日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
原著論文
汎用デジタル機器を用いて製作した複製義歯:材料特性と臨床評価
倉橋 宏輔岩脇 有軌松田 岳後藤 崇晴石田 雄一伊藤 照明市川 哲雄
著者情報
ジャーナル 認証あり

2017 年 9 巻 4 号 p. 357-364

詳細
抄録

目的:われわれが提案した汎用デジタル機器を用いた複製義歯製作法の有用性を示すために,使用するアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合樹脂,ポリ乳酸(PLA)樹脂の細胞毒性試験,シリコーン印象材および常温重合レジンとの接着試験,使用感に関する主観的評価を行った.

方法:細胞毒性試験では,ABS樹脂とPLA樹脂の浸漬液を用いてマウスの線維芽細胞様細胞の細胞生存率を測定した.接着試験では,専用の保持体にそれぞれの試験片を固定し,シリコーン印象材および常温重合レジンを圧接した後に,万能試験機を用いて引張試験を行った.使用感の評価には,専用の評価票を作成し,PLA製の複製義歯を使用する術者に回答させた.

結果:細胞毒性試験では,ABS樹脂,PLA樹脂ともに72時間までの細胞生存率の低下は認められなかった.接着試験では,トレー用レジンと比較して両試料ともにシリコーン印象材への接着強さは低かった.常温重合レジンとの接着強さでは,PLA樹脂は低かったが,ABS樹脂では従来のトレー用レジンと同等の接着強さであった.術者による複製義歯使用感の評価結果としては,従来のアクリルレジン製の義歯とほとんど変わらない評価が得られた.

結論:三次元プリンターで製作した複製義歯における材料的,臨床的評価から本術式の有効性が示唆された.

著者関連情報
© 2017 公益社団法人日本補綴歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top