2024 年 77 巻 3 号 p. 144-161
日本におけるコリスチン(オルドレブ®,以下本剤)の使用実態下における安全性及び有効性の検討を目的に,全例調査方式により使用成績調査を実施した。感染症と診断され本剤を初めて投与された患者を対象とし,観察期間は本剤投与開始日から投与中止・終了日までとした。安全性として副作用の発現状況を,有効性として調査担当医師による総合評価及び原因菌のコリスチン感受性を評価した。2015年5月25日より2022年9月20日までに815例が登録された。調査票回収症例は2017年10月31日までに登録された282例で,安全性解析対象症例は280例,有効性解析対象症例は169例であった。なお,腎毒性及び耐性菌の発現防止の観点から,クレアチニン・クリアランス値に応じた用量調節及び原因菌のコリスチン感受性検査実施を添付文書に記載しているが,安全性解析対象症例で本剤投与開始前にクレアチニン・クリアランス値が測定された262例のうち,34.4%(90/262例)の症例では本剤の添付文書に基づくクレアチニン・クリアランス値に応じた用量調節が行われておらず,また,適正菌種使用症例261例のうち,26.4%(69/261例)で原因菌のコリスチン感受性検査が行われていなかった。安全性解析対象症例における総投与日数(平均±標準偏差)は13.9±18.08日で,32.5%(91/280例)に副作用が認められた。安全性検討事項の「腎機能障害」及び「神経毒性」,「偽膜性大腸炎」に関連する副作用発現割合は,それぞれ27.1%(76/280例),2.9%(8/280例),0.4%(1/280例)であった。有効性解析対象症例169例における担当医師の総合評価による有効割合は75.1%(127/169例)であった。本調査の結果,本剤の使用実態下での安全性及び有効性に新たな問題点は認められなかった。腎毒性及び耐性菌の発現防止の観点から,本剤の添付文書及び『コリスチンの適正使用に関する指針―改訂版―』を遵守し,適正に使用することが重要であると考えられた。