日本調理科学会大会研究発表要旨集
2019年度大会(一社)日本調理科学
セッションID: 1B-1
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口頭発表
プロテアーゼを用いた伊達巻の作製
*西原 百合枝杉本 茉優林田 美穂星野 楓宮原 奈美朝倉 富子舟木 淳子
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抄録

【目的】正月料理や口取りとして親しまれている伊達巻の表面部分には焼き目があり,咀嚼機能の低下がみられる人の摂食には適さないことがある。本研究では,咀嚼に困難がある人でも食べやすい伊達巻の作製のために,プロテアーゼの利用を試みた。

【方法】鶏卵,魚肉すり身(えそ生すりみ,株式会社博水),グラニュー糖を撹拌し,IH調理器を用いて加熱し,常温で静置したものを伊達巻ゲルとした。プロテアーゼはコクラーゼ・P顆粒(三菱ケミカルフーズ株式会社)を使用した。伊達巻ゲルを2×2×2 cmに切り出し,2%コクラーゼ溶液(食塩5%含む)を伊達巻ゲル表面に添加したものをプロテアーゼ処理伊達巻ゲルとした。一方,蒸留水(食塩5%含む)を表面に添加したものを対照伊達巻ゲルとした。これらの伊達巻ゲルについて,実体顕微鏡によるゲル表面の観察,クリープメータ(株式会社山電)を用いた破断強度解析,SDS-PAGEによるゲル表面のタンパク質分解の観察を行った。

【結果および考察】実体顕微鏡を用いた観察では,プロテアーゼ処理伊達巻ゲルの外相は対照伊達巻ゲルの外相と大きな相違はなかった。破断強度解析では,対照伊達巻ゲルの応力−歪曲線には大きな破断がみられたが,プロテアーゼ処理伊達巻ゲルには明瞭な破断はみられなかった。またプロテアーゼ処理伊達巻ゲルの応力は,歪率0-25%の範囲で対照伊達巻ゲルと比較して小さかった。SDS-PAGEを行ったところ,プロテアーゼ処理伊達巻ゲルではタンパク質の分解がみられた。これらのことからプロテアーゼによりタンパク質が分解され,表面のやわらかい伊達巻ゲルが作製できたと考えられた。

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