アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
論文
立憲革命を「再演」する――イランにおける第1次憲法改正(1925年)とパフラヴィー朝の成立――
徳永 佳晃
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2025 年 66 巻 1 号 p. 2-28

詳細
抄録

本稿は,パフラヴィー朝成立に伴う第1次憲法改正について,国民議会および第1次憲法会議における法的な議論,ならびにその政治的背景に着目しつつ分析する。この憲法改正は,単にイラン史上初であっただけではなく,イラン国憲法典に規定がなかった憲法改正にかかる慣行を打ち立てた点でも重要であった。上記の分析を通じて本稿では,レザー・ハーンおよび側近らが新王朝を建設するにあたり,少なくとも形の上ではイラン国憲法典を尊重する姿勢を示し,立憲革命の先例をふまえて憲法改正を行ったことを示す。この戦略のもとレザー・ハーンらは,憲法典の護持を旗印に結束するモダッレスら反対派の論拠を弱め,彼らの抵抗を抑えて新王朝を建設することに成功した。しかしながら,その過程で形作られた煩雑な改正手続は,後の憲法改正を抑制する方向に作用し,憲法典が規定する国王権限と実際にレザー・ハーンが有する権力との間に深刻な不一致を生じさせる一因となった。

著者関連情報
© 2025 日本貿易振興機構アジア経済研究所
次の記事
feedback
Top