日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成15年度日本調理科学会大会
セッションID: 2D-a6
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大正時代後期の工場食の改善と共同炊事
*中野 典子馬場 景子宇野 良子
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抄録

 工場法が施行された大正12年の改正の期間に、愛知県では工場の食に関しての実態調査が行われた。各工場には「献立予定実施表」への記載が義務付けられた栄養調査が行われた。全国2位の綿織物の生産を誇った愛知県尾張地方における工場食の調査は、当時の日本の工場食の代表をなすものである。調査結果は大正12年に発行された「工場飲食物献立表」として著された。発行所は愛知県警察部工場課内愛知県工場会であることからも、大正時代のこの時期は、さらに献立表、栄養計算、そして調理法の索引が記載されている。つまりこの書物は、大正時代のこの時期は、工場労働者に提供される食事の重要性が制度化されつつあること、そして工場食における栄養学の萌芽を意味していると考えることができる。また、食事を提供する場所でもある炊事場も賄いからデリバリーを主体とする共同炊事場の設立および株式会社の構想もこの背景には存在する。 本発表では、「献立予定実施表」と「工場飲食物献立表」との関係、そして「工場飲食物献立表」作成の意図を考察し、「工場飲食物献立表」に示されている献立例の復元を行ない、現時点での栄養計算の結果と当時の結果の比較を行ない、検討を加える。以上の結果により大正後期に確立されつつあった工場の集団給食の実態が明らかにする。

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© 2003日本調理科学会
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