出所)各世論調査結果から筆者作成。

図3 民族宗派集団ごとの「投票しない」と回答する者の割合(単位:%)

(出所)各世論調査結果から筆者作成。

図4 世論調査にみるイラクの国家機構に対する不信の増大(単位:%)

(出所)2011,2013,2018~19年はArab Barometerのデータ(https://www.arabbarometer.org/),2017年は筆者たちが実施した世論調査のデータ(単純集計は,http://www.shd.chiba-u.jp/glblcrss/index.html)にもとづいて筆者作成。

政治エリートによる汚職が深刻な政治不信を引き起こすことは実証研究によって,洋の東西を問わず繰り返し確認されている[Anderson and Tverdova 2003; Bowler and Karp 2004; Chang and Chu 2006; Seligson 2002]。また政治的信頼(不信)と投票参加(棄権)が強い相関関係にあることも,冒頭のモハメドの研究[Mohamed 2018]に加えて,ヨーロッパの民主主義諸国を主な対象とした実証研究によって検証されている[Birch 2010; Grönlund and Setälä 2007; Hadjar and Beck 2010]。汚職の存在を認知した有権者が選挙で棄権しやすくなることも検証されており,とりわけ汚職政治家を投票によって処罰できない場合は棄権の蓋然性が顕著になる[Caillier 2010; Carreras and Vera 2018; Davis, Camp and Coleman 2004; Stockemer and Calca 2013; Stockemer, LaMontagne and Scruggs 2013]。

それでは政治エリートによる汚職が有権者に広く認知され,政治不信が蔓延した状況下で政治動員の働きかけがあった時,有権者は投票所に足を運ぶ気を削がれるのであろうか。本稿の主たる仮説を次のように定めよう。

仮説 1a:政治不信が蔓延している状況下では,有権者は,選挙キャンペーン時に電話動員を受けると投票を棄権する。

電話動員は単純な声がけ,すなわち「我が党に投票して欲しい」と呼びかけるだけにとどまらない。電話の相手が自分の支持政党の選挙対策本部であり,事前調査で支持政党が不利な状況にあるとすればどうだろうか。電話の相手は「ライバル政党に負けそうなので応援して欲しい」と呼びかけることだろう。すなわち電話の相手は一票の重みを意識させて支持者に働きかけている,というわけである。政治不信が蔓延していたイラクであっても,一票の重みを意識させられれば,有権者は行動を変えるかもしれない。とくに議会内の最大会派を支持する有権者ならば,投票所に足を向ける可能性がある。しかし分極的多党制であるイラクでは,全体としてみれば議会最大会派の支持者は社会の少数派である。よって有権者の多くは「勝ち目が薄いので投票に行ってもしかたがない」という心理になると考えられる。

仮説 1b:政治不信が蔓延している状況下では,有権者は全体として,選挙キャンペーン時に「ライバル政党が優勢」だという情報を受け取ると,投票参加を諦めるようになる。

以上が本稿の主たる仮説である。これに加え,上述で概観したイラク政治の現状から導出できる補助的な仮説を4つ確認したい。

まず,2018年選挙では,政治不信の蔓延にもかかわらず,一部の政党は票を伸ばすことに成功した。上述の通り,サドル派とファタハ同盟である。この2政党連合に共通するのは,IS台頭後に支持を拡大したという点である。サドル派はIS掃討作戦の過程で露呈した社会問題に対する改善を主張して街頭行動の最前線に立ち,一般大衆の支持を広げていった。ファタハ同盟は,IS掃討作戦で主導的な役割を果たしたことで,とりわけ人民動員隊がISを駆逐した地域や,人民動員隊のメンバーを送り出した地域で大きな支持を獲得していった。それらが次第に両党の基盤となったのである。もうひとつ,選挙で票をそれほど伸ばすことはできなかったものの,IS後に生じた汚職や行政サービスの低下に対する改革を主張して広い支持を得た政党がある。「ワタニーヤ」(al-Watanīya)である。イラク暫定政府の首相を務めたイヤード・アッラーウィー(Iyād ʻAllāwī)率いるワタニーヤは,イラク戦争後一貫して世俗的でリベラルな有権者の強い支持を獲得し続け,2010年の第2回議会選挙では最大の得票率を獲得し,2018年選挙でも一定の得票を維持した。これらの3政党は強い支持基盤を有している。後述の2018年世論調査のなかで,支持する政党に投票すると回答した者(支持政党と投票政党の各質問に対し,同一政党を回答した者)の割合は,ファタハ同盟が最も高く(80パーセント),次にワタニーヤ(70.2パーセント),そしてサドル派(63.5パーセント)であった(注12)。この結果は,上記3政党が固定的な支持層を持っていることを意味しており,支持基盤の強さを傍証している。それゆえに強い政治不信が広がる状況であっても,これらの政党を支持する者は投票参加に向かいやすいのではないだろうか。つまり,次のような仮説が導かれる。

