日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: B-2
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口頭発表
耐塩性微生物の接種と加熱処理がエソ魚醤発酵中の化学組成に及ぼす影響
*湯浅 正洋烏山 菜摘古場 一哲松澤 哲宏
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抄録

【目的】長崎県の離島である宇久島では,地元高校生が中心となり,漁協や県内大学と連携しながら離島の未利用魚介類で調製した魚醤を販売する取り組みが行われている.この魚醤調製上の問題として発酵期間が長い(24週間)ことがあげられる.本研究では,この魚醤の発酵期間の短縮を目指し,魚醤諸味への耐塩性微生物の添加と加熱処理の有用性を検討した.

【方法】未利用魚介類はエソを使用し,従来法では,ミンチ状のエソ・米麹・20%(w/v)食塩水を混合して30℃・24週間発酵させた.発酵開始前に耐塩性乳酸菌(Pediococcus halophilus)と耐塩性酵母(Zygosaccharomyces rouxii)を接種して発酵させたもの(菌添加法),および材料混合後55℃・15時間の加熱分解後に耐塩性微生物を添加したもの(加熱後菌添加法)を,従来法と同様に調製した.発酵2・4・8・12・16・20・24週目に諸味を回収して火入れ後,蒸発量を蒸留水でメスアップした.各試料の主要な化学成分を分析し,回収時期と発酵条件間で比較した.

【結果・考察】発酵の指標であるpHの低下は,菌添加法と加熱後菌添加法では2週目で確認されたが,従来法では12週間を要した.従来法では8週目まで濁りが観察されたが,他の2種では4週目で濁りが消失した.全ての時期で従来法の揮発性塩基性窒素が他の2種よりも高かった.タンパク質分解の指標であるホルモール窒素は,菌添加法よりも加熱後菌添加法で低かった.以上より,耐塩性微生物は魚醤の発酵速度を上げ,魚臭さを低減できる可能性が示唆された.一方,魚醤諸味への加熱処理は,タンパク質分解速度が低下したことから不要であることが明らかになった.

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