アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
研究レビュー
多国間統計分析と国内事例研究による混合手法――分析アプローチとしての発展と方法論的限界への処方箋――
東島 雅昌
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 62 巻 4 号 p. 49-78

詳細
《要 約》

多国間統計分析と事例研究を組み合わせる実証分析は,比較政治学で広く実践され,途上国の政治分析でも数多くみられる。本稿では,この混合手法の(1)方法論的意義と問題点,(2)採用傾向,(3)問題への処方箋に焦点を当て,比較政治学における同手法を検討する。まず,統計分析と事例研究の混合を「入れ子分析」として定式化したLieberman[2005]以後に明らかになった問題を整理し,同手法にいかなる課題が残されているか論じる。次に,政治学主要誌とモノグラフで,多国間統計分析と国内事例研究を併用した実証分析の採用頻度がどう変遷してきたのか,他の分析手法や異なる混合手法と比較しつつ検討する。その結果,「入れ子分析」が時系列的に増え,特にモノグラフでの影響力が大きいことがわかった。最後に,「入れ子分析」の問題点は,統計的因果推論やビッグ・データの手法を援用することで緩和しうることを,最近の研究例を交えながら論じる。

Abstract

Over the past few decades, comparativists have been increasingly combining cross-national statistical analysis with within-country case studies as a multi-method research design. This paper methodologically and empirically explores this mixed-method approach by focusing on issues such as (1) its methodological advantages and problems, (2) changes in the frequency of adoption, and (3) possible solutions to its problems. First, I identify where this type of mixed method currently stands in the field of comparative politics by reviewing Lieberman’s (2005) “nested analysis” design as well as the subsequent debates over this approach. Second, I investigate time trends of various mixed methods and their impacts on political science by analyzing new datasets of political science monographs and journal articles covering the period of 1995-2018. My analysis finds that, although there are remarkable differences in trends between monographs and journal articles, the nested analysis type of research has tended to increase over time, especially in the case of monographs. Lastly, while introducing cutting-edge research on comparative politics in the developing world, this article suggests that problems with the nested analysis design can be mitigated by applying causal inference techniques and big data methods to cross-national data analysis.

Ⅰ はじめに

Ⅱ 比較政治学における混合手法の多様性

Ⅲ 多国間統計分析と国内事例研究の混合――3つの問題点――

Ⅳ 混合手法実践の計量分析

Ⅴ 多国間統計分析と国内事例分析による混合手法の問題への対処

Ⅵ 結論

Ⅰ はじめに

本論文は,多くの国のデータを定量的に解析する多国間統計分析(cross-national statistical analysis)と,1つまたは複数の国をつぶさに観察する国内事例研究(within-country case study)を組み合わせる実証分析が,比較政治学の研究コミュニティにどれほど受容され,いかなる方法論的問題を孕み,そして問題点にどのように対処できるのか検討する(注1)。多国間統計分析と国内事例研究を組み合わせた混合手法(mixed method)(注2)は,政治学で数多く採用されてきた。特に,国ごとの政治経済現象の違いを説明するにあたり,多国間統計分析のみ,あるいは少数国の事例研究にのみ頼ることは研究設計上の問題を解決しづらいため,比較政治研究者は両者を組み合わせて研究設計を改善しようと試みてきた。また,近年の多国間データの充実化と統計手法パッケージの普及により,先進国を対象とする研究者はもちろん,データ収集上困難な現地調査を伴う開発途上国をフィールドとする比較政治研究者であっても,事例研究の知見を広く多国間データのなかに位置付け,多国間統計分析を併用することも増えてきた。

本論文では,比較政治学において多国間統計分析と国内事例研究を組み合わせる混合手法の(1)方法論的意義,(2)実際の採用傾向,(3)実践上の問題点の3つに焦点を当て,同混合手法を方法論と実証の両面から考察する。まず,国を分析単位とした比較政治学の混合手法の多様性について手短に整理し,本稿の関心である多国間統計分析と国内事例研究の混合手法が方法論上いかなる位置を占めるのか検討する。次に,Lieberman[2005]の提唱した「入れ子分析」(nested analysis)を出発点として,その後明らかになった論点を整理し,多国間統計分析と国内事例研究の混合手法がいかなる問題に直面しているのか指摘する。具体的には,多国間統計分析の結果を基準に事例研究の対象を決定する研究手続きをとる「入れ子分析」[Lieberman 2005]は,(1)多国間統計分析の変数測定や研究設計に問題がある場合,事例選択の適切な基準とはなり得ないこと,(2)多国間統計分析で確認される共変関係をもたらす因果メカニズムは事例間で異なる可能性があること(「等結果性」[equifinality]),(3)事例研究から仮説の着想を経て多国間統計分析で仮説の外的妥当性を確認する研究プロセスの可能性を閉ざしてしまうこと,の3つの問題を抱えていることを論じる。

これらの方法論的問題に直面する上に複数の手法に精通する必要があるため「コスト」の大きな混合手法は,実際に研究者たちにどれだけ用いられてきたのであろうか。方法論上の意義と限界だけではなく,実際の分析手法としてどれだけ利用されてきたかを明らかにすることで,比較政治学における同分析手法の将来を占うことができる。本論文では,多国間統計分析と国内事例研究を組み合わせる混合手法が,他の分析手法や混合手法と比較していかなる位置づけにあるのか,実証分析をおこなう。具体的には,比較政治研究を牽引するケンブリッジ大学出版局(Cambridge University Press: CUP)から出版されたモノグラフ(1997~2018年,540冊)と最近20年の主要政治学英語雑誌に掲載された比較政治分野の論文(1995~2015年,500本)を定量的に分析し,多国間統計分析と国内事例研究を組み合わせた研究が,(1)他の混合手法と比べてどれくらい増えてきたのか,(2)(主に米国の)学界での評価をどれだけ高めているのか検討する。

統計分析の結果,以下のことが明らかになった。第1に,雑誌論文とモノグラフでは各分析手法の占める比率とその変化に大きな違いが見られる。モノグラフでは統計分析と事例研究の混合,特に本稿の関心となる多国間統計分析と国内事例研究を組み合わせた混合手法は主要な分析手法の1つであり,増加傾向にある。他方,雑誌論文の場合,そうした統計と事例の混合は微増傾向にあるが比率としては低く,単一の分析手法,特に回帰分析,より近年は実験や擬似実験手法を用いた因果推論手法に依拠することが多い。

第2に,統計と事例の混合,特に多国間比較と国内事例研究を組み合わせた研究は,学界に大きな影響力を及ぼす比較政治研究を数多く出版する「ケンブリッジ比較政治シリーズ」(Cambridge Studies in Comparative Politics)から数多く出版される傾向にあり,アメリカ政治学会(American Political Science Association: APSA)の学会賞を受賞する可能性も,他の混合手法や単一分析手法と比べて高い。そして,これらモノグラフにおける研究の「評価」に対し,因果推論手法や数理分析が統計的に有意なかたちで影響する傾向はみられなかった。

第3に,雑誌論文の場合,モノグラフと対照的ではあるが,こうした統計と事例の混合が,論文のインパクトを測定する指標となる「論文引用数」に大きな影響をもつとはいえず,因果推論手法を通じた実証分析あるいはフォーマルモデルを用いた数理分析の方が論文引用数とより強い相関関係をもつことがわかった。

以上の傾向は,いわゆる「因果推論革命」と政治行動論の再興隆によって因果推論手法が発展するなかでも,それらの影響力は雑誌論文で特に大きく,モノグラフで研究成果を発表する場合には多国間比較と国内事例研究の混合手法が有力な手法として採用される傾向にあることを示している。この方法的棲み分けの傾向は,雑誌論文とモノグラフで出版を目指す場合,分析手法の採用や研究設計に関し,比較政治研究者は異なる戦略を採る必要があることを示唆している。

最後に,多国間比較と国内事例研究による混合研究の問題点に,比較政治学者がどのようにアプローチしてきたのかについて,最近の研究例を紹介しつつ,その対処法を考察する。とりわけ,本論文は,多国間統計分析と事例研究の混合手法が直面する問題は,近年急速に発達する因果推論手法やビッグ・データの手法を援用して緩和できると主張する。具体的に,処方箋として示されるのは以下の4点である。第1に,多国間統計分析における測定誤差の問題を緩和するために,ウェブスクレイピング,計量テキスト分析,クラウド・ソーシングによる専門家調査など,大規模データを構築するための手法を用いたデータセットを複数利用することで測定妥当性を高めることができる。第2に,観察データにおける因果推論手法の応用を進めることで,交絡因子による見かけの相関の問題を緩和し,統計分析結果に基づく誤った事例選択のリスクを減じることができる。第3に,因果メカニズムの検証を国内事例研究に一任するのではなく,想定するメカニズムが作動していれば観察されるであろう追加的な実証上の含意を明らかにし多国間統計分析をつうじて検証する,あるいは統計的因果推論の一手法である因果媒介分析を援用し因果メカニズムを特定することで,「等結果性」の問題を緩和できる。最後に,探索的な事例研究からはじめて仮説を導出し,多国間統計分析へと実証分析を拡張したのちに,仮説検証型の事例研究を追加的に実施することで,既存データセットの制約に囚われない仮説導出とその体系的検証が可能になる。

