2025 年 66 巻 2 号 p. 28-56
本稿は,中華人民共和国で制定された初めての憲法である1954年憲法の制定過程の分析を通じて,中国共産党の政治体制構想を考察した。54年憲法制定過程の代表的研究である[韓 2014]は,同憲法制定会議参加者の政治体制に関する議論が如何にその後の政治過程に影響を及ぼしたのかが不明瞭であった。そこで本稿では,同研究を引用しつつ,54年憲法に関する新資料などを利用して同憲法の制定過程を分析した。その結果, 54年憲法制定過程での政治体制構想をめぐる中共指導部,ソ共指導部,民主党派の角逐は,相互不信感を増幅させただけでなく,根本的に思考が相容れないという現実を再認識させた点で象徴的な出来事となったであろうことがわかった。さらに指摘するならば,このような相互不信感は,中共指導部が民主党派に反右派闘争を,またソ共指導部とその後の対立を引き起こす遠因になったとも理解できるだろう。