【目的】
食肉を軟化させるためには、熱帯植物であるパイナップルやパパイヤ、キウイフルーツなどを利用することが知られている。これらの植物の持つプロテアーゼは比較的熱安定性が高く、調理中に食肉のタンパク質に作用するため、食肉が軟らかくなる。しかし、これらの食材は独特の香りがあり、メニューが限定される。一方、プロテアーゼ活性が高いものの中にはキノコがある。キノコは食肉とも相性の良い食材であり、食物繊維などが豊富で旨味成分も多く含まれ、健康志向の高い食品である。そこで、まず我々は、様々なキノコを用いてプロテアーゼの検索を行い、さらに高いプロテアーゼ活性を有するキノコのプロテアーゼの特徴について基礎的な検討を行った。
【方法】
キノコは市販のエノキタケ、ヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ナメコ、ブナシメジ、マイタケを用いた。キノコの重量の2倍量の水を加え、ホモジェネート後、ろ過して得られた抽出液を試料とした。この抽出液のカゼイン分解活性及び牛肉抽出液分解活性を調べた。これらの中より分解活性の高かったものを選び、最適温度、最適pH、熱安定性などを検討した。さらにプロテアーゼの性質を調べるため、部分精製を試みた。
【結果および考察】
35℃でプロテアーゼ活性を測定すると、最も活性が高かったのは、ヒラタケであった。しかしながら、50-60℃ではマイタケのほうが活性が高くなった。さらに、熱安定性をみると、最も安定であったものはマイタケであり、ヒラタケのプロテアーゼ活性が70℃1時間の保温で失活するのに対し、マイタケは70℃8時間でも活性が残存していた。また、最適pHは6-7であった。このことより、マイタケは肉軟化のために有効な食材であると推察された。