本論文は,国内外の比較政治学における混合手法をめぐる議論について2つの貢献をおこなう。第1に,多国間統計分析と国内事例研究の混合が直面する問題について,因果推論手法やビッグ・データの手法を導入することで研究設計と実証分析の頑健性を改善できる可能性を示す。第2に,多国間統計分析と国内事例研究による混合手法がどのように発展してきたのか,他の分析手法や混合手法と体系的に比較しながら最近25年間の比較政治学における混合手法の発展を分析する。その際,雑誌論文だけでなく,先行研究ではあまり省みられてこなかったが,比較政治研究の発信媒体として極めて重要な位置を占めるモノグラフを分析の遡上にのせ,雑誌論文の傾向と比較することで,海外の(特に米国の)比較政治学であっても,発信媒体によって採用する分析手法が異なり,ゆえに分析手法の多元性が存在することを実証的に示す。発信媒体によってどのような分析手法が支配的であるのかをデータに基づいて客観的に分析することによって,日本から海外の政治学査読雑誌や欧米の大学出版局をつうじて研究の公刊を目指す若手研究者や大学院生に有益な情報を提供することができる。

Ⅱ 比較政治学における混合手法の多様性

比較政治学は,「世界中で生じる国内の政治現象を研究し,そこから普遍的な理論を導き出すことをめざす学問」[久保・末近・高橋 2016, 2]と定義される。民主主義,ナショナリズム,内戦,テロリズムといった抽象的概念をいかにして測定するのか,という記述的推論のあり方や,民主主義や権威主義といった政治体制にどのような下位類型が存在するのかという分類の問題は,比較政治研究の重要な研究トピックであり,近年急速に研究の発展とデータの蓄積が進んでいる。これら測定と分類を重要な基盤とした上で,比較政治研究の核となるのは,原因と結果をつなぐ因果関係の解明である。経済発展は民主化を促すのか。政府軍の無差別暴力は反乱軍の鎮圧に影響を与えるのか。民族多様性はいかなる条件のもとで内戦を導くのか。これら比較政治学の重要な問いは,原因と結果のあいだに潜む因果関係を理論と実証の両面で解明することを目指している。

本論文は,変数間の因果関係の解明をめざす手段として複数の分析手法を組み合わせる混合手法に光をあてる。国内政治現象の因果関係の一般的パターンについて,理論と実証の両面でその解明をめざすにあたり,必要条件は3つ存在する。すなわち,(1)外的妥当性,(2)内的妥当性,(3)変数間の共変関係の特定,である。第1に,比較政治学の理論と実証は,久保・末近・高橋[2016]の定義に含まれているように,普遍性,すなわち外的妥当性が担保される議論を提示することを目指す。理論的には,理論の適用される条件(scope conditions, 射程条件)に留意しつつ,できるだけ数少ない変数で多くの説明を可能にする,つまり「てこ比」の大きな理論を提示することを意味する。実証的には,射程条件を満たす母集団を慎重に特定した上で,偏りのないかたちで(質的・量的)データを採取し,理論仮説が支持されるかどうかテストすることを意味する。この実証分析が仮説を支持したとき,射程条件の範囲で実証の外的妥当性がもたらされる。

第2に,理論は,原因がどのようにして結果を生み出すと想定するのか,すなわち因果メカニズムを明らかにしておかなければならない。因果メカニズムが明示的に示されている理論は,内的妥当性がある。そして,理論の想定する因果メカニズムに質的・量的データが適合するとき,すなわち原因と結果を結びつける因果メカニズムが現実世界での観察で支持されるとき,実証上の内的妥当性をもつ。

そして最後に,原因(独立変数)と結果(従属変数)は,他の全ての条件を一定にした上で,一方の値が変われば他方の値も変化する共変関係が存在する必要がある。すなわち,理論の予測が妥当であれば,変数間には実証上の頑健な共変関係が存在することになる。このことは,近年政治学で浸透が進む「潜在的結果」(potential outcome)の思考枠組みに則れば,ある要因(X)の効果について,同一の観察対象においてXが存在していた場合に起こった結果(Y1)と,Xがなかった場合の結果(Y0,反事実)の間の差分を特定することを意味する[Imbens and Rubin 2015]。

本研究では,分析単位を国家に設定した比較政治研究において混合手法がこれまでどのように用いられ,その問題点に研究者がどのようにアプローチしてきたのか検討する(注3)。国を分析単位とするため,近年の政治学における「因果推論革命」(注4)の影響や政治行動論の復権を受けてその利用が急速に広がっている実験手法(注5)(サーベイ実験やフィールド実験など)の適用が一般に難しい研究トピックに焦点を当てることになる。また,いわゆるビッグ・データの利用可能性の高まりと機械学習への注目から,計量テキスト分析などの統計手法が政治学の実証分析に大きなインパクトを与えているが(注6),議会研究など他の政治学分野と比べると,国を比較の分析単位とする比較政治研究への影響は未だ限定的であり,これからの進展が期待される。ただし,こうした因果推論手法やデータ・サイエンスの影響が一見限定的であるからといって,国を分析単位とする比較政治研究の重要性が減じられることはない。民主化・権威主義体制の持続・内戦の勃発・マクロ経済政策・政党システム・選挙制度の起源と帰結など,比較政治学の中心テーマには,常に国ごとの違いに着目する問いが提示されてきた。これらの問いが比較政治理論の発展と現実政治の正しい理解,そして政策的含意を示す上で不可欠な以上,等閑視できない。

しかしながら,同時にこのことは,統計的因果推論やビッグ・データの分析手法の影響を,国を分析単位とする比較政治研究が全く受けないことを意味するわけでもない。むしろ,のちに論じるように,国を分析単位とする実証分析にこれらの分析手法を応用することで,統計分析と事例研究の混合手法が直面してきた重要な問題に対処できる可能性がある。例えば,多国間の観察データを用いた実証分析においても重回帰分析にのみ頼るのではなく,交絡因子の影響(他の条件を一定にした頑健な共変関係の検出)を考慮した因果推論手法の応用とその分析結果に基づいた事例選択が定着しはじめている。あるいは,多国間データを構築する際にもウェブ・スクレイピングや計量テキスト分析の手法を用い,人的コーディングを元とした既存のデータセットと合わせて用いることで測定妥当性を高めうる。この意味で,政治学における「因果推論革命」と様々なビッグ・データ手法の応用は,多国間統計分析と事例研究の混合手法の分析の頑健性を高め,同手法を洗練させていくだろう。

国を分析単位とする比較政治学では,数理モデル,統計分析,事例研究が主要な分析手法として用いられてきた。さらに,各手法の短所を補うために,比較政治学者は複数の手法を併用し,上に述べた3つの必要条件を満たすよう心がけてきた。特に,国を分析単位とする研究の場合,変数間の共変関係の確認が因果メカニズムの確証となることは稀なため,多国間統計分析を他の分析手法で補完する研究が数多く生み出されてきた。言い換えると,国を単位とする分析の場合,1つの手法で3つの必要条件を満たすことが他の分析単位よりも難しいため,混合手法の実践が魅力的な研究戦略になると考えられてきた。

数理モデルはゲーム理論の知見を背景に,諸アクターを設定し,彼らの利得と戦略に関して仮定を置いたうえで,いかなる帰結が導かれるか演繹的に明らかにする。数理モデルは,理論の論理的一貫性に注意をはらいつつ,帰結の範囲(均衡)を特定する点で理論の内的妥当性を把握することに長ける。また,アクター間の戦略的相互作用と費用便益計算のあり方を定式化し現象を統一的に説明しうる点で,理論の外的妥当性を高めることに寄与する。しかし,数理モデルは「理論のための方法」であり,変数間の共変関係を実証的に特定できない。

多国間統計分析は,理論の想定する従属変数と独立変数を量的データで測定し,大きなサンプル・サイズを背景に,理論の予測する因果効果が存在するか検討する。多国間統計分析は国内事例研究よりも,代表性の高いサンプルを採取しやすい点で,また帰結に関して他の要因の影響を統制して仮説を実証できる点で,外的妥当性の確保と共変関係の特定をおこないやすい。しかし,多国間統計分析は,変数同士がどのように結びつき帰結を生み出すか,メカニズムについて頑健な証拠を示すことは少ない。

最後に,(比較)事例研究とは,「多数の事例(母集団)に光を当てることを目的として,単一(もしくは複数)の事例を集中的に調査する」[Gerring 2007, 20]研究である。国内事例研究は,変数間に存在する因果のつながりについて説得力ある証拠を提示することに長ける。言い換えると,国内事例研究は,多国間統計分析で把握できない国内部での変数間のつながりをデータで論証できる点で内的妥当性を備える。また,注意深く設計された比較事例研究の場合,変数間の共変関係も確認できる。しかし,(比較)事例研究では,多国間統計分析と比べてサンプルの代表性を担保して事例を選択することが難しい。また,鍵となる変数以外を一定にする必要性から,空間的・時間的同一性を事例に求めがちである。よって,外的妥当性が問われやすい。

以上の議論から数理モデルは理論の外的・内的妥当性を確保するのに長けているが実証上の共変関係の提示を犠牲にし,多国間統計分析は,外的妥当性と変数間の共変関係を担保しつつも内的妥当性を犠牲にし,国内事例研究は内的妥当性の確保そしてときには実証上の共変関係に光を当てることを可能にしつつも,外的妥当性を犠牲にすることが多いことがわかる。

このトリレンマを打開するために,比較政治学者たちは複数の分析手法を組み合わせて3つの条件を満たすよう腐心してきた。数理分析と統計分析の混合,すなわち数理モデルで得られる実証的含意を統計モデルに厳密に合わせて実証分析をおこなう研究は「理論モデルの実証的含意」(Empirical Implications of Theoretical Models: EITM)として,2000年代中頃にその有効性が主張された。数理分析と事例研究の混合,すなわち数理モデルの予測を事例研究で確証する研究は「分析的叙述」(analytic narratives)[Bates et al. 1998]として,1990年代末に提唱された。そして,統計分析と事例研究の混合は古くから見られたが,1990年代中頃からその方法論的意義が議論されはじめ,今日にいたるまで統計分析と事例研究の関係性をめぐる議論が続いている[Harbers and Ingram 2020]。

