日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成28年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2B-a4
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口頭発表
添加物によるシカ肉の食味改善効果
*近藤(比江森) 美樹植田 玲奈長尾 久美子
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キーワード: シカ肉, 硬さ, 臭い, 添加物
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抄録

【目的】近年,全国でシカやイノシシなどの有害野獣問題が深刻化している。なかでもシカ肉は,牛肉や豚肉に比べて低脂肪,鉄分やビタミンB群が豊富であり,栄養面で高い価値を有する食材である。しかし,「硬さ」や「臭い」が食味上の課題に挙げられる。本研究では,野獣シカの食肉としての有効活用をめざし,各種食材・調味料などの添加物による食味改善(軟化・矯臭)効果を検討した。
【方法】徳島県で冬期に捕獲後,処理加工施設で精肉・真空包装・冷凍保存された野生メスシカのモモ肉を試料とした。まず,各温度における調理加熱を行い,重量保持率および物性測定(破断強度)から最適な加熱方法を決定した。次いで,タンパク質分解酵素,保水性の向上,さらに矯臭効果が期待される食材や調味料(生姜,キウイフルーツ,塩麹,味噌,ワイン,トレハロース,ヨーグルト)をシカ肉に添加し,4℃で一定時間保存した。その後,加熱調理し,重量保持率の測定,SDS-PAGE,物性測定および官能検査によって添加物の食味改善効果を比較した。また,栄養成分を分析した。
【結果】加熱方法は,重量保持率および物性測定の結果に加えて,食品衛生の観点を考慮し,85℃の真空調理加熱に決定した。食味改善効果は,塩麹,味噌,および生姜の添加により,未処理肉と比較してタンパク質が低分子化し,破断強度が低下して軟らかく,かつ臭いが抑制されることが明らかになった。さらに,徳島県で捕獲された野生シカのモモ肉は,エゾシカや輸入赤肉よりも脂質が少なく低カロリーであり,ビタミンB群の含有量が高いことが示された。最終的に,食味改善効果が認められた添加物で処理したシカ肉を用いたレシピを考案し,学生食堂で提供した。

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