抄録
【緒言】滋賀県田上地方では昔から菜の花黄金漬けを特産品としてきたが、黄金漬けはその独特の風味から喫食回数の少ない者には食べづらいと言われる。最近では、初めて食べる者にも受け入れられるよう「新漬け」も作られている。本研究では、新漬けの嗜好成分を分析し、若い世代の嗜好性との関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】試料は、ひらの菜の花グループの田で採取した菜の花とそれを材料として同グループが加工、販売している黄金漬けと新漬けを購入して用いた。官能評価は、滋賀大学学生50名を対象に見ため、におい、食感、味について5段階評点法により実施した。有機酸分析は、電気伝導度検出によるHPLCによって行い、塩分はナトリウムイオン濃度計により測定した。また、SPME吸着法によるGCMS分析で揮発性成分を測定した。
【結果】官能評価の結果、新漬けは黄金漬けに比べて酸味が少なく、好ましい味とされ、総合評価も高かった。塩分は、新漬けは2.5%、黄金漬けは3.9%であったが、官能評価では両者に有意差は見られず、漬物に含まれている食塩以外の成分が塩分の感度を低くしている可能性が示唆された。有機酸分析の結果、新漬けには乳酸が多く含まれていたが、含量は黄金漬けの1/40ほどであった。さらに揮発性成分では、Methallyl Cyanideや2-methyl-5-Hexenenitrileなど共通した物質が検出された一方で、黄金漬けよりも新漬けの方が検出された揮発性成分数が少なかった。これらのことが、新漬けが酸味が少なく、風味に強い癖がなく、食べやすいとされた要因である可能性があると考えられる。