昭和病院雑誌
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ALS患者に生きる喜びを
~お花見に行こう~
春藤 志津江新田 豊美
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2007 年 4 巻 1 号 p. 016-019

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抄録

ALSは進行性に身体機能障害や言語障害が起こりQOLが低下する事で精神的苦痛を強いられる疾患である。今回、「伝の心」を使いコミュニケーションツールの確立が出来た患者様で、QOLの改善のみならず、看護師や奥様等とコミュニケーションをとる事により『お花見』もする事が出来たので報告する。 S・M氏 77歳 男性、山口医大で平成13年10月頃、筋力低下・嚥下障害・構音障害が有ったのでALSと診断された。平成15年10月胃瘻造設、平成16年8月気管切開施行後、呼吸器装着となった。日中はCPAP、夜間はSIMVにて呼吸管理。3月上旬より下肢痛が出現し足筆が困難となり、コミュニケーションができず、スタッフ、奥様とトラブルを生じ「死にたい、楽になりたい」等の発言が目立った為、「伝の心」の導入を行いコミュニケーションが可能となった。そこで、花見への参加を企画し、前段階としては、リハビリ室にポータブル吸引器を設置し院内車椅子散歩を行なった。花見当日は、自発呼吸と時折アンビューでの補助を行いながら、他患者様とともに歌や演技の鑑賞が出来た。途中、SPO2値の低下と呼吸苦もあったが、ポータブル呼吸器の装着と、吸引で対応し、呼吸管理を行い、最後まで他患者様と一緒に参加する事が出来た。満開の桜を目にし、とても嬉しそうな表情をうかべ、また、奥様も、「ALS発症後、院外に出られるなんて思わなかった。」と涙し、夫婦ともに喜びを分かち合える貴重な時間を作る事ができた。

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© 2007 医療法人茜会・社会福祉法人暁会学術委員会
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