補助仮説 1:確立した支持基盤を持つ政党の支持者は,投票所に足を運ぶ傾向がある。

さて,政党支持理由は,投票参加に影響を与えるのだろうか。たとえば,支持政党を政策内容によって決定する場合には,自らが重要と考える政策の実現を重視するために,投票に行く可能性が高くなるだろう。とくに上述のように汚職や行政サービスの低下といった政治問題が広がっているイラクにおいては,政党支持において政策を重視する有権者は,自らの票の重みを認識し,投票に行きやすくなると考えられる。したがって,次の仮説は以下の通りである。

補助仮説 2:政策を重視して支持政党を選択する者は,投票に参加しやすい。

同様に,有権者の政治意識も投票参加を左右するだろう。政治不信が蔓延していることは繰り返し指摘してきたものの,イラク戦争後に獲得した民主主義を信頼する者や,イラクの将来に対して明るい希望をもつ有権者は,投票所に足を運びやすくなるだろう。この想定は仮説として次のように命題化される。

補助仮説 3:イラク戦争後の民主主義の獲得を誇りに思う者や,将来に対して明るい希望を持つ者ほど,投票所に向かいやすくなる。

最後に,IS掃討作戦の過程で大きな問題になった外部介入は,投票率にいかなる影響を与えているのかを考えてみたい。ISはシーア派を不信仰者と断罪し,その殺害を主張したが,上記の人民動員隊はこうした主張を行うISからシーア派コミュニティを守るために動員された数十にのぼるシーア派民兵のアンブレラ組織であった。この人民動員隊に,隣国イランの革命防衛隊が武器や装備,訓練やロジスティクスなどあらゆる面で支援を行った(注13)。ファタハ同盟の中核を担うバドル組織は,旧体制下の1980年代にテヘランでイラン革命防衛隊の支援によって形成されたものであった。それゆえ,バドル組織を率いるハーディー・アーミリー(Hādī al-ʻĀmirī)の革命防衛隊との人的ネットワークも非常に強く,こうした関係や支援は,一部の批判者から「イランの傀儡」と揶揄されてきた。IS掃討作戦においては,人民動員隊を支援するイランの影響力がますます拡大し,国内では宗派を問わずこれに批判的な見解が幅広くみられるようになった[山尾 2018a]。ゆえに,イランの過剰な介入という現状を変えることが重要だと考える有権者は,投票所に行って賛成票や反対票を投じる動機が刺激されるだろう。こうした反イラン姿勢をとる有権者は,親イラン派のファタハ同盟の支持者とはまったく異なる人々で,後述のように有権者内でかなり多くの割合を占めると考えられる(後掲の図8)。したがって,上記の想定は以下の仮説に定式化できる。

補助仮説 4:イランの介入停止を強く求める者ほど,投票参加に向かいやすい。

Ⅱ 仮説を検証するための方法とデータの説明

以上のイラク政治状況から帰納的に導出された本稿の仮説と4つの補助仮説を検証するために,政治動員が投票率にいかなる影響を与えるかを調べるサーベイ実験を,下記のプロトコルに従いイラク国内で行った。

世論調査は,イラク国内に在住する18歳以上のイラク国民を対象とし,アラビア語およびクルド語による戸別訪問面接で意見の聴取を行った。標本抽出は,2011年のイラク統計局のセンサスをもとに,まず県別の人口比にあわせてサンプルを配分したうえで(エリアサンプリング),民族と宗派の配分が人口比に比例するように設計する層化無作為抽出法をとった(注14)。設定した民族と宗派の区分は,スンナ派アラブ人,シーア派アラブ人,キリスト教徒,クルド人,その他で,サンプルサイズは1000である。1000サンプルを収集するまで2186人に面接した(回答率45.7パーセント)。実査期間は,2018年2月1日~3月23日までとし,調査員全員に対して事前にバグダード大学で調査トレーニングを行い,プレテストも実施して質問票および実験にかかわる妥当性をチェックした。なお,質問票の全訳および単純集計については,山尾[2019]を参照していただきたい。

調査では,(1)現状認識・将来への展望,(2)イデオロギー,(3)支持する政策とその理由,政策の重要性,(4)外部介入の是非,(5)政党支持とその要因,(6)投票政党に加え,(7)政治動員の効果を調べるために,スプリットサンプルで調査対象者をランダムにA,B,Cの3グループに分け,実験群であるAとBには選挙動員に関連する質問を尋ね,Cは統制群として動員に関する質問をしなかった。

