抄録
【目的】エクストルージョンクッキングとは押出し成形装置(エクストルーダー)を用いて高温高圧下で食品材料を物理的に圧縮変形し、スクリューで押出しながら加工・成形する調理法で、スナック菓子などに広く利用されている。一方、米の消費拡大の一環として米粉の利用が推進されている。そこで、米粉を利用しやすい形状に開発し、普及させることを目的とし、米の約70%を占める米澱粉のエクストルーダー処理による変化を検討した。【方法】試料はウルチ及びモチ米澱粉(島田化学工業製)を用いた。これを2軸エクストルーダー(㈱スエヒロEPM製)により処理し、バレル温度90℃、120℃、150℃、180℃、210℃の時に試料を採取した。これらの水分、保水率、水溶性糖量、X線回析などを測定するとともに、ゲル濾過クロマトグラフィー、極限粘度を分析した。【結果】水分含量、保水率は、エクストルージョンクッキンによりウルチ澱粉は生澱粉より高い値を示し、モチ澱粉は生澱粉との間に違いはみられなかった。水溶性糖量は、エクストルージョンクッキンにより著しく増加し、特にモチ澱粉はウルチ澱粉に比べて2倍近く多かった。ゲル濾過クロマトグラフィーにより分子構造を調べた結果、すべての試料は生澱粉に比べて低分子側にシフトしていた。極限粘度も同様に低下していたことから、エクストルージョンクッキンにより澱粉内部は分子が著しく崩壊し、低分子化されていることが示唆された。これらの結果から、エクストルージョンクッキンは、エクストルージョンクッキングにより米が容易に粉砕でき、新規の性状を帯びた米粉として調理・加工材料として広範囲に利用できる可能性が期待できるものと考える。