統計分析と事例研究による混合手法は異なる目的と視点によって様々に分類可能であるが(注7),本稿の関心は多国間統計分析と国内事例研究の混合を位置付けることに関心がある。そこで,本論文では,(1)どのような分析単位に統計分析を用いるのか,そして(2)どのような目的と研究設計に基づき事例研究をおこなうのか,の2つに着目して分類し,第IV節で混合手法の実践に関する定量分析をおこなう際の補助線とする。まず,国を分析単位とした多国間データによる統計分析をおこなっているか,あるいは国内のアクターを分析単位とした国内データを用いた統計分析をおこなっているのかで,「多国間統計分析」か「国内比較統計分析」かを分けることができる。多国間統計分析をどのように事例研究と組み合わせるのかという点について,複数国について差異法・同意法などの明確な研究設計とともに事例研究を組み合わせる研究と,事例数が多くメカニズムの例証として事例研究を位置付ける研究に分けられる。「国内比較統計分析」に関しては,同様に差異法や同意法などの明確な研究設定に基づいて複数国の比較をおこなう研究と,もっぱら一国に着目して実証分析をおこなう研究に分けることができる。

図1は,混合手法の分類に関する本稿の議論をまとめている。比較政治学の混合手法は大きく「数理と統計」(EITM),「数理と事例」(分析的叙述),「統計と事例」に分けることができる(注8)。さらに,「統計と事例」による混合手法は,統計分析の分析単位が国なのか国内アクターなのかで分けられ,さらに事例研究の研究設計と目的によって分類され,(1)「多国間統計 + 多数事例の例証」,(2)「多国間統計 + 比較事例研究」,(3)「国内比較統計 + 単一事例研究」,(4)「国内比較統計 + 比較事例研究」の4つのサブタイプが考えられる。次節では,(1)と(2)の多国間統計分析と国内事例研究を混合したスタイルをとる分析をLieberman[2005]に倣って「入れ子分析」と呼び,本稿の分析の中心に置く。

図1 混合手法の多様性

(出所)筆者作成。

Ⅲ 多国間統計分析と国内事例研究の混合――3つの問題点――

多国間統計分析と(比較)事例研究をどのように組み合わせるのかについて,Lieberman[2005]はその手続きと方法論的意義を明確化している(注9)Lieberman[2005]の提唱する手続きとは以下のようなものである。まず,予備分析として,多国間統計分析で仮説検証をはじめることを推奨する。多国間統計分析を通じて,理論の射程条件を意識し,従属変数の分布を満遍なく特定できる。また,少なくとも事例研究と比較して,統計分析では有効なかたちで他の要因を統制して変数間の共変関係を検証できる。そして,多国間統計分析の結果,変数間の共変関係が確認された場合,推定結果に基づき事例研究の対象を決める。事例研究は,分析単位内(この場合国内の政治過程やアクター)で生起するメカニズムに焦点をあて,統計分析では十分に確認できない因果の連関に関する証拠を提供するためにおこなわれる。

多国間統計分析が回帰分析の場合,予測値と実測値に応じて事例選択できる。標準的には,回帰直線上の事例を選択し,典型事例研究として因果メカニズムの過程追跡をおこなう。外的妥当性と変数間の共変関係を確保しやすい多国間統計分析の結果を参考にして事例を選択し,その後,事例研究を通じて理論の想定する因果メカニズムを確証して内的妥当性を確認することで,統計分析と事例研究は互いの短所を補い,方法論的により頑健な証拠を提供できる,という。

こうした手続きを踏まえた多国間統計分析と国内事例研究の混合は,次節で検討するように,過去20年間でその数を増やしている。しかし,少なくとも3つの方法論上の問題点を挙げることができる。ここでは,既存研究の議論を手掛かりにしながら,多国間統計分析と国内事例研究の混合を実施する上で考慮すべき問題点を提示する。

ロールフィングとシーライトは,「入れ子分析」について3つの問題点を提示する[Rohlfing 2008; Seawright 2016]。第1の論点は,統計分析の結果をもとに事例を選択する手続きの正当性は,統計分析の推定結果が偏りないものであるという前提に依拠していることに関わる。この前提を満たすためには,次の2つの重要な条件を満たす必要がある。第1に,統計分析で用いられた鍵となる変数の測定に問題がある場合,あるいは事例研究での当該変数の測定や概念化と統計分析のそれに乖離がある場合,統計分析の推定結果は事例選択の基準となりえない[Seawright 2016, 172]。第2に,独立変数と従属変数の両方に影響を与える他の変数が効果的に統制されていない場合,推定結果に欠落変数バイアスが生じ,事例研究での因果メカニズムの追跡に誤ったガイダンスを与えかねない[Rohlfing 2008, 1498-1501]。その結果,統計分析は外的妥当性を確保する分析としてその有効性が減じられ,事例選択に偏りを生む可能性を孕むことになる。特に,因果推論手法の普及によって,研究者が交絡因子の影響に意識的であるよう促される近年の政治学研究において,2点目の「見かけ上の相関」の問題は研究設計全体の信頼性に大きく関わることになる。この問題は,全ての観察データの統計分析が多かれ少なかれ抱える問題でもあるが,後述するように近年急速に応用が進む観察データの因果推論手法を応用することで「入れ子分析」のリサーチデザインを補強しうる。

第2の論点は,共変関係の特定と因果メカニズムの解明を統計分析と事例分析の間で完全に分業していることに関わる[Seawright 2016, 173]。「入れ子分析」においては,変数間の共変関係の確認を多国間統計分析に任せ,因果メカニズムの検討を国内事例分析に委ねているが,変数間に共変関係が存在するからといって,取り上げる事例で成立する因果メカニズムが,統計分析に含まれる他の事例で同様に成立しているか定かではない。もしかしたら,他の事例では別の因果パスを通じて,同一の変数間の共変関係が生まれているかもしれない(「等結果性」)。実証分析の頑健性を高めるためには,取り上げた事例を超えて,他の事例においても同様の因果メカニズムを通じて変数間の共変関係がもたらされているのかどうか確認する必要がある。本論文では,後述するように,追加的な多国間統計分析をつうじた理論の経験的含意の検証や因果媒介分析の併用によって,理論の想定する因果メカニズムがどれだけ一般的に妥当なのか分析することが有用であると主張する。

最後に,Lieberman[2005]は,予備的な統計分析から研究を始動することを推奨するが,この順序を取ると,既存データを用いた予備的統計分析が可能なトピックや理論・仮説に分析が限られる可能性が高まる。しかし,逆に単一事例研究や複数事例の比較を通じて得られた仮説や知見が,母集団内の他の事例においても当てはまるか検証するために,統計分析を実施することもありうる[Harbers and Ingram 2020, 1123-1124]。この場合,事例が新たな多国間データ構築へのきっかけを提供し,あるいは統計分析が事例分析で構築された仮説を検証する役割を果たす。また事例研究から研究を開始し従属変数の変化を説明する要因の理解を深めることで,統計分析でのモデル定式の正確さにより注意を払うことができるかもしれない[Rohlfing 2008]。しかし,他方でこうした事例先行型の分析は,特に単一事例研究から始める場合,真にその事例が理論にとっての典型事例であるか評価することは難しい。本稿では,事例研究から多国間統計分析へと実証分析が「拡張」されたのち,仮説とメカニズム確証のために多国間統計分析の結果をもとに追加事例を取り上げる最近の研究例を示し,(比較)事例研究から多国間統計分析へと研究プロセスを展開させて仮説の構築と検証の両立を目指す研究設計を紹介する。

「入れ子分析」を出発点とする以上の3つの方法論的問題点は,統計分析と事例研究それぞれの固有の短所から派生した問題でもあるため,容易に解決できるものではない。しかしながら,こうした難点を抱えつつも,統計分析と事例研究を組み合わせる混合手法は,最近20年間のうちに着実に地歩を築いてきた[Harbers and Ingram 2020, 1119-1121]。次節では,過去20年間に出版された雑誌論文と研究書を定量的に分析し,比較政治学における混合手法の変遷を検討することで,多国間統計分析と国内事例研究の混合手法の普及が進んでいることを実証的に示す。主に欧米の政治学において同混合手法がどれだけ普及しているかデータ分析することで,広く比較政治研究者の研究戦略を考えるにあたり有意義な情報と示唆を与えることを目指す。

Ⅳ 混合手法実践の計量分析

世界の比較政治研究全体の研究状況を正確に把握するには,ジャーナルのランクや出版社,あるいは出版言語を限定せずに,無作為抽出をおこなうのが望ましいかもしれない。しかし,ここでは比較政治学の分析手法のあり方の最先端の潮流を把握するのが目的なので,分析対象を比較政治理論や政治学方法論を主導する媒体に限定して分析することが理にかなっている。モノグラフに関しては,分析にあたって独自のデータを収集した。具体的には,比較政治研究を牽引する大学出版局の1つであるケンブリッジ大学出版局(CUP)から1997年から2018年のあいだに出版された約540の研究書をその対象とする(注10)。政治学英文雑誌に関しては,粕谷[2018]のデータを基盤とし,American Political Science Review (APSR), American Journal of Political Science (AJPS), Journal of Politics (JOP)の政治学3大ジャーナルに加えて,比較政治分野の主要誌であるWorld Politics (WP)Comparative Political Studies (CPS)の2誌を加えた合計5誌で出版された約500の論文について,1995年から2015年までの傾向をみる(注11)

