抄録
【目的】日本の食文化は、各地の気候・風土に根ざし、古くからの行事や伝統を伝えるものである。しかし、他の地域との交流や情報の習得により、各種の行事において、昔ながらの手間ひまのかかる食生活は簡略化され、最近は当地方のものではない料理を取り入れる傾向も見られる。そこで、本学学生は行事食をどの程度認知し食しているか、また世代間における違いなど比較検討し、山形の行事食の実態や伝承性について明らかにすることを目的とした。
【方法】平成21、22年度に行った日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学」のアンケート調査用紙を用い、留め置き法による質問紙調査を行った。調査期間は平成21年12月から平成22年2月で、本学の健康栄養学科に在籍する学生83名とその親族等を対象に、行事食の認知度と喫食経験、現在の正月、大晦日等における料理と特徴的な食材などについて検討した。
【結果】本学学生59名、その保護者または一般人58名より回答があり、回収率は70.5%であった。取り上げた年中行事は、認知度はほぼ90%以上と高いことが示されたが、盂蘭盆は名称が聞き慣れなかったせいか70%台に止まり、重陽の節句は13.7%と極端に低く、また年代別に比較すると、全体的に学生の認知度が低い傾向が見られた。認知しているが未経験の行事としては人日、七夕、お月見などがあげられた。年末年始の料理としては、以前は年取りの祝い料理に重きを置いて準備する風景がよく見られたが、調査ではお年取り料理よりも年越しそばを食べるという回答が多かった。しかし、祝い魚の定番である鯉料理は今も食べられており、少数ではあるが、縁起を担いだひょう干し煮も食べられていることが示された。