2つの実験群には次の質問をした。Aグループには,「選挙期間中に,あなたの支持政党から電話がかかってきました。『我が党が選挙で議席を増やすために投票に行ってほしい』と電話の相手は言っています。あなたは選挙で投票に行きますか」と質問し,支持政党勝率のための電話動員効果を測った。グループBには,「選挙期間中に,あなたの支持政党から電話がかかってきました。『敵対している政党が選挙で大きく議席を増やしそうだ,投票に行ってほしい』と電話の相手は言っています。あなたは選挙で投票に行きますか」と質問し,敵対勢力阻止のための電話動員効果を測定した。Aグループに付与したシナリオは単純なものであり,Bグループにはより切迫した状況のシナリオを付与している。どちらのタイプのシナリオも「有権者に自らの持つ一票の重み」を刺激するものであるが(注15),Bグループの方が全体として政治参加を諦めるように設計した。統制群であるグループCに対しては,単に「あなたは次の選挙で投票に行きますか」と問うた。

本調査は上述の通り2018年2~3月に実施しており,これは2018年第4回議会選挙の選挙キャンペーンのちょうど真ん中の期間に当たる。また,イラクではコミュニケーションに携帯電話が最もよく利用されており,選挙動員においても,政党のホームページや街頭演説,Facebook,Twitterなどのソーシャルメディア・サービスに加え,一般的な手段のひとつとなっている。そのため直接的に有権者にアプローチする手段であると国民の間で認識されている。したがって,選挙動員が有権者の投票参加に与える影響をはかるためには,最も適した時期に最も適した手段でサーベイ実験を実施できたと言ってよいだろう。

電話での政治動員が投票に与える影響についての実験結果は,図5のとおりである。支持政党勝利のための電話動員効果はほぼ半分(「投票に行く」49.8パーセント,「投票に行かない」50.2パーセント),そして敵対勢力阻止のための電話動員効果は32.7パーセントと,逆効果になっている。他方,政治動員が行われなかった統制群であるグループCが「投票に行く」との回答が最も多く,70.5パーセントである。つまり,記述統計だけをみるならば,電話での政治動員は投票に行く気を失わせている,と言えるだろう。

図5 サーベイ実験の結果(単位:人)

(出所)世論調査結果から筆者作成。

社会に政治不信が蔓延していることを所与とした時に,前述の仮説および4つの補助仮説は実証的に支持されるのであろうか。次節では動員の逆効果仮説,確立した支持基盤を持つ条件下での正の動員効果仮説,政策重視型有権者への正の効果仮説,オプティミスト型有権者への正の効果仮説,そしてイランの介入を嫌う有権者への正の効果仮説を,実験データによって検証する。

Ⅲ 投票参加の意思に与える電話動員の影響

1. モデルと従属変数,独立変数

我々は有権者が投票参加を決めることに,何がどの程度影響しているのかに関心がある。それゆえ,グループA,B,Cのうち,「投票に行く」と回答した有権者をまとめて「投票参加」という変数を作り,これを従属変数としてロジット・モデルで分析を行った。

仮説1aと1bならびに補助仮設1~4を検証するために,それぞれ以下の通り独立変数を加えた。

モデル0は独立変数を含まない統制変数のみである。宗派民族集団の違いが投票参加に与える影響をみるために,シーア派ダミー,スンナ派ダミー,クルド人ダミーを投入した(ベースカテゴリーはキリスト教徒とその他)。加えて,モデルの統制変数(注16)である人口動態学的変数として,性別,年齢,最終学歴(1=文盲,2=読書可能,3=小学校,4=中学校,5=高等学校,6=専門学校,7=大学生,8=大卒,9=大学院/院卒),月収(1=月収100米ドル以下,2=100~500ドル,3=500~1000ドル,4=1000~1500ドル,5=1500~2000ドル,6=2000ドル以上)を投入した。

モデル1は,本稿の主たる関心である電話での政治動員が投票参加に与える影響を分析するため,支持政党勝利のための電話動員を受けたグループA(仮説1a),敵対勢力阻止のための電話動員を受けたグループB(仮説1b)をダミー変数で投入した(ベースカテゴリーはグループCの統制群)。

モデル2は,補助仮説 1を検証するために,統制変数と電話動員に加え,IS台頭後に影響力を拡大し,強い支持基盤を有するようになった3政党,つまりサドル派,ワタニーヤ,ファタハ同盟に対する支持の度合いを投入した。具体的には,「以下の政党連合をどの程度支持しますか,1~10のあいだで答えてください」(1は「まったく支持しない」,10は「非常に強く支持する」)という質問に対する回答である。

