抄録
【目的】
2次元圧縮測定方法を用いて、咀嚼機能が低下した高齢者の咀嚼感覚に対応する物性測定方法を検討することを目的とした。
【方法】
物性特性が異なる7食品を選択し、1次元圧縮による破断力に加え、2次元圧縮測定が可能なWWT-2を用いての破断力測定を行った。咀嚼感覚は官能検査によって求め、被験者は高齢者67名(61~89才、平均68.9才)と、若年者59名(19~26才、平均20.8才)とした。煮椎茸を基準食品とし、始めの3回咀嚼で評価する「かみ切りにくさ」「硬さ」「歯への付きやすさ」と、嚥下後に評価する「まとまりにくさ」「飲み込みにくさ」「噛みにくさ」をそれぞれ評価した。併せてデンタルプレスケールによって咀嚼機能を測定した。
【結果】
高齢者を上下歯の咬合が確保されていることを示す機能歯を用いて3分割し、高齢者I群(31名)と、高齢者II群(12名)、高齢者III群(23名)とした。歯の接触面積や咬合力は3群間で差があり、咬合状態に対応した群分けであることが確認された。官能検査の結果では、高齢者3群間に著しい違いは見られなかったが、高齢者III群は、食パンとほうれん草が噛み切りにくく感じた。また「噛みにくさ」では高齢者III群は食品間差が小さい傾向にあった。官能検査値と物性値の相関は高齢者用食品の測定方法では、「硬さ」とよく対応するものの、「噛みにくさ」とは相関係数が低かった。一方WWT-2では、「噛みにくさ」との相関性が高まることが示された。さらに、臼歯でのすり切り運動を模したWWT-2による2次元圧縮を行うことで、高齢者III群の「噛みにくさ」と極めて高い相関性(r=0.916)を得ることができた。