2025 年 66 巻 4 号 p. 2-29
ラテンアメリカでは政治任用される経済学者,いわゆるテクノクラートと呼ばれる人物が観察され,彼らが大臣となる政権は歴史的に緊縮財政と結びつけられてきた。一方で,昨今の同地域では社会保障に関する財政支出が拡張されてきた。すると,テクノクラートが任用される政権は,近年の社会保障費の増加に関係しているといえるのだろうか。本稿は1990年から2019年に至る南米の中所得国5カ国のデータを使って固定効果推定を行い,財務大臣にテクノクラートを任用する政権と非テクノクラートを任用する政権のあいだで,社会保障費の増減が異なることを明らかにする。結果,政治的なしがらみが少ないテクノクラートが大臣に任用される場合,社会保障費が抑制的な傾向にあることが判明した。この結果をとおして,現代の南米諸国において,テクノクラートを大臣に据える政権が社会保障費の増加に対して1つの歯止めになっていることが示唆される。