日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成16年度日本調理科学会大会
セッションID: 1C-a8
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一般講演
でん粉添加が相変化食材モデルの熱移動に及ぼす影響
*喜多 記子長尾 慶子
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抄録

【目的】加熱中の食材内部の熱移動を遅延現象を考慮した指数式で表せることを既報1)で明らかにしているが、食材中の成分は加熱により固体脂の融解、たん白質の熱凝固、でん粉の糊化、ゲル・ゾル転移などの相変化が生じるため、熱移動を単純に定式化し得ない場合が考えられる。そこで、加熱下で相変化がみられる上記成分を含むモデル系を対象に、一次元方向の加熱中の内部温度を追跡し、相変化近傍点での遅延時間定数(τ)を算出し、熱移動に及ぼす種々の要因を検討した。
【方法】試料はトリステアリン(固体脂)、寒天ゲル、ゼラチンゲル、でん粉懸濁液とした。それらを加熱用金属容器で、試料底部を105℃に加熱し、一次元方向の内部温度の経時変化を測定した。さらにトリステアリン、寒天、ゼラチン試料に小麦でん粉を5_から_60%添加したモデル系を調製し、加熱中の相変化点の観察と遅延時間定数(τ)を算出、比較した。
【結果】トリステアリンは油脂の融解による相転移が見られ、急激な温度低下が観察された。この試料に小麦でん粉を添加していくと徐々に温度曲線は滑らかになり、60%添加でほぼ相転移点はみられなくなった。寒天・ゼラチン系でも同様の現象が見られ、ゲル・ゾル転移による温度降下が、小麦でんぷん量が増すにつれ消失した。これらの食材の相変化点近傍での遅延時間定数(τ)にはモデル系により違いが見られ、いずれも相変化による吸熱現象が影響すると推測された。しかし、上記でん粉のみの系においては糊化現象の影響が温度上昇曲線には観察されなかった。でん粉を添加することで相転移が消失していく機構については今後の検討課題である。1) K.Nagao et al., J.Home Econ. Jpn, 52, 241(2001)

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