【目的】味の感じ方は食品の温度や味物質の濃度、味物質同士の混合作用に影響を受けるとされているが、これらを包括的に検討した研究は少ない。本研究では温度・濃度が味物質の感じ方と混合作用に与える影響を解明することを目的とした。
【方法】訓練パネルに7段階尺度(-3~+3)のDescriptive analysis法を用いて静的官能評価を実施。温度別(5, 20, 60℃)の味覚強度、口内での広がり、持続性、快・不快を評価し、Tukey HSD、主成分分析、相関分析を行った。①パネル17名に対し、酢酸およびクエン酸0.1, 0.2, 0.3%、スクロース(Suc) 1, 2, 3, 4%、塩化ナトリウム(NaCl) 0.1, 0.2, 0.3%に調製した試料で評価。②パネル10名、試料は酢酸およびクエン酸0.3%、Suc 4%、NaCl 0.3%の濃度に調製した酸味+甘味、酸味+塩味、酸味+甘味+塩味溶液として実施した。【結果・考察】①全溶液で強度、広がり、持続性は最低濃度の評価値が最も低く、広がりは60℃で最も高かった。酸味は全濃度60℃で不快とされ、酸味では広がりと快・不快に負の関連があった。酸味の不快さは口内での広がりに起因することが示唆された一方、甘味と塩味の快・不快は温度の影響を受けなかった。主成分分析のバイプロット図において、甘味の快・不快と他の官能特性のパターンは、酸味、塩味と異なった。②60℃でSucによる塩味の強度抑制効果がみられ、酸味がクエン酸の場合、全温度でSucによる酸味の強度抑制効果、20,60℃で酸味の持続性抑制効果を認めた。以上から、酸味は60℃では不快であるが、甘味添加により快に近づく可能性が示唆された。