モデル3は,補助仮説 2の政党支持理由が投票参加に与える影響をはかるためのもので,統制変数,電話動員,3政党への支持の強さに加え,「あなたが政党を支持する理由を選んでください」という質問の選択肢である指導者,政策,汚職のなさ,イデオロギーをそれぞれダミー変数として投入した(ベースカテゴリーは宗派・民族を政党支持理由とする者)。

モデル4は,補助仮説 3にある民主主義への態度と将来への展望が投票参加に与える影響をはかるもので,統制変数,電話動員,3政党への支持の強さ,政党支持理由に加え,「2003年以降の民主主義と自由の獲得を誇りに思う」という民主主義への態度と,「現在と比べて,3年後には政治状況が改善されている」という将来への展望を問う質問の回答を,1=まったく同意しない,2=あまり同意しない,3=どちらとも言えない,4=同意する,5=強く同意するとコード化して投入した。

モデル5は,補助仮説 4の外部介入に対する認識が投票参加に与える影響をはかるため,統制変数,電話動員,3政党への支持の強さ,政党支持理由,現状認識・将来への展望に加え,外部介入の停止の重要性に対する認識を投入した。具体的には,「あなたは以下の国の外部介入をどの程度なくすべきだと思いますか」という質問のなかから,IS後の介入でイラク政治や選挙を理解するために重要となるイランとサウディアラビアへの回答をコード化(1=絶対に停止すべきでない,2=停止すべきでない,3=どちらとも言えない,4=停止すべき,5=完全に停止すべき)して投入した。

最後に,以上のすべての独立変数に,モデル0で投じた宗派民族集団と人口動態学的変数に加え,統制変数として政策志向と紛争強度を投入したフルモデルがモデル6である。具体的には,IS台頭後に非常に重要性が高まっているが,同時に有権者の意見が割れている政策である「旧体制の排除」と「財政・行政汚職問題の解決と福祉や社会保障の充実」問題に対する重要度(1=まったく重要でない,2=重要でない,3=どちらとも言えない,4=重要,5=とても重要),そして最も重要と考える政策のうち,「バグダードの中央政府権限を強化した集権的な統一国家の強化」と「財政・行政汚職問題の解決」,「福祉や社会保障の充実」をそれぞれダミー変数にして投入した(ベースカテゴリーはその他の政策を最も重要とする者)。紛争強度については,山尾[2020]の通り,ISによって生じた死者数をコード化して投入した。

2. 実験結果の分析と動員効果仮説

各モデルの分析結果は,表1の通りである。この結果を検討する前に注意しておかなければならないのが,フルモデルの欠測値の大きさである。1000サンプルのうち,モデル6で分析に利用されているのは643サンプルに過ぎず,欠測値として処理された個票が,投票参加に何らかの見えない影響を与えている可能性を排除できない。近年は,欠測処理とそれがもたらすバイアスに対して自覚的であることが求められている[高井・星野・野間 2016]。したがって,本稿では分析の頑健性を担保するため,多重代入法による欠測値の補完を行い,再分析する。

表1 投票参加に与える影響のロジスティック回帰分析の結果

(出所)筆者作成。

(注)*p<0.1 **p<0.05 ***p<0.01

   かっこ内は標準誤差。

本稿では多重代入法として伝統的な方法であるデータ拡大法(data augmentation: DA)とDAの代替アルゴリズムである完全条件付き指定(fully conditional specification: FCS)の両方を採用した。ここではDAアルゴリズムによる多重代入データのロジット分析結果を主とし,FCSアルゴリズムによる結果を頑健性チェックのための感度分析とした。これは本稿の分析データにおける欠測パターンが非ランダム(not missing at random: NMAR)であり,欠測メカニズムを同定できないためである[高井・星野・野間 2016; 高橋・渡辺 2017(注17)。DAアルゴリズムによる多重代入の分析結果(DA結果),およびFCSアルゴリズムによる多重代入の分析結果(FCS結果)は表2の通りである。なお,本稿では,DA結果を最終的なものとし,多重代入をしないオリジナルの分析結果は参照の対象とする。視覚的にわかりやすくするため,このDA結果の係数をプロットしたのが図6である。

表2 多重代入の結果(DA結果とFCS結果)

(出所)筆者作成。

(注)*p<0.1 **p<0.05 ***p<0.01

図6 投票参加に与える影響の限界効果

(出所)筆者作成。

まず,独立変数を含まない統制変数のみのモデル0をみると,民族宗派集団,政治知識量(学歴),年齢などは,イラクでは投票率を上げる/下げる要因にはならないことが分かる。唯一,性別だけが負の方向に5パーセント水準で有意である(つまり男性のほうが投票しやすい)が,他の統制変数は,モデル6およびDA結果では統計的に有意でない(注18)