1. モノグラフ

次の要領で,CUPから出版された比較政治分野のモノグラフを分類する。第1の軸は,どのような分析手法(単独手法あるいは混合手法)が用いられているかである。「3つの手法の混合」,「統計と事例の混合」,「EITM」,「分析的叙述」,「事例研究」,「数理モデル」,「統計分析」の7つのカテゴリーのうち,いずれに分類されるのかを検討する(注12)

7つのカテゴリーの1997年から2018年までの時系列変化を示したのが,図2である。1997~1999年と2018年の観察数が他の期間と比べて少ないため,直近期間と統合している。まず興味深いのは,質的事例研究を採用する研究書の割合が,減少する傾向にあるものの期間をつうじて大きい点である。どの期間でも,30パーセントから50パーセントのモノグラフが質的事例研究のみを用いている。このことは,主要英語雑誌における事例研究のプレゼンスの低下[粕谷 2018]とは対照的である。雑誌論文とモノグラフの間に一種の「棲み分け」が起こっているといえる。比較政治学の「最新潮流」に敏感なCUPから出版された研究書であっても,つまり事例研究にとっての「ハード・ケース」である出版社からのモノグラフでも,事例研究の重要性が失われていないことを示唆する。対照的に,その他の分析手法のみを用いたモノグラフは,質的事例研究と比べ期間にかかわらず低い比率にとどまっている。統計分析のみの採用は期間をつうじて,5パーセント以下である。同様に,数理モデルのみの採用もごく少数である。

図2 単独手法と混合手法の割合の時系列的変遷(モノグラフ)

(出所)筆者作成。

図2は,第Ⅱ節で示した混合手法(「数理と統計」〔EITM〕,「数理と事例」〔分析的叙述〕,「統計と事例」)の時系列変化も示している。統計分析と数理モデルを組み合わせる「EITM」は,それが提唱され「流行」となった2000年代中盤に微増するものの,比率としては非常に低い。「分析的叙述」に関しては,1990年代後半をピークにその割合を低下させており,2010年代に入ると同混合手法を採用する研究書は見られなくなった。対照的に,割合が着実に伸びているのが,統計分析と事例研究の混合である。1990年代終盤から2000年代初頭にかけて,20パーセント弱であった同混合手法の割合は,2015~2018年には2.5倍ほど増えて全体の45パーセント弱に達している。また,3つの手法を併用した研究の比率も,期間をつうじて全体の8~12パーセントほどみられる。以上の結果は,比較政治学のモノグラフにおいて統計分析と事例研究を組み合わせることが分析手法として優勢になっていることを示唆する。

本研究の関心は,「統計と事例」による混合手法の中でも,多国間統計分析と国内事例研究を併用した実証分析にある。このパターンの混合手法を特定するために,第Ⅱ節での分類に則して2つの軸にしたがい,「統計と事例」を併用した混合手法を4つに分類する。第1の軸は,統計分析の分析単位である。統計分析に関して,(1)国を分析単位とした多国間統計分析か,(2)国内の分析単位を対象とした統計分析(国内比較統計分析)か,に着目する。国レベルの変数が従属変数と独立変数に設定され,統計分析で国を分析単位とするデータが用いられている場合,(1)に該当する。他方,州などの分析単位や個人を対象とするサーベイが用いられている場合,(2)のカテゴリーに該当する。第2の軸として,第Ⅱ節での分類にしたがい,事例研究の事例数と研究設計のあり方が考慮される。国が分析単位の場合,事例研究が(1)比較の方法論(差異法・同意法など)にしたがった複数事例研究か,(2)多数事例の例証であるか判断する。国が分析単位ではない場合は,(3)比較の方法論(差異法・同意法など)にしたがった複数国の事例研究か,(4)1つの国に着目した単一事例研究かを判断する。

統計分析を含むと判断する場合,記述統計だけではなく推測統計を含む定量分析がなされていることを基準とする。複数事例に基づく質的分析であると判断するさい,各国事例が少なくとも1つ以上の章で分析されていることをその基準とした。対照的に,1つの事例を詳細に検討しているかどうかの基準は,1つの国に焦点を当てた事例研究に著書全体が割かれていることを意味する。

これらの基準をもとに統計分析と事例研究の異なる混合を分類できる。具体的には,次の4つの混合パターンを特定できる。すなわち,(1)多国間統計分析と多数事例の例証,(2)多国間統計分析と比較事例研究,(3)国内比較統計分析と比較事例研究,(4)単一国を対象にした国内比較統計分析と質的事例分析,に分けられる(図1に対応)(注13)。このうち,(1)と(2)が国家を分析単位とする「入れ子分析」に対応する。(3)と(4)も同様に統計分析と事例研究を組み合わせた研究だが,分析単位は国ではなく,下位行政単位や民族集団や企業などの国内集団,あるいは個人である。

「統計と事例」の混合手法の内訳を詳しく検討するため,分析単位(国vs国内)や事例研究の数にしたがって分類し,質的事例研究のみのカテゴリーと比較しながら,時系列変化を示したのが図3である。図3-(A)では,Lieberman[2005]が想定した,多国間統計分析と国内事例研究を組み合わせる「入れ子分析」がどのように変遷してきたかを示している。興味深いことに,複数事例を手短に用いて多国間統計分析の補足とするタイプの混合手法は減少傾向にある。対照的に,比較事例研究をおこないつつ,同時に多国間統計分析で理論の外的妥当性を検証する分析が増加傾向にある。1990年代終盤に1割程度であったこのタイプの研究は,2015~2018年には全体の約25パーセントを占めるにいたっている。

図3 統計分析と事例研究の混合(モノグラフ)

(出所)筆者作成。

次に,図3-(B)は,国内アクターや下位行政単位を分析単位とする統計分析と事例研究を組み合わせる混合手法の時系列変化を示している。国内事例研究の中に統計分析が含まれる研究である。このタイプにおいても,複数国の比較事例研究をベースとしつつ,それぞれの事例内の統計データを用いて変数間の相関関係を検証し,あるいは因果メカニズムについての証拠を提示する研究が増えている。他方,単一の国に着目し,質的・量的データを駆使して仮説を検証・構築する研究も,一定比率を維持している。

他方,これらの混合手法と比較したとき,その比率が減少傾向にあるのが質的事例研究である(図3-(C))。特に質的分析のみに依拠する単一事例研究は,1990年代終盤の25パーセント強から2015~2018年には10パーセント程度に低下している。質的比較事例研究の割合は比較的安定しており2割程度を占めているが,近年微減している。

以上より,多国間統計分析と事例研究を組み合わせる混合手法の使用頻度が高まっていることが分かったが,混合手法は単一の分析手法と比べて,学界の評価を得ているのであろうか。ここでは,(おもに米国を中心とした)政治学界での評価を測定するための指標として,「ケンブリッジ比較政治シリーズ」(Cambridge Studies in Comparative Politics Series)から出版されているかどうかと,アメリカ政治学会(APSA)の学会賞を受賞しているかどうかの2つを用いる(注14)。両者はともに,比較政治研究の地平を拡げる研究に与えられるため,比較政治学研究の3条件を満たすことを容易にする混合手法は,その見込みを高めると推論できる。

以上を検討するために,比較政治シリーズから出版されたか否かと,アメリカ政治学会賞を受賞したか否かを,それぞれ従属変数としてプロビット回帰分析をおこなった。図4はその分析結果である。いずれの統計モデルでも,各分析手法とそれらの混合のダミー変数を説明変数として加え(参照カテゴリーは単一の質的事例研究),期間効果を考慮に入れるために,期間ダミーを統制変数として投入した。分析結果は,「統計と事例」と「統計と数理」の混合手法を採用する場合は,単一質的事例研究の場合と比べて統計的に有意なかたちで,比較政治シリーズからの出版と学会賞の見込みを大きくする傾向にあることを示している。効果の大きさを評価するために分析結果にしたがって予測確率を計算すると,「統計と事例」の混合の場合,シリーズから出版される可能性は約26.7パーセント増え,学会賞受賞の確率は1.2パーセント増える。数理モデルと事例研究を組み合わせる「分析的叙述」に関しては,シリーズ出版について統計的に有意な差がなく,学会賞受賞に関しては該当するモノグラフが一件も存在しなかったため,分析に含めることができなかった。また,因果推論手法の採用はシリーズからの出版や学会賞受賞に統計的に有意なかたちで相関していないこともわかった。分析結果は分析手法と期間ダミーを投入した回帰分析であるため,統計分析と事例研究による混合手法の採用がシリーズ出版・学会賞受賞をもたらす因果関係にあるとはいえないが,少なくとも両者には正の相関関係が存在している(注15)

図4 混合手法と研究の「評価」のプロビット回帰分析

(出所)筆者作成。

(注)参照カテゴリーは,「単一事例研究」。観察数は548。期間の効果を統制している。●が点推定の値,線分は95%信頼区間。

図5は,統計分析と事例研究の混合手法を4つのサブタイプに分類して,図4と同じ変数を投入して,シリーズ出版とAPSA学会賞に関してプロビット回帰分析をおこなった結果である。シリーズからの出版に関しては,「入れ子分析」に位置付けられる「多国間統計分析と比較事例研究を用いた研究」と「多国間統計分析と例証として複数事例を用いる研究」そして単一事例研究のなかで国内の分析単位を対象にして量的分析をおこなう研究,の3つのタイプの混合手法が,統計的に有意なかたちでより多く出版される傾向にある。これら3つの混合手法はそれぞれ,単一事例研究の場合と比べて,28パーセント,31パーセント,10パーセント高い確率でシリーズから出版される傾向にある。以上の結果は,多国間統計分析と事例研究の組み合わせがモノグラフのトップ媒体でより頻繁に利用される傾向にあることを示している。

