主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2022年度大会(一社)日本調理科学会
開催地: 兵庫県立大学
開催日: 2022/09/02 - 2022/09/03
【目的】カリンは豊かな芳香を持つ果実であるが, 果肉が硬く強い渋みを持つため生食には向かず, 果実酒やはちみつ漬け, ジャム類(ゼリー)として利用されている。カリンの機能性に関するさまざまな報告はあるが, 実際に喫食するゼリーの機能性に関する報告は少ない。我々は炎症を誘導する酵素であるシクロオキシゲナーゼ2(COX2)の活性阻害作用は, カリンをエキスゼリーに加工しても保持されることを報告した。さらに本研究ではTHP-1細胞由来のマクロファージを用いて炎症抑制作用を検討した。
【方法】阻害剤は, カリン果実からカリンエキスを熱水抽出し, 除ペクチン後, カリンエキスゼリーの製造と同様に糖を添加して煮詰め, 樹脂(アンバーライトXAD7)で粗精製した糖添加カリンエキス, 同様に樹脂で粗精製したカリンエキスおよびアスコルビン酸を用いた。THP-1細胞はマクロファージへの分化を誘導し, DMSOで溶解した阻害剤に曝露させた後に Lipopolysaccaharides (LPS)を添加して炎症を惹起させて, リアルタイムPCR法で炎症性メディエーターの遺伝子発現を解析した。
【結果】各阻害剤に暴露後, LPSで炎症を惹起させた結果, IL-1, IL-6, IL-8, TNF-α, COX2はLPSの刺激により炎症が惹起されたことが確認できた。カリンエキス添加区ではIL-1, IL-6, IL-8, COX2の遺伝子発現量が低下し, IL-1,IL-6は有意であった。糖添加カリンエキスはカリンエキスよりも差は小さいが遺伝子の発現量が低下しており, IL-6は有意であった。このことからカリンエキスは炎症性メディエーターの発現を阻害し炎症抑制作用があることが示唆され, ゼリー加工してもその効果は保持されることが考えられた。