次に,仮説1aおよび仮説1bの電話動員の影響をみてみよう。モデル1では,支持政党勝利のための電話動員を受けたグループA,敵対勢力阻止のための電話動員を受けたグループBともに負の方向に有意になっている。フルモデルのモデル6,および欠測値のバイアスを補正したDA結果を含め,すべてのモデルで電話動員が投票参加に負の影響を与えるとの結果となっている。つまり,全ての変数をコントロールしてもなお,電話動員を受けると,そうでない場合に比べて投票に行く確率が下がることが明らかになった。

電話による政治動員の影響を直感的に理解できるように,表2に示したDAの推定結果から視覚化したものが図7である。左上のパネルより,サドル派を強く支持する(=10)有権者で動員を受けなかった場合,投票参加の確率は78.8パーセントである。しかし「選挙で議席を増やすために投票に行ってほしい」という動員を受けると(グループA),投票参加確率は58.6パーセントとなり,20ポイントも低下してしまう。同様に左下のパネルだと,動員を受けない強いサドル派支持者の投票参加確率は82.2パーセントである(注19)。しかし「敵対している政党が選挙で大きく議席を増やしそうだ,投票に行ってほしい」という電話動員を受けると(グループB),投票参加確率は49パーセントとなり,30ポイント以上も下落する。

図7 サドル派とワタニーヤの支持度合と投票参加の変化

(出所)筆者作成。

冒頭で確認した通り,先行研究においては,一般に政治動員があると投票率は上がる傾向にあるとされてきた。だが,イラクではこれとはまったく逆の結果となった。本サーベイ調査を行った2018年5月の第4回議会選挙前のキャンペーン期間には,いずれの政党も実際に電話やSNSを用いて活発な動員を行っていた。にもかかわらず,実際に投票率が大幅に低下した。この実態は,政党が有権者を動員すれば投票率が下がるという本サーベイ実験の結果と一致していると言えるだろう。

だとすれば,電話動員を受けると,投票参加の意思を失うのはいったいなぜなのか。おそらく,イラクでは,動員という情報の提供は,投票先を決定するコストの削減ないし投票意思の確固化につながらないためだろう。その要因は複数あると思われるが,最も重要なのは本稿の分析や仮説の前提となっている政治不信の蔓延だろう。汚職や国民を無視した権益追及の政治が著しい政治不信を導いているため,動員を受けることに辟易している有権者が多いものと予想される。

投票行動理論に照らし合わせた場合,イラク議会選挙における電話動員と投票意思の喪失の関係はむしろ「投票コストの増幅」だと言えるのかもしれない。通常のケースでは支持政党が自党支援を電話で要請した時,この情報を有権者が自らの票の重みを自覚して支援のために投票するかもしれない。しかし,電話動員を受けた有権者は支持政党を助けるのではなく,見捨てることを選択する。

よって通常見られるように選挙での動員が投票参加を引き上げるのとは反対に,汚職による政治不信が蔓延するイラクでは,電話での動員が投票参加を引き下げる逆説的な結果となる。これが本論の主たる主張である。

Ⅳ 政党支持や支持する政策が投票参加に与える影響

1. 確立した支持基盤を持つ条件下での正の動員効果仮説

だとすれば,動員を受けない場合,いかなる要因が投票参加に影響を与えているのだろうか。イラク政治状況から帰納的に導き出した補助仮説 1が主張するように,確立した支持基盤を持つ政党の支持者は投票に行きやすいのではないか。この点を検証するためのモデル2の結果は,サドル派とワタニーヤを支持する者は,投票参加しやすくなることを示している(それぞれ5パーセント,1パーセント水準で有意)。すべての変数をコントロールしたモデル6では,上記2政党に加えてファタハ同盟の支持者も5パーセント水準で有意となるが,欠測値バイアスをコントロールしたDA結果では,ファタハ同盟の支持者の有意性がなくなる(注20)

先述の図7から,サドル派とワタニーヤの支持度合いにともなって投票参加がどのように変化するかを直感的に読み取ることができる。ここからわかるように,サドル派をまったく支持しないものは,電話動員を受けた場合47パーセントの確率で投票に行くのに対し,とても強く支持する有権者は58.6パーセントと,10ポイント以上も投票参加の可能性があがっている(左上)。電話動員を受けない場合(グループC)の投票参加の確率は,サドル派を最も支持しない場合で69.7パーセント,最も支持する場合で78.8パーセントとなる(左上)。したがって,確たる支持基盤を有し,かつIS台頭後に影響力を拡大したと考えられる政党(サドル派,ワタニーヤ,そして部分的にはファタハ同盟)を支持する者は,投票参加の確率が高まるという補助仮説 1は,支持されたといえるだろう。