図5 統計分析と事例研究の混合タイプと研究の「評価」(モノグラフ)

(出所)筆者作成。

(注)参照カテゴリーは,「単一事例研究」。観察数は548。期間の効果を統制している。●が点推定の値,線分は95%信頼区間。

学会賞に関しては,どのタイプの統計分析と事例研究の混合も,学会賞受賞と正の相関関係をもつが,単一事例研究と比べてその差は統計的に有意ではなかった。図3の結果と合わせて考えると,統計分析と事例研究の混合それ自体は学会賞を得るほど影響力を持つが,どのように統計分析と事例研究を組み合わせるかに関して支配的アプローチはなく,学界での影響力は統計分析と事例研究という混合手法の中で「多元化」されているのかもしれない。

2. 雑誌論文

モノグラフと同じ傾向が,雑誌論文においても見いだされるであろうか。図6-(A)では,「統計と事例」,「数理と統計」,「数理と事例」,そして単独手法のカテゴリーに分け,主要雑誌に掲載された論文のうち各々がどれだけの割合を占めているのかを比較している。粕谷[2018]に依拠して,10年ごとに期間を分け,3つの期間を比較している。まず,明確な傾向として見られるのは,モノグラフとは異なり,雑誌論文は単独手法に依拠した分析(特に回帰分析と事例研究)が混合手法よりも大きな比率を占める点である。多少変動はあるが,回帰分析のみの論文は全体の4割から5割を占める。事例研究のみの論文は,その比率を低下させているが,混合手法に比べるとその比率はいずれの時期でも大きく,3割強から1割の間を推移している。他方,「統計と事例」や「数理と統計」型の混合手法は1990年代からその比率を増大させてはいるが,前者は2010年代のピークの時期でも10パーセント弱,後者は2000年代のピークの時期に10パーセント強と低い比率に留まる。図2と比較すると,混合手法は雑誌論文よりもモノグラフにおいて多用される傾向にあることが明確である。このことは,雑誌論文とモノグラフでの出版を目指すとき,分析手法について異なる研究戦略を取る必要があることを示唆する。

図6 分析手法の時系列的変遷(雑誌論文)

(出所)筆者作成。

(注)(B)は,統計分析と事例研究を併用した論文全体の比率を1として,その内訳(1.多国間統計と事例研究の併用,2.国内比較統計と比較事例研究の併用,3.国内比較統計と単一事例研究の併用)の比率を示している。

次に,図3と同じ分類で,統計分析と事例研究の混合手法のサブタイプの内訳を示したのが,図6-(B)である(注16)。ここからわかるように,雑誌論文において増加傾向にあるのは,国内レベルのアクターや行政単位を分析単位とした統計分析と単一事例研究の組み合わせで,「統計と事例の混合」全体のうち,1990年代の2割程度から,65パーセント程度までその比率を伸ばしている。他方,多国間統計と事例研究の組み合わせはその比率を減らし,国内統計分析と比較事例研究の混合についても上昇傾向が見られない。

分析手法の違いは,雑誌論文の「評価」に違いをもたらすのだろうか。雑誌論文では,引用回数がしばしば「研究のインパクト」を測定する指標として取り上げられる。ここでは,2018年4月現在の時点で確認された引用数を用いて,分析手法の違いが引用回数に統計的に有意な差をもたらすのかについて,負の二項回帰分析(negative binomial regression)を用いて検討した。説明変数は各分析手法とそれらの混合手法の採用の有無のダミー変数であり,参照カテゴリーは質的事例研究である(注17)図7から確認されるように,質的事例研究と比べたとき,「統計と事例」あるいは「統計と数理」の混合手法の採用は,統計的に有意なかたちで論文引用数を増やす傾向にあることがわかる。しかしながら,その効果は統計分析のみを採用したときとそれほど大きな差はなく,数理分析のみや因果推論手法を採用したときの効果の大きさと比較したとき,その効果は相対的に小さい。分析結果にしたがって引用数の予測値を計算すると,事例研究のみを採用したときと比べて「統計と事例」あるいは「数理と統計」の混合はそれぞれ46回と39回だけ引用数を増やすのに対して,統計分析のみを採用した場合は37回だけ引用数を増やす傾向にある。他方,数理分析のみの論文と因果推論手法を用いた論文は,事例研究のみを採用した場合と比べて,それぞれ65回と80回だけ多く引用される傾向にある。これらの雑誌論文における引用傾向は,モノグラフにおいて単一手法を用いた研究があまり影響力を持たず,「統計と事例」の混合が特に研究の影響力を高めるという分析結果とは対照的である。他の要因を考慮に入れた分析にはさらなるデータ構築が必要となるが,ここから示唆されるのは,モノグラフと雑誌論文の間で分析手法が研究評価に与える効果は異なるかもしれない,ということである。

図7 分析手法と引用回数(雑誌論文)

(出所)筆者作成。

(注)参照カテゴリーは,「単一事例研究」。観察数は530。期間の効果を統制している。●が点推定の値,線分は95%信頼区間。

なぜ,モノグラフと雑誌論文との間に統計分析と事例研究の混合手法の採用頻度そして評価への影響に違いが出るのであろうか。第1の要因として考えられるのは,事例研究,特に複数国の比較を含む比較事例研究ではある程度の分厚い記述をおこなうのが必要な点である。そのため,多国間統計分析まで含めてしまうと雑誌論文の紙幅では不十分になる可能性が考えられる。その点,モノグラフの場合,多国間統計分析の分析結果と複数国にまたがる比較事例研究の知見を十分な紙幅をもって複数の章で展開しやすい。

また雑誌論文の査読はほとんどの場合,投稿者も査読者もお互い匿名のダブルブラインド形式で,査読者全員がポジティブな評価を行わない限り採択にはいたらないことが多い。質的分析と量的分析の双方を含んでいると,対象事例の事例研究と多国間データを使った量的分析の双方に同様な理解を示し精通している研究者は少ないため,査読を通りにくいことになる。このような事情に鑑みて,投稿者は混合手法を用いて投稿論文を書こうとしなくなるかもしれないし,実際に書いたとしても雑誌査読を通りにくいのかもしれないことが第2の要因として挙げられる。

Ⅴ 多国間統計分析と国内事例分析による混合手法の問題への対処

以上の分析は,多国間統計分析と国内事例研究を組み合わせる「入れ子分析」の採用と同混合手法の影響力が,特にモノグラフを出版媒体とするときに大きくなることを示唆している。しかし,すでに論じたように先行研究は「入れ子分析」にも3つの方法論上の問題があることを指摘してきた。近年の比較政治学者はそれらの問題にどのように対処してきたのであろうか。そして近年政治学での導入と発展が急速に進む因果推論手法やビッグ・データの手法は,多国間統計分析と国内事例研究の混合研究にいかなる影響を及ぼすだろうか。

最初に議論をするのは,先行研究で指摘された「入れ子分析」に関する第1の論点,すなわち統計モデルの定式化や変数測定に問題があって,統計分析が事例選択の有効な導きとならない問題である。ここでは,この問題を変数の測定とモデル定式の失敗による内生性問題の2つに分けて議論する。

変数測定に関して完全な処方箋はなく,特に鍵となる変数の性質に大きく左右される。概念に関し研究者間にコンセンサスが存在し,同一の概念測定に関して複数の多国間データ・セットが存在する場合,この懸念を和らげることはある程度可能である。例えば,民主化や権威主義体制の崩壊について2分法の観点から測定するデータ・セットは複数存在しており,全てで同じ政治体制であると判定されている事例を選択すれば,変数の測定誤差によって生じるリスクを緩和させられる。例えば,Higashijima and Kasuya[2016]は,議院内閣制は大統領制よりも選挙権威主義体制を長く存続させるという理論的予測を導き,多国間比較の統計分析,および差異法に基づくフィリピンとマレーシアの比較事例分析をおこなっている。多国間統計分析では,複数の政治体制のデータを用いて分析結果が頑健であるかどうか確認し,両事例の該当期間がこれらのデータ全てで選挙権威主義体制と判定されるか確認している。多国間データは近年急速な勢いで構築され,研究者間で共有されている。データ間の差異には意識的であるべきだが,これらを活用することで,変数測定に伴う多国間統計分析と比較事例研究のギャップを緩和することはある程度可能だろう。

こうした多国間統計データは従来,多数の研究補助者を介した人的コーディングをもとに構築されることが多かったが,近年データ・サイエンスの手法が援用されることも多くなった。第1に,ウェブ上の情報をRやPythonなどのプログラミング言語でコードを書いて,コンピュータ上で自動的に情報を取得し構築されているデータセットが利用可能になっている。例えば,1900年から現在までの各年各国の政党の政党名やそれらの政党の議席率と得票率などを記録する「政党の事実」(Party Facts)データベース(注18)は,主にWikipedia上の各国の選挙の情報をウェブ・スクレイピングすることで構築されており,世界の約1万5000の政党の情報を記録し,他の既存の政党データセットと共通する特定の政党IDをつうじて接続されている[Döring and Regel 2019]。また,イリノイ大学アーバナシャンペーン校のクライン・センターが公開する歴史イベント・データは,複数の欧米主要メディアが公刊した2100万の記事で報道されている820万件の出来事(抗議運動,暴力,紛争など)の多国間データを,計量テキスト分析をつうじて構築している[Althaus et al. 2020(注19)

