日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成25年度(一社)日本調理科学会大会
セッションID: 1D-a5
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口頭発表
煮魚調理過程における塩化ナトリウムおよびグルタミン酸の定量
*石渡 奈緒美佐々木 瑞香福岡 美香酒井 昇
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抄録

【目的】煮魚調理は日本の伝統的な調理法のひとつである。しかし,煮魚調理における呈味成分の増減を示した研究はこれまでない。本研究は煮魚の呈味成分のうち,塩化ナトリウムおよびグルタミン酸に着目し,調理過程ならびに調理終了後,煮汁中に放置した際の呈味成分の濃度分布変化の検証を行なった。
【実験方法】食材にはマダイ(愛媛県産,養殖)の切り身を用いた。まず,料理人に普段実施している調理のデモンストレーションを行って頂いた。次に,料理人の調理方法に基づき呈味成分を定量するための試料を作成した。また調理終了後,ただちに煮汁から取り出した試料と,室温で煮汁中に1時間,3時間および冷蔵庫で21時間(調理終了から計24時間)浸漬させた試料の4種類を用意した。調理終了後,皮を取った後,煮汁に接していた試料表面から10mm削った部分を表面部,残った背肉部を中心部と定義した。そして,未加熱試料ならびに煮魚試料の表面部,中心部から抽出液を調製し,塩分計(PAL-ES1,三商)を用いて塩化ナトリウム濃度を,L-グルタミン酸キットII(ヤマサ醤油)を用いてグルタミン酸濃度を定量した。
【結果および考察】未加熱試料では塩化ナトリウム,グルタミン酸ともに不均一な濃度分布はなかった。調理終了直後の試料は,塩化ナトリウムは表面部と中心部ともに濃度が増加したが,位置に伴う濃度差はなかった。これに対してグルタミン酸は,調理終了直後の中心部は未加熱試料より有意に減少したため,位置に伴う濃度差が確認された。また浸漬過程についても両呈味成分の濃度分布の挙動は異なり,また,煮魚の味のしみ込みは,浸漬時間の経過に伴う拡散現象による影響が大きいことが示唆された。

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© 2013 日本調理科学会
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