サドル派はもともと,サドル・シティやシュアラ地区と呼ばれる首都貧民街を強固な支持基盤としてきた。これらの貧民街には,イラク全人口の約2割が住む首都バグダードの人口のおよそ3分の1が集中している。またサドル派は南部にも強固な基盤を有している。さらに,上述の通り,IS掃討作戦で露呈した様々な問題への改革を主張する街頭行動がサドル派への支持をさらに拡大させていった。それらの地域の有権者は,政治不信のなかでもなお,他の党を支持する有権者と比較して投票に参加しやすくなると考えられる。

ワタニーヤもまた,戦後一貫して改革志向を示すリベラルな知識人層を基盤としており,IS後の改革を主張した街頭行動でも支持を拡大していった(注21)。とくに,政権の中枢に入らず,リベラル左派として反汚職,反宗派主義,反党派主義の姿勢をとるワタニーヤに対しては,有権者からの支持が高い(注22)

2. 政策重視型有権者への正の効果仮説

政策(政策内容や汚職対策)を重視して支持政党を選択する者は投票参加しやすいという補助仮説 2はどうだろうか。モデル3をみると,政策や汚職に対するクリーンさを重視して支持政党を選択する有権者は投票参加しやすいという結果となった(政策は5パーセント水準,汚職は1パーセント水準)。モデル6では,汚職に対するクリーンさを重視する有権者は有意でなくなっているが,DA結果ではともに統計的に有意になった(政策は10パーセント水準,汚職は5パーセント水準)。したがって,欠損データのバイアスを排除すると,補助仮説 2は支持されたと結論付けて問題ない。

3. オプティミスト型有権者への正の効果仮説

戦後民主主義の獲得を誇りに思い,将来に対して明るい希望を持つ者は,投票に行きやすくなると主張する補助仮説 3はどうだろうか。モデル4とモデル6では民主主義を誇りに思う者のみ有意でないが,DA結果では,民主主義に誇りを持つ者も将来に明るい希望を持つ者も,ともに5パーセント水準で統計的に有意となった。したがって,モデル4および6では欠損データのバイアスを受けていた可能性があり,そのバイアスを排除すると,補助仮説 3は支持されたといえる。

戦後民主主義の獲得を誇りに思い,将来に対して明るい希望を持つ者は,もとより現状の政治への積極的な参加を通した改革志向を有しているため投票に行きやすくなるという主張は,直感的に理解できるだろう(注23)

4. イランの介入を嫌う有権者への正の効果仮説

最後に,外部アクターの介入に対する有権者の認識が,投票参加に与える影響を考えてみたい。補助仮説 4では,IS後に顕在化したイランの介入停止を強く支持する者ほど,現状改革のために投票参加しやすくなると主張した。モデル5が示すように,イランの介入を停止すべきだと考える有権者ほど投票に参加しやすいという結果となった。なお,この結果は,全ての変数を投入したモデル6でも,欠測値バイアスを排除したDA結果でも等しく有意であった。さらに,DA結果からは,イランの介入に否定的な有権者が投票に行きやすいのとは反対に,サウディアラビアの介入に批判的な有権者ほど,逆に投票に行きにくいという結果になった(前者は1パーセント水準,後者は10パーセント水準で有意)。

イランの介入を停止すべきと考える者は,スンナ派ばかりではない。イランの介入に対する姿勢と宗派民族集団をクロスさせた図8が示すように,イランの介入に批判的な者はおおむねすべての集団で同様の割合(絶対に停止すべきと回答した者はすべての集団で80パーセント前後にのぼった)存在する。これらの有権者は,IS後に顕著になったイランの介入を是正するべきだと考えており,それを選挙という制度的政治プロセスにそって実現することを希求しているのだと解釈できるだろう(注24)

図8 民族宗派集団ごとのイランの介入に対する姿勢(単位:%)

(出所)世論調査結果から筆者作成。

結 論

冒頭の問いに戻ろう。イラクのようなポスト紛争社会においては,選挙での政治動員は投票参加にどのような影響を及ぼすのだろうか。

本稿が導き出した答えは,政治不信が蔓延している状態を前提とすると,動員は逆説的に投票率を下げる効果をもたらす,というものであった。これは,すべてのモデルで証明された極めて強固な実験結果である。汚職の蔓延と有権者を無視した政治エリートのみでの利権争いが著しい政治不信と信頼の欠如を生み出し,その結果,有権者は選挙で動員されることに対する嫌悪感にも近い感情を抱くようになったと考えられる。2018年議会選挙に即して考えるなら,こうした深刻な政治不信のなかで各政党が有権者を積極的に動員したことにより,投票率が大幅に低下した,と結論付けられるだろう。

