2026 年 67 巻 1 号 p. 33-57
2010年代以降,量的テキスト分析による研究が社会科学の諸分野で増加してきたが,中国研究において同手法は「古くて新しい」方法である。本稿では同手法に着目し,①冷戦期の研究の存在とその背景,そして後の縮小,②近年の増加と主要な応用例,③さらなる可能性および課題を検討する。まず冷戦期にはデータの制約下で同手法が積極的に採用されたが,1980年代以降には新たなデータ環境のもとで同手法が下火となったことを確認する。つぎに2010年代以降の増加を論文データから示す。そして近年の代表的研究を取り上げ,検閲と情報操作をはじめとする権威主義体制の統治メカニズムの解明に寄与してきたことを確認する。最後に同手法の可能性として機械学習のさらなる応用と研究課題の多様化がある一方で,データ規制への対応や質的知見との接合といった課題に加え,地域研究との間には一定の緊張関係があることを論じる。