日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成27年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2E-a6
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口頭発表
まぐろ魚醤の抗酸化能並びに嗜好性に関する研究
*原田 和樹和田 律子福田 翼内山 晃一柿野 敦志加藤 愛小谷 幸敏磯田 克典
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抄録

【目的】鳥取県にて産官学共同で開発された「まぐろ魚醤」は,通常,廃棄するマグロの内臓に食塩,醤油麹,耐塩性酵母を添加し発酵させた調味料である。美味との高評価により既に市販されているが,遊離アミノ酸分析と嗜好性検査により,大豆醤油に比べてグルタミン酸の量が多い事などが美味に寄与していると推定した1)。本研究では,付加価値となるイン・ビトロ系での健康増進機能性の一つである抗酸化能と,消費者目線での嗜好性検査を行った。
 【方法】抗酸化能は,ペルオキシラジカル消去活性能を指標としたH-ORAC法を用いて調べ,方法は定法に従った。嗜好性検査は,2015年3月から4月にかけて下関市立しものせき水族館・海響館で実施したオープンラボ「魚の醤油を味わってみよう」で,アンケートの一環として行った。全世代のデータが得られたが,10歳未満のデータは信頼性が乏しいと判断しデータから削除した。アンケート総数311名のうち有効アンケート数は214名であった。
 【結果】市販品のマグロ魚醤の「天然本まぐろ魚醤”ぎょ”」のH-ORAC値は,5,145 ± 130 μmolトロロックス当量(TE)/100 ml(n = 3)であった。この値を,魚醤群のORAC値のデータベースと比較すると,鯛魚醤のORAC値と似た値を示し,日本の伝統的な魚醤である「しょっつる」よりも高い数値となった。特筆すべきは,内臓の中でも白子のみで調製した「マグロ白子魚醤」は,ORAC値が6,696 ± 201 μmol TE/100 mlと高いORAC値を示し,サケ魚醤やタラ魚醤,エビ魚醤,ナンプラーに比べて,高い抗酸化能を示した。嗜好性検査の結果については,50歳台のアンケートでは,有意差はなかったが,高評価である「ふく魚醤」,「くじら醤油」,「うに魚醤」と比較して,最も高評価であった。
 1) 加藤愛,小谷幸敏: マグロ内蔵を原料とした魚醤油の開発, 日本醸造協会誌, 105, 31-35 (2010).

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© 2015 日本調理科学会
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