現地の政治的文脈を考慮したうえでいくぶん理論的な解釈をするならば,電話動員が棄権を引き起こす要因は,「投票コストの増幅」だと解釈できる。政治家による汚職が深刻な政治不信をもたらしているイラクのケースでは,電話動員が有権者にとって自らの政治不信感情を惹起させ,投票所に足を運ぶコストを強く意識させるのである。

さらに,選挙終了後に選挙同盟を解消し,政党連合を再編することが通例となっているイラクにおいては(注25),電話動員が選挙後の連立政権形成のための交渉力の弱さのシグナルとなって機能し,動員が逆効果になるという解釈も可能かもしれない。イラクでは投票終了後,選挙同盟を解消して各党が合従連衡の政治ゲームを行い,組閣へと至ることが通例である。すなわち有権者からみると,投票は組閣プロセス中の支持政党に交渉力を与えることを意味する。電話動員を受けることは,有権者にとって「自らの支持政党が選挙後の合従連衡において必要な交渉力に欠けている」ことを意味するシグナルであり,交渉力がない支持政党に投票するよりは棄権を選択するのかもしれない。

この推論を裏付けるのが,敵対勢力阻止のための電話動員効果の検証である。選挙に勝利するための電話動員よりも,敵対勢力阻止の電話動員を受けた方が,投票意思を失う有権者が多くなることは,本稿が明らかにした通りである。有権者は,敵対勢力阻止というメッセージを,その政党が弱いことを示すシグナリングだと受け取るのかもしれない。それゆえ,通常の投票動員電話よりも党勢の弱体化と交渉力の弱さを印象づけることになり,棄権する有権者が増えるのだと解釈できる。

以上の議論に加え,投票参加しやすくなるのは,確立した支持基盤を持つ政党の支持者(補助仮説 1),政策を重視して支持政党を選択する者(補助仮説 2),戦後民主主義の獲得を誇りに思い,将来に対して明るい希望を持つ者(補助仮説 3),IS後に顕在化したイランの介入停止を支持する者(補助仮説 4)であることが分かった。

ポスト紛争社会では,民主的な政治に対する期待が出発選挙で高くなりやすい。政治家も有権者も機会主義的な振る舞いを誘発されるため,投票率も高くなりやすい。ところが,高すぎる期待が満たされず,一部の政治家だけが利益を得ていると広く信じられるようになると,著しい政治不信につながり,政治動員が逆効果に働きやすくなるのではないか。少なくとも2018年議会選挙では,蔓延する政治不信のなかで活発な政治動員が行われたことこそが,著しく投票率を低下させる主因となったのである。すなわち,政治不信の広がりだけでは,20ポイントという大幅な投票率の凋落には至らない。政治不信と活発な政治動員が相乗効果をもたらす時,投票率がさらに引き下げられるのだと考えられる。

本稿では,政治不信の蔓延を前提条件とし,動員が投票率の低下につながるという因果効果を実証した。とはいえ,動員が投票率を低下させる因果メカニズムについては,政治不信の蔓延であるとの推定にとどまっている。この因果メカニズムの解明は今後の課題である。

[付記]

(山尾・九州大学大学院比較社会文化研究院准教授,浜中・龍谷大学法学部教授,2019年7月16日受領,2020年7月10日,レフェリーの審査を経て掲載決定)

補遺 統計量

(出所)筆者作成。

(注1)  ポスト紛争社会の出発選挙については,Reilly[2008]Kumar[1998],各国の各選挙の投票率については,Voter Turnout Database(https://www.idea.int/data-tools/data/voterturnout)を参照。

(注2)  投票率が著しく低下した結果,まとまった票を獲得できたのは大規模な動員力を有する政党のみとなった[山尾 2018b]。

(注3)  個別の選挙分析については,山尾[2009; 2010; 2014a; 2014b; 2018b],複数の選挙を観察し,政治的宗派主義が促進される様子を分析した研究については,Dawisha[2010], Yamao[2012]を参照。

(注4)  フィールド実験による動員と投票参加の網羅的なレビュー論文としてMichelson and Nickerson[2011]がある。この論文ではフィールド実験の実施にともなう課題(実験プロトコルの不徹底な実行等)や外的妥当性の欠如,選挙結果に影響するかもしれない研究倫理上の課題に触れている。

