日本調理科学会大会研究発表要旨集
2019年度大会(一社)日本調理科学
セッションID: 2A-9
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口頭発表
ソバ粉天ぷら衣の嗜好性向上を目指したソバ内層粉の利用効果
*谷口 明日香京極 奈美長尾 慶子小林 理恵
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抄録

【目的】これまで我々は,数種の雑穀粉について天ぷら衣への利用適性を評価し報告した。そのうち,ソバ全層粉を用いると,極めて高い抗酸化能と低い吸油率を示し,食感や油っぽさが好ましい天ぷら衣となった。一方で天ぷら衣としての総合評価は低く,その要因は,評価点が小麦粉よりも有意に低いソバ特有の色であると推察した。そこで,比較的色の白いソバ内層粉の利用により,ソバ粉天ぷら衣の健康機能性を保持しつつ嗜好性向上を図ることが可能か,その利用効果を調べた。

【方法】試料は,ソバの内層粉と機能性成分に富む外層粉を9:1で混合したソバ配合粉とし,小麦粉及びソバ全層粉と比較した。すなわち,小麦粉試料の定常流粘度との一致により決定したバッターの適正加水率にてバッターを調製し,その揚げ衣について色度,貫入試験,吸油率(石油エーテル浸漬法)及び水分飛散率(常圧加熱乾燥法)を測定し,嗜好型官能評価及び抗酸化能評価(化学発光法)と併せてソバ内層粉の利用効果を総合的に検討した。

【結果および考察】ソバ配合粉の適正加水率は150%で,ソバ全層粉よりも40%減量する必要があった。ソバ配合粉揚げ衣の色調は,ソバ全層粉よりL* 値が有意に上昇し,目視においても明らかに色が薄かった。この変化は嗜好型官能評価でも見られ,色及び総合評価の評価点が向上した。その他,食感や油っぽさの評価はソバ配合粉においても良好であった。また,ソバ配合粉の抗酸化能は,ソバ全層粉と同程度であり小麦粉よりも高かった。以上より,ソバ粉を天ぷら衣に利用する際は,ソバ内層粉を主体としたソバ配合粉を用いると,優れた健康機能性を保持するとともに嗜好性の高い天ぷら衣となることが明らかとなった。

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