第2に,人的コーディングをもとにデータ構築がおこなわれていたとしても,クラウド・ソーシングをつうじて従来より遥かに効率的かつ迅速に多国間データを構築することが可能になっている。例えば,各国ごとの政治体制のあり方などを専門家調査をつうじて明らかにする多国間データは,ポリティなど様々なものがあったが,「民主主義の多様性」(Varieties of Democracy, V-Dem)プロジェクトによる専門家調査は,クラウドソーシングのプラットフォームをつうじて各国専門家にコーディングを委託し,質問票上での専門家の回答は統一されたデータシート上で集計される仕組みになっている。こうした多国間データ収集のためのデータ・サイエンス手法の応用は,同じ概念を測定する複数のデータ・セットの利用可能性を高め,分析の頑健性を高めるのに貢献するだろう。

次に,「見かけ上の相関」あるいは逆向きの因果によって生じる内生性問題についてである。観察データである多国間統計分析で,この問題を完全に解決することは非常に困難である。ただし,近年その応用と開発が進む観察データにおける因果推論手法の応用は,これらの問題を緩和し,多国間統計分析を事例選択のより良い導き手とすることを可能にすると考えられる。第1に,国内事例研究が差異法に基づく比較事例研究である場合,マッチング手法を多国間統計分析に応用することが考えられる[Seawright and Gerring 2008, 304-306; Nielsen 2016]。マッチング手法を用いることで,従属変数に影響を与えると考えられる変数群について,それらの値が同一あるいは非常に類似している事例を特定し,それらの事例群から従属変数の値が対照的に異なる複数の事例をさらに特定することで,差異法の比較事例研究に最適なケース選択をおこなうことが可能になる。Nielsen[2016]はマッチング手法に基づく事例選択のRパッケージを開発・公開しているだけでなく,データセットをアップロードし所定の手続きに基づいて,処置変数・結果変数などの必要情報を入力するだけでマッチした事例を表示するウェブ・アプリケーションを公開しているので,定量手法に精通していない研究者でも簡単に利用することができる(注20)

こうしたマッチング法に基づいて多国間統計分析をおこなったのちに事例選択をおこなっている最近の研究例としてあげられるのが,Lyall[2020]による軍隊内不平等(military inequality)と軍のパフォーマンスの関係についての研究である。多民族からなる軍が大きな民族間不平等(差別や国家による抑圧)に晒されている場合,被支配民族集団出身の兵士は国のために進んで戦うことをためらう上に,軍の指揮官も戦争に勝つために最善の作戦を立てるというより,民族間不平等によって生まれる規律のなさに対処することに最適化した戦略や軍の配置をとらざるをえない。以上の2つのメカニズムをつうじて大きな軍隊内不平等に晒されている場合,敵軍に対峙する際に必要な武力を生み出し行使する軍の能力を減じさせることになる。

以上の仮説を実証的に検討するために,ライアルは,戦争前の軍隊内不平等が高いとき,その国の軍隊の戦場でのパフォーマンス(敵軍と比較した死傷者の規模,兵隊の脱走,兵隊の敵軍への寝返りなどからなる合成指標)が落ち込む傾向にあることを多国間統計分析によって示している。その後,軍隊での戦場におけるパフォーマンスに影響を与えると考えられる13の共変量の値が類似しているが,軍隊内不平等の値だけが著しく異なるペア群をマッチング法をつうじて特定し,そのペア群からランダムに事例ペアを選定し,3つの比較事例研究(注21)をおこなっている。

マッチング法のほかにも,観察データ分析での擬似実験手法として操作変数法を挙げることができる。操作変数法は,操作変数となる妥当な変数を見つけることができた場合,民主化や内戦といった国レベルを分析単位とする多国間統計分析にも応用しやすい。すでに見たようにマッチング手法は,差異法に基づく比較事例研究のケース選択の有力な指針となるが,観察不可能なためバランスすることができないが有力な共変量が存在すると考えられる場合,内生性の問題に対処することが難しくなる。こうした状況下で,操作変数に基づいて従属変数の予測値を計算し,従属変数の予測値と鍵となる独立変数の値に応じてそれぞれの事例を位置付けることで,典型事例研究をはじめとする国内事例研究のケース選択の指針となりうる。

多国間統計分析と国内事例研究を混合した「入れ子分析」の文脈で操作変数法を組み込んだ研究例は数少ないが,適切な操作変数による推定結果をもとにすれば,より良い事例選択の基準になると考えられる。例えば,Bodea, Garriga and Higashijima[20192020]は,中央銀行改革は地理的に伝播する傾向にあるため,隣国の中央銀行の独立性の程度との相関が非常に高いが,隣国の中央銀行の独立性は当該国の政治体制変動に直接影響を与えるとは考えにくいため,隣国の中央銀行の独立性の度合いを操作変数として用いている。この操作変数を使って,民主化圧力が強く,したがって権威主義体制が崩壊するリスクの高い国において,機先を制して中央銀行改革が実施される可能性(逆向きの因果関係)や観察不可能な共変量,測定誤差の影響を考慮に入れた推定をおこなった後,統計分析の結果をもとにエジプトとメキシコの事例選択と例証としての事例研究をおこなっている。

マッチング法や操作変数法などをはじめとした因果推論手法を多国間観察データに利用して,それを事例研究の指針とする研究はいまだ数少ない。しかし標準的回帰分析が様々な問題を孕む以上,混合手法の文脈でもそれらの因果推論手法を積極的に利用していくことで方法論上の厳密さを高めていくことができるだろう(注22)

第3に,Seawright[2016]の挙げた2つ目の論点,すなわち事例研究で取り上げている事例で成立している因果メカニズムが,母集団に含まれるその他の事例でも成り立っているのかどうかという問題である。1つの対処法として考えられるのは,詳細な事例研究を他の事例で全て実施することは難しい以上,多国間統計分析を通じて,もし同様の因果メカニズムが働いていたら支持されると考えられる実証的含意を追加的に提示して検証することがあげられる[Seawright 2016, 174]。例えば,前述の東島と粕谷の研究[Higashijima and Kasuya 2016]では,選挙権威主義体制下で議院内閣制を採る国々が民主化しにくいのは,(1)議院内閣制が制度化された与党(支配政党)を生み出し,(2)議会選挙は大統領選挙よりも数多くの選挙区を抱えることが多いので,大衆の不満を喚起しやすい露骨な選挙不正よりも,政治指導者による恣意的区割りによる「ソフト」な選挙操作によって選挙での圧倒的勝利をもたらしやすいからであるとメカニズムを想定している[Higashijima and Kasuya 2016]。(1)と(2)の因果メカニズムを多国間統計分析で検証するために,(1)選挙権威主義体制下の議院内閣制では支配政党体制が生み出されやすいこと,(2)議院内閣制下の議会選挙は,大統領制下の大統領選挙よりもあからさまな選挙不正が起きにくいことを示している。いかなる実証的含意を引き出せるかについて,利用可能なデータを考慮に入れ追加的統計分析をおこなうことで,理論に対するさらなる証拠を提示することが可能になる。このことにより,因果メカニズムをめぐる多国間統計分析と国内事例研究のあいだのギャップに多少なりとも対処できるだろう。

また,追加的な実証的含意としてではなく,統計的因果推論の枠組みを用いて因果メカニズムを検討し,事例研究と組み合わせることもできるかもしれない。例えば,鍵となる変数の間に存在する媒介変数が因果のパスとしてどれだけの効果を有しているのかを検討する上では,因果媒介分析(causal mediation analysis)の手法を応用することもできるだろう[Imai et al. 2011]。因果媒介分析では,「潜在的結果」の枠組みに準じて説明変数が結果変数に直接与える因果効果(直接効果)と両変数の間に介在する媒介変数が結果変数に与える効果(間接効果)を区別して推定することを可能にする。ただし,因果媒介分析では,よってたつ統計的仮定を直接検証できないために慎重な頑健性テストをおこなうことが推奨されている[Imai et al. 2011, 774]。管見のかぎり,因果媒介分析によって想定される因果メカニズムのうちいずれが妥当かを検証し,検証に耐えた因果パスを例証するために事例研究を実施している多国間比較の研究例は見当たらないが,そうした研究デザインをとって複数あるいは単一の妥当性の高い因果メカニズムへと絞り込み,事例研究の対象国にあたりをつける際に因果媒介分析を利用することも可能かもしれない。

最後は,「入れ子分析」の3つ目の問題点,すなわち多国間統計分析と事例研究を実施する順序をめぐる論点である。Lieberman[2005]の「入れ子分析」は,最初に予備的統計分析をおこなうことが推奨されている。実際に近年の研究ではそのような手続きを踏まえるものが多い。先に紹介したBodea, Garriga and Higashijima[2019]の研究は,そうした例の1つである。支配政党体制においては独裁者を含む与党エリート間の制約が他の権威主義体制よりも強く存在するため,中央銀行法で定められた中央銀行の独立性の高さが脅かされにくい。そのため,独立した中央銀行は経済分配のための拡張的財政政策を抑制しやすい。ゆえに,経済分配に支持調達を依存する支配政党体制は崩壊しやすくなる。この仮説を検証するために,1970年から2012年の94カ国の権威主義体制を対象に多国間統計分析をおこない,中央銀行の独立性の高まりが権威主義体制の崩壊と相関関係をもつようになるのは,支配政党体制下のみであることを示した。多国間統計分析の結果に基づき,エジプトとメキシコを例証事例として取り上げ,前者ではムバラク政権下の中央銀行の独立性の低下が,与党組織を用いた効率的経済分配ひいては長期独裁政権を可能にし,後者では,1990年代の中央銀行の独立性の高まりが,制度的革命党による経済分配の歯止めとなって,2000年の政権交代の一因となったことを論じている。

