2017 年 9 巻 3 号 p. 251-254
症例の概要:初診時77歳の男性.下顎全部床義歯の動揺及び咀嚼困難を主訴に来院した.下顎義歯の床縁の設定位置ならびに形態不良により,維持力が低下していると判断した.患者の現義歯の状態と,触診や視診による唇頬側粘膜,舌の可動域等を精査したのちに,閉口状態で患者自身の口腔周囲筋や舌の動きを利用した印象採得を行い,上下顎全部床義歯を製作した.
考察:十分な検査と義歯の床縁の設定位置や形態に配慮して閉口機能印象を行ったことで,口唇,頬ならびに舌が義歯の維持に利用できたことが良好な結果につながったと考えられる.
結論:義歯の外形ならびに床縁形態に考慮し,印象採得の方法を工夫したことで,主訴の改善と良好な経過を得ることができた.