【目的】食品の濃厚感は、味や風味、テクスチャーといった複数の刺激によって総合的に判断される複合的な官能特性である。我々はこれまでに、小規模な消費者パネルの官能評価により、濃厚感のとらえ方には個人差が大きい可能性を見出した。そこで本研究では、多様な濃厚感を呈するとんこつ(風)スープを試料として分析型官能評価と消費者調査を行い、知覚の個人差を考慮しつつ、濃厚感の構成要素を明らかにすることを目的とした。
【方法】試料は10種(動物性6、植物性4)の市販とんこつ(風)スープとした。分析型官能評価では、8-9名の分析型パネルが、香り、味・風味、テクスチャーに関する33項目の強度について、線尺度を用いて評価した。消費者調査では、25-54歳の男女123名が、試料の濃厚感の強さや好ましさなど9項目について、9段階の採点法で回答した。
【結果】分析型官能評価の結果に主成分分析を適用したところ、第1主成分(寄与率44.0%)の正方向には香ばしい香りや風味、油脂感、負方向には野菜の香りや風味、コショウの風味などが関連しており、第2主成分(寄与率23.1%)の正方向には乳、ショウガの香りや風味、負方向には豚肉の風味、しょうゆの香りや風味などが関連していた。消費者が評価した濃厚感の評点を平均順位化したスコアを用いてクラスター分析を行ったところ、消費者は濃厚感の知覚傾向が大きく異なる2つのクラスターに分けられた。主成分分析の結果と照合したところ、クラスター1は第1主成分の正方向、第2主成分の負方向に付置される試料、クラスター2は第1主成分の負方向、第2主成分の正方向に付置される試料の濃厚感をより強く評価しており、異なる知覚のパターンごとに、濃厚感を構成する官能特性が明らかとなった。