こうした研究手続きの有効性は疑うべくもなく,研究の着想が多国間統計分析によって得られることはありうる。しかしながら,リーバーマン[Lieberman 2005]の「入れ子分析」とは逆の手順,すなわち事例研究で構築された仮説の外的妥当性を検討するために,多国間統計分析をその後おこなうことが有効な場合がある。

事例研究から多国間統計分析へと議論が「拡張」された研究例として,アルバータスの業績[Albertus 2015]を挙げることができる。Albertus[2015]は,いかなる条件のもとで貧しい者へ土地を再分配する土地改革が成功するのか考察している。特に軍部独裁であったペルー(1968~1980年)で,貧者の利益となる大土地所有制の解体と土地の再分配が成功し,民主主義体制であったチャベス以前のベネズエラで,土地改革が限定的で地主有利の土地分配となった事実をパズルとして提示する。そして,両国の質的事例研究と地方レベルの量的データを用いて,(1)地主と政治エリートが対立し,政治エリートが地主の政治的影響力を弱める誘引を持ち,(2)権力の抑制と均衡が弱く政治指導者がライバル(地主)を駆逐できるほど権力を一手に握っている(つまり,権威主義体制),という2つの条件が重なるとき急進的な土地の再分配政策が実行されやすくなる,という仮説を導き出している。そして,この比較事例研究から得られた知見の外的妥当性を検討するために,1900年から2008年の世界の国々を対象とした多国間統計分析をおこない(注23),理論の実証的含意の外的妥当性を検証している。

指摘すべきは,比較事例研究から多国間統計分析に移行するというプロセスを経ることで,事例で得られた理論仮説が多国間統計データの構築のあり方に影響を与え,新しい多国間統計データを生み出していることである(注24)Albertus[2015]が用いている多国間データには,土地改革の程度や種類といった土地改革に関する汎用性の高い変数が従属変数として,エリート間対立(地主 vs 政治エリート)を把握する変数も独立変数として含まれている。事例比較から考察をはじめることで,既存の「パラダイム」の制約を受けて構築された既存データだけをみていては考えつかない理論の視座が得られているといえる。

こうした事例研究から多国間統計分析へと実証手続きが進むタイプの比較政治研究の発展形として,「仮説構築型」の事例研究と「仮説検証型」の事例研究の間に多国間統計分析を挟む研究設計になっているブック・プロジェクトも見られるようになってきている。例えば,Roessler[2016]による民族政治とクーデタと内戦のトレード・オフに関する研究は,そのようなタイプの混合手法を採用している。Roessler[2016]は,アフリカ諸国に焦点を当てて,民族集団間の関係の変化がクーデタ・内戦の勃発の見込みにどのような影響を与えるのかを分析している。多様な民族集団のエリートを政府のなかに取り込み勝利連合を形成している場合は,政権内の民族エリートたちは政府から付与される様々な資源を政権転覆のために利用しやすくなるため,結果として政権内でのクーデタの見込みが上昇する。他方,他の民族集団を政権から排除した場合,そうしたクーデタのリスクを減じさせることはできるが,政権から排除された民族集団は政権のパトロネジに与れないために武器をとって反乱を起こしやすくなるため,結果的に内戦のリスクが上昇する。

以上の仮説を構築するために,Roessler[2016]はまず18カ月の現地調査と様々なアクターへのインタビュー調査に基づくスーダン・ダルフール地方の詳細な事例研究をおこなう。アル=バシール大統領はクーデタの脅威に対抗するために政権内の危険分子であったイスラム主義者を政権から排除し結果としてクーデタ予防策として機能したこと,しかしそうしたイスラム主義者の政治的排除が政治的・経済的不満を増大させ,反乱予防策の有効性を失わせ,支配者と他の民族集団との不和を助長した事実を丁寧に例証している。その後,「民族間権力関係データ」(Ethnic Power Relations Data)などを用いて,実際にアフリカ諸国で政治的に排除された民族が多ければ多いほど内戦の確率は上昇するが,逆に様々な民族を政権内に取り込むとクーデタの確率が上昇することを示している。そして,この多国間統計分析の結果に応じて「典型事例」であると特定された第2次コンゴ戦争(アフリカ大戦)をとりあげ,仮説で想定されている因果メカニズムを追跡している(注25)

レスラーの研究は,1つのプロジェクトで多国間統計分析と事例研究を混合しながらも,事例研究を仮説の構築と検証の両方に利用しているという点で,先にのべた混合手法の2つのパースペクティブを組み合わせ,厳密な実証分析をおこなっているといえる。このようなかたちでの混合手法の実践は雑誌論文では難しく,モノグラフであるからこそ可能な骨太な研究であるといえるだろう。

Ⅵ 結論

本稿では,混合手法の1つである多国間統計分析と国内事例研究を併用した実証分析について検討した。多国間統計分析を導きとして事例選択をおこない,事例研究をおこなう「入れ子分析」の問題点を指摘し,その対処法についていくつかの研究例を紹介しながら論じた。また,統計分析と事例研究による混合手法の実践が他の分析手法と比べて過去20年間の間にどのように変遷してきたのか,雑誌論文とCUPから出版されたモノグラフの定量分析からその傾向を検討した。

こうした混合手法の利用が増加する傾向にあることを踏まえたとき,日本より世界に研究成果を発信することを目指す比較政治学者が,地域に関する専門知識や異なる分析手法を得意とする研究者と積極的に共著プロジェクトを推進していくことは非常に重要なことのように思われる。1990年から2013年の間に96の英文政治学雑誌で発表された6万7000の論文を定量的に分析したメッツとジェックルは,実に世界の比較政治研究者の80パーセント近くが共著によって論文を発表したことがあると報告しており[Metz and Jaeckle 2017, 160],この割合は国際関係論や政治理論など他の隣接分野よりも高い。それに比べ,日本の比較政治学における共著プロジェクトは,以前に比べればより頻繁にみられるようになってきたといえるものの,公刊される論文や学会プログラムを見るかぎり,他の政治学分野と比べ共著論文が依然として少ない。時に同世代のライバル同士である研究者であっても共著で論文を作成している欧米の研究者に伍して国際的に研究成果を発信するためには,共著者として比較政治研究者同士が論文を共同作成していく流れが日本でもっと加速しても良いのではないか。

多国間統計分析であれ事例研究であれ,理論から導き出された仮説を実証分析で検証する姿勢は共有する。このことは,理論と仮説を研究者間で共有できれば,異なる分析手法や地域を得意とする研究者であっても,新たな研究を共に生み出すことが可能であることを意味する。多国間比較可能なデータが急速に蓄積されている現在,地域の知見に基づいて得られた仮説を多国間統計分析で追加検証することも容易になってきた(注26)。逆に,多国間統計分析を通じて得られた仮説とそれを支持する変数間の相関関係を元に研究を開始し,典型事例と目される国の専門知識を持つ比較政治研究者が事例研究をおこなうこともできる。比較政治学が方法論を共有したディシプリンとして発展し,様々なデータがウェブ上で利用可能となり,研究者間の共同作業がインターネットの発展で容易な現代において,分析手法や地域の専門を超えて共同作業をおこなう便益は,これまでになく大きくなっている。

[付記]

本論文の元となる原稿は,2018年度日本比較政治学会年次大会分科会「比較政治学における混合研究法」(6月23~24日 於 東北大学)での研究報告のため執筆された。学会論文に有益なコメントをくださった方々に感謝申し上げる。本研究は,科学研究費補助金・若手研究(A)「権威主義体制下の政治制度設計と市民の正統性認識」(17H04779, 研究代表者: 東島雅昌)による研究成果の一部である。ジャーナル論文の分析に際し,データ・セットを共有してくださった粕谷祐子氏,ジャーナル論文のデータ・セット整備を手伝ってくれた潘鋭氏,原稿の最終段階で有益なフィードバックをくださった禹裕眞氏と矢内勇生氏に謝意を表する。また,2名の匿名の査読者の方には非常に有益かつ建設的なコメントをいただいた。ここに深く感謝申し上げたい。なお,本論文にありうる全ての誤りは,筆者に帰する。

(東北大学大学院情報科学研究科准教授,2020年2月14日受領,2021年3月12日,レフェリーの審査を経て掲載決定)

(注1)  本稿でいう「多国間統計分析」とは,国を分析単位として統計的手法に基づいて変数間の関係を検討する手法を意味する。「国内事例研究」とは,国という政治単位の内部において,どのようなプロセスを通じて鍵となる変数間の関係が結びついていると考えられるのかを質的あるいは量的データを用いて検討することを指す。

(注2)  ハーバースとイングラム[Harbers and Ingram 2020,1117]にしたがい,本稿において「混合手法」とは,「1つの研究において2つ以上の方法を組み合わせること」を意味する。のちにみるように,比較政治学では,「数理と統計」,「数理と事例」,「統計と事例」の組み合わせが主要な混合手法として用いられてきた。本稿の関心の中心にあるのは,「統計と事例」の組み合わせの中でも,特に多国間データを用いて統計分析をおこない,少数の国を対象として(比較)事例研究をおこなうタイプの混合手法である。

