日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成27年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2C-a3
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口頭発表
澱粉の種類がスポンジケーキの咀嚼・嚥下に関わる物性に及ぼす影響
*丸岡 由依伊藤 聖子新井 映子
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抄録

【目的】高齢者の食事において,間食は栄養補給や食の楽しみとして重要であるが,スポンジのようなケーキ類は食塊形成時に唾液が吸収されるため,歯に付きやすく,嚥下しにくいことが指摘されている。そこで本研究では,咀嚼・嚥下機能が低下した人が安全に摂食できるスポンジケーキを調製するための方法として澱粉の種類に着目し,5種類の澱粉で調製したスポンジケーキの咀嚼や嚥下のしやすさに関する物性について検討することを目的とした。
【方法】澱粉には小麦(コントロール),とうもろこし,米,馬鈴薯および葛を用いた。各種澱粉,グルテン,ベーキングパウダー,乾燥卵白,水,バター,脱脂粉乳を材料としてスポンジケーキを調製した後,比容積,テクスチャー,糊化度を測定し,評点法による官能評価を行った。粉砕したスポンジケーキをα-アミラーゼ無添加または添加の人工唾液と混合して模擬食塊を調製し,テクスチャーを測定した。
【結果】比容積はコントロールの小麦澱粉ケーキが最も大きく,他の澱粉ケーキでは低下した。米澱粉ケーキは小麦澱粉ケーキと同等の硬さであったが,他のケーキはそれらよりも硬かった。官能評価では米澱粉ケーキの飲み込みやすさに関する評価が小麦および他の澱粉ケーキよりも高く,最も飲み込みやすいことが判明した。米澱粉ケーキの糊化度は他の澱粉ケーキよりも高く,1日経過後の糊化度の減少率も小さかった。模擬食塊のテクスチャー測定では,α-アミラーゼ添加時の付着性とケーキの糊化度との間に関連がみられ,模擬食塊の付着性が低いほどケーキの糊化度は高かった。また,米澱粉ケーキのみα-アミラーゼ添加時に凝集性の低下が認められた。これらのことから,米澱粉ケーキの糊化度の高さが食べやすさに関与していることが示唆された。

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