The Japanese Journal of Antibiotics
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胆道感染症の化学療法XIV. Piperacillinの胆汁中移行と胆嚢組織内濃度
谷村 弘斎藤 徹関谷 司小林 展章日笠 頼則
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1981 年 34 巻 10 号 p. 1401-1409

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抄録

胆道感染症の化学療法として具備すべき条件は, 胆汁から検出された起炎菌に十分な抗菌性をもつとともに, 肝・腎毒性が殆どなく, 胆汁中移行も良好であることであろう。したがつて, 比較的低毒性であるCephem系やPenicillin (PC) 系の抗生物質がFirstchoiceとされ, 繁用されているが, とくに, 近年におけるCephem系薬剤の開発ラッシュは驚異的ですらある。こうして, 現在の化学療法界はCephem系抗生物質の独壇場であるとはいえ, 緑膿菌に対しては, Cefsulodin (CFS) しかなく, その胆汁中移行は殆ど期待できない。
一方, 同じく低毒性が特徴の1っであるPC系抗生物質では, Ticarcillin (TIPC) とPiperacillinが市販されたばかりである。なかでも, 富山化学工業総合研究所で開発された注射用合成PC剤であるPIPCは, Ampicillinのアミノ基に4-Ethy1-2, 3-dioxopiperazinylcarbonyl基を導入したもので, 緑膿菌, Klebsiella, ratiaなどに強い抗菌力を示す広い抗菌スペクトルをもち, かつ安全性も高いのが特徴とされている。
本剤の臨床的成績は, 1976年第23回日本化学療法学会東日本支部総会において, 胆嚢炎, 胆管炎81例中62例, 76.5%に有効であると報告され, 胆道感染症も適応症の1っとみとめられた。しかし, その基礎となる胆嚢胆汁, 胆嚢組織への移行性と, Crossover法による他剤との胆汁中移行の比較検討をおこなつたものはない。

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