(注5)  平均的には動員が投票率を引き上げるものの,動員がどの程度効果を持つかは選挙によって異なり,ほとんど効果を持たないこともある[Green and Gerber 2015]。

(注6)  詳細については,山尾[2018b]を参照。

(注7)  本選挙では,サドル派はイラク共産党などの左派勢力と,サーイルーン(Sāʼirūn)と呼ばれる政党連合を結成したが,サーイルーンの得票のほとんどがサドル派であったため,本稿ではサドル派として分析する。

(注8)  Mansour and van den Toorn[2018]は,本選挙最大の特徴が,制度内政治に対する不信がもたらした投票率の低下であったと結論付けている。

(注9)  政治不信が投票参加に影響して生じるアウトカムとしては,(1)投票の忌避,(2)野党支持などの批判票の増加,(3)無効票の増加,が想定できる[Hooghe, Marien and Pauwels 2011]。ただし批判票の増加は投票先政党が政治不信の原因になっていない場合に限られるだろう。

(注10)  Iraqi Parliament Monitorのホームページより引用(http://www.miqpm.com/new/News_Details.php?ID=364)。

(注11)  筆者たちを中心とする研究チームが質問票の草案を作成し,現地の実査機関と協議を重ねて完成させるという共同プロジェクトで,実査は,2011年はベイルートに拠点をおくイラク戦略研究所,それ以外はバグダード大学社会学部に依頼した。サンプリングは,イラク計画省が発表した人口データにもとづいてあらかじめ県別に配分し,その後宗派と民族ごとに配分した。結果の単純集計は,現代中東政治研究ネットワーク(CMESP-J.net)のホームページ(https://cmeps-j.net/ja/)および新学術領域「グローバル関係学」のホームページ(http://www.shd.chiba-u.jp/glblcrss/index.html)に掲載している。

(注12)  詳細は,山尾[2019]を参照。

(注13)  詳細は,山尾[2018a]を参照。

(注14)  個人レベルのセンサスは存在しない ため,人口規模や男女比,宗教・宗派・民族別の人口,県別の人口比にもとづいて各県のサンプルサイズを調整した。サンプリングの詳細は山尾[2019]を参照のこと。先述の通り母集団の個人レベル情報を収録したサンプリング台帳は存在しない。それゆえ今回の実験結果を将来の選挙に敷衍する外的妥当性は小さいと言わざるを得ない。

(注15)  一票の重みを有権者に感じさせる理論的なバックグラウンドは,ライカー・オーデシュック・モデルである[Riker and Ordeshook 1968]。

(注16)  バランスチェックを行った結果,各グループの人口動態学的変数の割り当てに歪みがあることが分かったので,モデルに統制変数を投入した。

(注17)  多重代入にあたっては代入モデルと分析モデルを同じとして融和性(congenial)を満たした[高井・星野・野間 2016, 123]。また代入済みデータ数は近年の統計学研究の動向を踏まえて100とした[高橋・渡辺 2017, 53]。

(注18)  性別については,モデル6では有意でないが,多重代入の結果は10パーセント水準で有意となっている。

(注19)  左上のパネルと確率が異なるのは,グループBのサンプルを加えてグループAのサンプルを落とすことにより,他の条件が異なってしまうためである。

(注20)  統計的に有意ではないものの,係数の値は正のままであるため,ファタハ同盟支持と投票参加のあいだには正の相関の傾向が表れている。このデータでは投票参加との統計的関係を検証できないが,アーミリーはシーア派民兵が支持基盤であり,電話動員によって投票参加率の減少は生じにくいということは言えそうである。

(注21)  IS後に台頭した人民動員隊(ファタハ同盟)やサドル派に批判的な有権者はかなり存在し,彼らが人民動員隊やサドル派の勝利を阻止するためにワタニーヤに票を投じようとしたという側面もあったか。

(注22)  ところが,ワタニーヤは実際の選挙では票を伸ばせなかった。ワタニーヤに対しては,一定程度の評価や支持が存在するものの,実際の選挙では政権を担当することは多くの有権者にとって現実的ではなかったと考えられる。

(注23)   なお,本論とは直接関係ないが,DA結果から読み取れる「旧体制派の排除を重視する者は投票に行きにくい」という傾向は,現在の対旧体制政策が妥協的・宥和的だと批判的に考える,よりラディカルな有権者にみられるものだと考えられる。

(注24)  サウディアラビアの介入に批判的な有権者は,シーア派でありかつ既存の政治体制に極めて批判的な層であると考えられる。したがって,イランの介入を停止することで積極的に現状を改革しようとする有権者とは反対に,諦念によって投票に行きにくくなると考えられる。

(注25)  合従連衡については,山尾[2013]を参照。

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