【目的】世界人口の増加および新興国の経済発展に伴う食嗜好の変化などにより、肉類の消費量は2050年までに倍増すると予想されている。これに伴い肉類生産量の増加が必要になるが、肉類生産は環境負荷が大きく、持続可能性が低いことが問題視され、解決策として代替肉が注目されている。代替肉は欧米諸国では消費が拡大しているが、日本ではあまり浸透していないのが現状である。日本でも代替肉の消費を拡大させるためには代替肉の食味や食感をより本物の肉に近づけることが有効であると考える。本研究は代替肉製品および肉製品との違いを科学的に比較検討し明らかにすることを目的とした。
【方法】試料は大豆タンパク質を使用した代替肉製品および肉類を主原料としたハンバーグを使用した。各試料を推奨加熱方法にて加熱した後、25℃で1時間静置したものを各実験に使用した。官能評価試験は7段階採点法により、5項目についての評価を行った。試料の物性はクリープメーターにより測定し、70%圧縮時の最大荷重を硬さとして評価した。凍結切片を作製し無染色、でんぷん染色およびタンパク質染色を行い光学顕微鏡にて観察した。さらに走査電子顕微鏡にて微細構造の観察を行った。
【結果・考察】官能評価では代替肉製品を硬いと感じた人の割合が多く、物性測定の結果と一致した。凍結切片の観察結果から代替肉製品にはデンプンの存在量が少なくデンプンの分布の仕方に違いが見られ、この違いが食感や硬さの違いに影響していると考えられた。微細構造の観察結果からも凍結切片と同様の構造が観察され、代替肉製品の方が水分保持することが難しく、官能評価および物性測定結果での硬いという評価につながることが示唆された。