(注3)  久保・末近・高橋[2016]の定義からも分かるように,比較政治学には分析単位に関して制約がない。すなわち,国内政治現象の研究であれば,例えば,個人を分析単位として社会運動への参加の可否を分析する研究や,一国内の州あるいは市区町村に分析単位を設定して地域ごとの経済発展や財政赤字の違いを説明する研究も,比較政治研究の範疇に入る。国家よりも小さい分析単位を対象とする比較政治研究は理論的発展に貢献し,また近年急速に発展する実験手法や擬似実験手法を応用しやすいため実証研究の豊富な素材を提供する。しかし,これらの研究を比較対象としつつも本論文の考察の主眼となるのは,「伝統的」比較政治学の分析単位である国レベルの様々な国内政治現象を説明する際に,いかなる研究戦略がありうるのか,という問題である。

(注4)  「因果推論革命」が政治学にもたらした影響についての邦語文献は,たとえば粕谷[2018]を参照。

(注5)  ここでいう実験手法とは,研究者自身あるいは何らかの外生的事象が,説明変数の割り当てに「介入」することでランダムに統制群と処置群とに分け,両グループのあいだでの従属変数の値にどのような変化が見られるのかを分析する手法を指している。

(注6)  政治学や社会科学一般における人工知能やデータ・サイエンス手法の導入についての邦語文献として,例えば,福元[2020]サルガニック[2019]を参照。

(注7)  例えば,Humphreys and Jacobs[2015]Harbers and Ingram[2020]などを参照せよ。

(注8)  因果推論手法もデータ分析なので,ここでは「統計」のカテゴリーに入るが,のちの実証分析では,観察データの統計分析との比較をおこなうときに限り因果推論手法を別カテゴリーとして分けて比較する。

(注9)  厳密には,Lieberman[2005]は統計分析の分析単位を国レベルのみに限っているわけではないが,後に指摘する「入れ子分析」の問題点のいくつかは多国間統計分析と事例研究が組み合わされたときに最も深刻になると考えられるので,ここでは多国間統計分析と国内事例研究に焦点を絞って検討する。

(注10)  CUPのウェブサイトの政治学・国際関係論部門で比較政治に分類されている本のリスト(http://www.cambridge.org/sg/academic/subjects/politics-international-relations/comparative-politics/ 2018年5月31日接続確認)を用いた。ここから編著や教科書を除き,1つの研究トピックについて,単一の著者あるいは複数の共著者が本としてまとめているモノグラフを分析対象とした。理想的には,オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)やプリンストン大学出版局(Princeton University Press),ミシガン大学出版局(University of Michigan Press)など,政治学モノグラフの主要媒体となっている大学出版局も分析対象に含めるべきであろう。またコーネル大学出版局(Cornel University Press)のように政治学分野で優れた質的分析を数多く出版している大学出版局もあるため,本稿の分析結果は政治学全体の傾向であるとは必ずしもいえないが,時間的・物理的制約から,ここではCUPのみを分析対象とする。

(注11)  Pepinsky[2019]は,これらの5誌にComparative Politicsを加えた6誌をサンプルとして用い,一国事例研究で用いられる手法や研究目的がどのように変遷してきたのかを分析している。Wilson[2017]も,Comparative Politics, International Organization, British Journal of Political Scienceを加えた8誌の論文の題名と要約に含まれるキーワードを分析することで,政治学研究の趨勢を分析している。本論文は,これらの研究と同様の関心を持ちつつも,モノグラフと雑誌論文双方を視野に入れ,多国間統計分析と事例研究の混合手法の変遷に焦点を当てる。本稿で焦点を当てている5誌の他に,政治学分野にはComparative PoliticsGovernment and Opposition,British Journal of Political Scienceなど着目する分析手法や出版元の国が異なる有力誌もあり,したがってここでも分析結果が政治学全体の趨勢であるとは必ずしもいえない。あくまで米国を中心とした政治学の傾向であることに注意されたい。

(注12)  回帰分析を含むカテゴリーの中で近年「因果推論」を含む研究が増加している。ここでいう「因果推論」手法とは,実験型(ラボ実験,サーベイ実験,フィールド実験)と擬似実験型(自然実験,不連続回帰デザイン,傾向スコアマッチング,操作変数,差分の差[difference-in-differences]分析など)の手法のいずれかを用いた研究を指している。2000年代中盤までで全体の1パーセントほどしか占めていなかった,因果推論手法を含むモノグラフは2015~2018年では10パーセント強までその比率を増やしている。

(注13)  多国間統計分析と単一事例研究を組み合わせる混合手法は1件も確認することができなかった。

(注14)  いずれも先にリンク先を示したCUPのウェブサイトから確認可能である。

(注15)  例えば,複数の手法を習得するにあたり米国のトップスクールでの博士号取得者は有利であろうし,学界ネットワークは出身校に大きく左右される。学会賞やシリーズ出版が学界ネットワークに影響される側面もあるため,相関関係の間にはそうした学界コネクションが交絡因子として作用する側面もあると考えられる。

(注16)  ジャーナルでは,事例研究を詳細なものと例証的なものに分けるのは判断が難しく,比率としても非常に小さいため,ここでは事例研究として1つにまとめている。

(注17)  モノグラフの回帰分析と同様に,期間ダミーを投入して期間効果を統制している。

(注18)  ホームページは,ここから確認できる: https://partyfacts.herokuapp.com/(2020年10月29日接続確認)。

(注19)  データはここで確認できる: https://databank.illinois.edu/datasets/IDB-2796521(2020年10月29日接続確認)。

(注20)  詳細は以下のURLより確認できる: http://www.mit.edu/~rnielsen/caseMatchVignette.htm(2020年10月29日接続確認)。

(注21)  スペイン・モロッコ戦争のモロッコ軍 vs ロシアとコーカンド=ハン国の戦争におけるコーカンド=ハン国軍,伊土戦争におけるオスマン帝国軍 vs 第1次世界大戦の東部戦線におけるオーストリア=ハンガリー帝国,エチオピア・エリトリア戦争におけるエチオピア軍 vs 第2次コンゴ戦争におけるコンゴ民主共和国軍。

(注22)  すでに見たとおりマッチング法や操作変数法など,擬似実験的手法を観察データに適用して事例選択の導きとする研究はすでに存在するが,同じ目的のために機械学習の手法と事例研究を組み合わせた混合手法は,管見のかぎりこれまでの比較政治学研究ではほとんどみられない。機械学習は一般に訓練データをもとに統計モデルを構築し,交差検証(cross-validation)データでモデルを調整し,最後に検証データにおける予測をおこなうことを目的とする。例えば,決定木(decision tree)による機械学習は,投入された予測変数の値やそれらの組み合わせに応じて結果変数の値を複数グループに選り分け,検証データでそのカテゴリ化の当てはまりの良さをテストする。事例選択との関連からいえば,検証データでの分析結果に応じて,検証データに含まれている事例を個別に検討していくことで典型事例や逸脱事例を発見することに役立つかもしれない。ただし,機械学習において,因果メカニズムが不明である無数の変数をモデルに投入し,あるいは関数形が非線形なモデルを推定するなどしてモデルを複雑化すると,通常予測精度をあげることはでき,結果的にほとんどが典型事例ということになるかもしれないが,どのようなメカニズムを経ているのかについての実質的な解釈は極めて困難になる。他方,因果メカニズムを想定できる複数の変数からなる単純な線形回帰モデルは解釈が非常に容易だが,予測精度が低くなるため,多くのケースが逸脱事例とみなされるかもしれない。換言すると,機械学習における予測精度と解釈可能性の間にはトレード・オフが一般に存在するため(例えば,James et al.[2013, 24-26]を参照),予測精度と想定する因果メカニズムの明確さの両方が必要な事例選択の基準として機械学習の手法を利用する場合,両者のバランスをどのように考慮するかという難題をともなうと想定される。

(注23)  ラテンアメリカ諸国のみを対象にした同様の多国間統計分析もおこなっている。

(注24)  Higashijima[forthcoming]でも,カザフスタンとキルギスの比較事例研究をつうじて独裁者がいかなる条件下でどのような選挙操作と経済政策操作を行使するのか仮説を導出したのち,新たな多国間データを構築し仮説検証する作業をおこなっている。

(注25)  先に紹介したLyall[2020]も仮説構築型事例研究→多国間統計分析→仮説検証型事例研究の研究設計をとっている。上述したマッチング法による多国間統計分析の前にマフディー戦争(スーダンのマフディ教徒とイギリス・エジプト連合軍の戦い)での戦況の変化について,スーダン指導者マフディーのチフスによる死とその後継者による軍隊内不平等の悪化を自然実験とみなして,軍隊内不平等が軍事パフォーマンスに与える影響を検討している。

(注26)  例えば,多国間データセットに関していえば,政治体制や選挙などについて体系的な多国間データセットを随時更新している「民主主義の多様性」(Varieties of Democracy)プロジェクト(https://www.v-dem.net/en/, 2020年2月13日接続確認),全世界の政党の組織とアイデンティティについて網羅的なデータセットを提供している「政党組織とアイデンティティの多様性」(Varieties of Party Identity and Organization, V-Party)プロジェクト(https://www.v-dem.net/en/data/data/v-party-dataset/?fbclid=IwAR21mtO8yVUtDF2vbRUulICyKzZ3901FzcB5-EzGF-lxtOG-J4YWAr2pYn0, 2020年10月28日接続確認),権威主義体制の様々な側面についてデータを提供している「独裁制データ」(autocratic regime data, https://sites.psu.edu/dictators/, 2020年2月13日接続確認)などはその一例だろう。

文献リスト
 
© 2021 日本貿易振興機構アジア経済研究所
feedback
Top